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20枚シナリオ『箱の中身』

シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:死


登場人物

尾崎智也(28)作業員
鈴木雄平(35)作業員
班長

シナリオ

○工場・保管エリア
黒い箱が粉々に割れている。
いくつもの壊れた黒い箱が床に散らばっている。
壊れた箱の横で黒い作業着を着た人が倒れている。 

○工場・屋上・喫煙エリア
尾崎智也(28)は黒い作業着を着て、壁に寄りかかりながらタバコを吸う。
手に持ったスマホからはニュースを読み上げるキャスターの声が聞こえる。
鈴木雄平(35)が扉を空けて入ってくる。

鈴木「お、12番さん。この間はどうも」
尾崎「5番さん」

鈴木は尾崎の隣に座りタバコを吸う。

尾崎「そっちのエリア大変らしいですね」
鈴木「あー。まあ、そうですね」
尾崎「ご愁傷様です」

鈴木は頭をかいて、タバコを吸う。

尾崎「機械の故障でしたっけ?」
鈴木「らしいですね。今、封鎖されますし」
尾崎「そうなんですか」
鈴木「その所為で工場内を掃除させられたんですよ。いっそ休みくれたらなあ」
尾崎「へえ、この後も掃除ですか?」
鈴木「いや、別エリアのヘルプらしいです。」

鈴木はタバコを吸う。
尾崎は新しいタバコに火をつける。

鈴木「そういえば、12番さんはさ。あの噂知ってます?」
尾崎「あの噂?」
鈴木「ここで管理している黒い箱は人の魂が入ってるってやつですよ」
尾崎「あー」

尾崎はタバコを灰皿に捨て、新しいタバコに火をつける。

尾崎「知ってますよ。誰かしら言ってるからここに来るやつは皆知ってますよ」
鈴木「まあ、確かに」
尾崎「その話がどうかしたんですか?」
鈴木「いや、まあ」

鈴木は辺りを見る。
他に人は居ない。
鈴木はゆっくりと口を開く。

鈴木「死んでた近くに壊れた箱があったらしいんですよ」
尾崎「え」
鈴木「まあ、普通に考えれば、倒れた時に箱も巻き込んだんでしょうけど。なんかねえ」
尾崎「ははは、まさか箱を壊したから死んだとでも?」
鈴木「いやー、流石にですよ」
尾崎「ドラマの見過ぎじゃないですか?ありえないですよ」
鈴木「そうですよね。ははは」

鈴木はタバコを吸う。
尾崎のスマホからニュースが
流れている。
車事故により、複数人が亡くなったと
画面に表示されている。

○工場・作業エリア
ローラーコンベヤに黒い箱が流れている。
門型のセンサーが緑色に光る。
尾崎はセンサーを通った箱を見て、
バインダーに挟んだ紙に記入している。

尾崎「箱の中身ね」

尾崎は箱を見て、鼻で笑う。

尾崎「そんな訳ないか」 

○工場・屋上・喫煙エリア
尾崎は壁に寄りかかりタバコを吸う。
手に持ったスマホからはニュースを読み上げるキャスターの声が聞こえる。
鈴木が扉を空けて入ってくる。

鈴木「お、12番さん。お久しぶりですね」
尾崎「5番さん」
鈴木「最近どうです?」
尾崎「ははは、変わりないですよ」

鈴木は尾崎の隣に座り、タバコに火をつける。

鈴木「12番さんは15番さんって知ってます?」
尾崎「え?」

尾崎は胸元の名札を見る。

尾崎「まあ、知ってますよ。レーン近いですし、たまにここでも会いますから」
鈴木「その、最近どうしてます?」
尾崎「最近?」

尾崎は小首を傾げる。

尾崎「あー。最近は遅刻してたり、休みがちだったりしますね。あんなに真面目だったのに。なんか病気になったんですかね」

鈴木は尾崎をじっと見る。

鈴木「その、箱を隠したりとかは?」
尾崎「え?」

尾崎の持っていたタバコの灰が落ちる。

尾崎「いやいや、まさか」
鈴木「そうだよな!はあ、良かった」

尾崎はタバコを吸う。

尾崎「なんです?急に」
鈴木「いや、その。箱の中身は人の魂って話覚えてます?」
尾崎「え?まあ」
鈴木「なんかここで会った時に言ってたんですよ」
尾崎「へえ、何をです?」
鈴木「箱の見分けがついた。これであいつの魂が探せる。あの箱を壊せば息子の仇が取れるって言ってたんですよ。あいつの魂を壊してやるって」
尾崎「はあ」

鈴木は顔を上げる。

鈴木「あ、信じてないでしょ?」
尾崎「まー、そうですね」

尾崎はタバコを吸う。

尾崎「この前聞きましたけど、箱に中身って確かなんかの薬品だって話でしょ?それを使って何かするってのは分かりますが、魂を壊すってのは、ねえ?」
鈴木「まあ確かにそうですね」

鈴木は尾崎を見て、自分の手元を見る。

鈴木「いやあ。あまりにも様子がおかしかったんでつい」
尾崎「はあ、様子ね」

尾崎はタバコを深く吸う。

鈴木はタバコを吸う。

○工場・作業エリア
ローラーコンベヤで黒い箱が流れている。
門型のセンサーが緑色に光る。
尾崎はセンサーを通った箱を見て、バインダーに挟んだ紙に記入している。ローラーコンベアが急停止する。

尾崎「え」

スピーカーから「ピンポンパーン」と音が鳴る。

職員「お疲れ様です。作業者は手を止め、その場で待機してください」

尾崎はスピーカーを見る。

尾崎「なんだ?故障か?」

尾崎の靴に名札がぶつかる。
尾崎は名札を拾う。

尾崎「15?」

尾崎は顔を上げる。
15番のコンベアを見るが、誰もいない。

○工場・屋上・喫煙エリア
遠くからはサイレンの音が響く。
尾崎はふらふら歩く。
壁に寄りかかり、タバコを取り出す。
ポケットから15番の名札が落ちる。

尾崎「はあ」

15番の名札を触ると二つに割れる。

尾崎「え、壊した?あ、いやこれケースになってるのか」

尾崎はケースの中にある紙を見る。

尾崎「なんだこれ」

尾崎は折り畳まれた紙を広げる。 

○工場・トイレ・個室
尾崎はポケットにある名札を服の上から握り締める。

尾崎「こんな方法でわかるのか?」

尾崎は口元を抑える。

尾崎「試してみるか?」

○工場・作業エリア
ローラーコンベヤで黒い箱が流れている。
門型のセンサーが緑色に光る。
尾崎はセンサーを通った箱を見て、ペンを床に落とす。
尾崎は屈んでペンを手に取ると、立ち上がらずに箱を下から見る。

尾崎「え」

尾崎はぴたりと止まる。
巡回していた班長が尾崎の前で止まる。

班長「おい、どうした?」

尾崎は慌てて立ち上がる。

尾崎「あ、いやペンを落としてしまって。でも拾えたので大丈夫です」

尾崎は班長にペンを見せる。

班長「そうか、気をつけろよ」
尾崎「はい、すみません」

尾崎は頭を下げる。
班長はその場を離れる。

尾崎「ふう」

尾崎は箱をじっと見つめる。

○工場・更衣室(夜)
尾崎はロッカーにタオルで包んだ箱を入れる。
ロッカーを静かに閉めて、鍵をかける。

尾崎「これ壊せば俺は」

尾崎はロッカーを見つめる

To be continued…

感想

シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
謎が残るように制作しました。

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