20枚シナリオ『偶然ですね』
シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:魅力ある男
あらすじ
売れない漫画である近野誠は尊敬する師匠もとでアシスタントしつつ、他のアルバイトをしながら生計を立てていた。
そんなある日、美人OLの伏見有紀を身を挺して助けた。そこから彼の周りでは少し不思議な出来ことが起こるようになり・・・
登場人物
近野誠(35)漫画家
伏見有紀(25)社会人
マスター(43)お悩みバーのマスター
ひったくり犯
シナリオ
○神社・境内(朝)
小さな神社。賽銭の隣にはおみくじが置いてある。
近野誠(35)は険しい顔で手を合わせいる。
お辞儀をして、ポケットから百円を取り出すとおみくじを引く。
おみくじを読むとため息を飲み込み、おみくじを折り、
少し離れた場所にあるおみくじかけにおみくじを結ぶ。
近野「人に親切にせよ。か」
近野は俯き加減で歩き出す。
○ひまわり商店街(夜)
左右にあるお店はシャッターが閉まっている。
時折、スーツ姿の男性やカジュアルオフィスを着た女性が足早に通り過ぎる。
近野は俯き加減でのろのろと歩く。
伏見有紀(25)は近野と反対側を歩く。
手には大きめな紙袋を持っている。
有紀は見知らぬ男性に後ろから体当たりされ、ショルダーバックを取られ、コケる。
有紀「あ!誰か!」
近野は声に気づいて、振り向く。
走ってくる男性に体当たりをする。
男性が転ける。
近野は放り出されたバックを手に取り胸元に抱える。
近野は体勢を崩しうつ伏せで縮こまる。
ひったくり犯「おら!放せ!」
男性は近野を何度も蹴る。
有紀は慌てて携帯で警察に通報する。
男性は有紀を見ると近野を強く蹴って、走って去る。
有紀は慌てて近野に近づく。
有紀「大丈夫ですか?」
有紀は近野の体を揺らす。
近野は動かない。
遠くから自転車に乗った警察がくる。
○ひまわり商店街・交番前(夜)
有紀は近野に頭を下げる。
有紀「ありがとうございます」
近野「いえ、まあ。はい」
近野は手を左右にふる。
近野「すみません。犯人逃しちゃって。あとバックも紐がこんな」
有紀「いえいえ!いいんです。元々買い替えようと思ってたんので、気にしないでください」
近野「そうですか。あの、良ければ駅まで送りましょうか?」
有紀「え!良いんですか?ありがとうございます」
○駅・改札前(夜)
有紀は近野に頭を下げる。
有紀「本当にありがとうございました。これ良ければ」
有紀は名刺と封筒を渡す。
近野「え?なんですかこれ」
有紀「お礼なので後で開けてください」
近野「分かりました。すみません」
有紀「いえ、本当にありがとうございました。あのご迷惑でなければ、ちゃんとお礼がしたいので、お電話ください。いつでもお待ちしてます」
近野「ははは、お気にせず」
近野は名刺と封筒をポケットに入れる。
有紀はもう一度頭を下げる。
頭を上げると改札へ歩き出す。
近野は商店街の方へ歩き出す。
○お悩みバー・店内(夜)
5名ほど座れるカウンターがある。
店内は近野とマスターのみいる。
狭い店内に近野は注文したお酒をじっと見つめている。
マスター(43)はグラスを磨いている。
近野「マスター。例えばですよ」
マスター「はい」
近野「ひったくりから鞄を守ったお礼に10万をお礼に貰うってどう思います」
マスター「10万ですか。ロマンありますね」
マスターはグラスをきゅっと磨く。
マスター「嬉しいですが、まあ現実ではあり得ないでしょう。漫画のお話ですか?」
近野「え!いや、まー、はは」
マスター「創作には夢を盛ってこそ。と言いますし、読者ウケするかもしれませんね」
マスターはグラスをきゅっと磨く。
マスター「もしかして今度はギャクマンガをお書きに?」
近野「いやー、まあ。そうですね。現実ではあり得ないですよね」
マスター「そうですね。いやー、貰えたら嬉しいですけどね」
近野「そうですよね。はは。はあ」
近野はお酒をぐっと飲む。
近野「お会計お願いします」
○喫茶店・店内
近野と有紀は向かい合って座っている。
2人の前にはコーヒーが置かれている。
近野「あ、あの伏見さん」
有紀「有紀で良いですよ」
近野「え?はは。あー、こちらなんですけど」
近野は封筒をテーブルに置き、有紀の手前まで移動する。
有紀「この間お渡ししたものですね。そちらがどうなさいました?」
近野「勘違いしてお渡ししたんじゃないかと思いまして」
有紀「勘違い?」
近野は周りの見渡して、小声で話す。
近野「中身の金額がなんと言いますか」
有紀「ああ!」
有紀は封筒を近野の前に戻す。
有紀「お礼と治療費を入れたんですが、もしかして少なかったですか?」
近野「違います!多いんです」
有紀「え?」
有紀は首を傾げた。
有紀「そうですかね?」
近野「え?」
有紀「気にせず受け取ってください」
近野「ええ?」
近野は有紀をじっと見る。
有紀は笑顔で見つめ返す。
○アパート・近野の部屋・室内(夜)
部屋の中央に置かれたテーブルの上に
封筒が置いてある。
近野は封筒を見つめながら頭を抱える。
近野「返せなかった」
近野は封筒を震える指で触る。
中身を取り出し、出てきたお札を見つめる。
ため息を吐いて、中身を封筒に戻す。
○動物園・園内
近野はライオンを見ている。
近野は背後から肩を叩かれ振り向く。
有紀は笑顔で近野に手を振る。
有紀「偶然ですね。動物好きなんですか?」
○水族館・館内
近野はペンギンを見ている。
近野は背後から肩を叩かれ振り向く。
有紀は笑顔で近野に手を振る。
有紀「偶然ですね。ペンギンが好きなんですか?」
○映画館・ロビー
近野はパンフレットを見ている。
近野は背後から肩を叩かれ振り向く。
有紀は笑顔で近野に手を振る。
有紀「偶然ですね。映画が好きなんですか?」
○お悩みバー・店内(夜)
5名ほど座れるカウンターがある。
店内は近野とマスターのみいる。
狭い店内に近野は注文したお酒を見つめている。
マスターはグラスを磨いている。
近野「マスター。例えばですよ」
マスター「はい」
近野「知り合いの女性と出先で会う頻度ってどのくらいだと思います?」
マスター「うーん。そうですね」
マスターはグラスを磨いている。
マスター「場所や人によりますが、ほぼないですね。忘れた頃にとか?」
近野「そうですよね」
マスターはグラスを磨いている。
近野はお酒を飲み干す。
近野「おかわりください。もし頻繁にあるってことは相当気が合うってことですかね?」
マスターはグラスを置く。
近野のグラスにお酒を注ぐ。
マスター「そうですね。私なら運命感じちゃいますね。最近そういったことがおありで?」
近野「実はこの間、助けた女性と出先でよく会うんですよ」
マスター「美人で優しいとおっしゃっていた?」
近野「はい」
マスター「それは羨ましい」
近野「冴えない毎日が楽しくなっちゃいますよ」
マスター「良いですね。でも気をつけたほうが良いですよ」
近野「え?」
マスター「いや、私は先生がそんな方じゃないと思ってますが相手は分かりませんので」
To be continued…
感想
シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
テンポ感を意識して制作しました。
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