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20枚シナリオ『入れ替わり』

シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:背信


あらすじ

宇賀耶財閥の息子・誠一の専属ボディーガード長谷川義之。ある事件から誠一殺害の犯人にされてしまう。長谷川を疑いつつも兄を殺した犯人は別にいると考える誠一の妹・理恵は祖父の協力を得て、長谷川を兄の見た目に変え、犯人探しを命じる。
守れなかった誠一の仇をうつため、長谷川は誠一となり犯人探しの任務につくが・・・

登場人物

長谷川義之(35)ボディーガード
宇賀耶理恵(14)宇賀耶財閥の娘
細川志乃(28)内科医
飯田亮(20)長谷川の部下
宇賀耶義一(35)理恵の父親
山岸茂(52)運送業の社長

シナリオ

○細川内科・地下・手術室(夜)
細川志乃(28)は椅子に座って手紙を読んでいる。
飯田亮(20)は手術器具を片付けている。
長谷川義之(35)は手術台に寝ている。

志乃「会長は何を考えているんでしょうね」
飯田「会長は生まれた時から兄貴と一緒にいるんだ。これが兄貴がやったことじゃないって分かるんだよ」
志乃「そうは言いますけど、どう見ても犯人は長谷川さん以外に考えられませんよ」
飯田「んなことない、ハメられたんだ!」

飯田は音を立てて器具を置く。

志乃「壊さないでくださいよ。まあ会長もそう考えたからここに連れてきたんでしょうけど」

志乃は手紙をデスクに置いて、新聞を手にとる。

志乃「社長は違うみたいですけど」
飯田「あんなに仲良かったのになんで」
志乃「仲が良かったから、では?」
飯田「くそ、一体どうして」
長谷川「う」

長谷川は目を開ける。
飯田は手術台に近づく。

飯田「兄貴!大丈夫ですか?」
長谷川「う?ああ?」

長谷川は何度も瞬きをする。

長谷川「ここは?」
飯田「病院です!今、大変なことになって」

志乃は長谷川と飯田の間に手を伸ばす。

志乃「まあ、まあ。落ち着いて。私のこと分かりますか?」

長谷川は志乃を見る。

長谷川「細川だったか、会長の医者がなんでここに?」
志乃「流石ですね。ならお話が早い」
長谷川「そうだ。坊ちゃんは?誠一様はどこに?」

志乃は長谷川の顔をじっと見る。

志乃「うーん。本当なのか、記憶喪失の可能性も?」
飯田「おい!兄貴を疑うのか?」
長谷川「なんの話だ。なあ、説明してくれ」

エレベーターが開く。
宇賀耶理恵(14)と山岸茂(54)がエレベーターから部屋に入ってくる。

理恵「説明の前に聞きたいことがあるわ」

飯田は理恵の前に立つ。

飯田「すみません。お嬢様、まだ上で待って」
理恵「どいて」

山岸が飯田を押さえつける。

飯田「があ!おい放せ!」
理恵「連れてって」

山岸は飯田を連れてエレベータに乗る。
理恵は長谷川に近づく。

理恵「ふうん?」

理恵は眉間に皺を寄せる。

理恵「細川。彼が演技してる可能性は?」
志乃「なんとも言えませんね」

理恵は腕を組む。

理恵「1週間前。いえ、あなたにとってはつい先ほどの話かしら?何をしていたの?」
長谷川「あの、お嬢様。一体なんの話ですか?」

志乃が長谷川の肩をぽんと叩く。

長谷川「会長と社長に誠一様の護衛を任されて、最上様の息子さんとの食事会に行きました」
理恵「お店の近くで爆発事故が起こったのは覚えてる?」
長谷川「はい。すぐに他のS Pと連絡をとり、安全を確認し、誠一様と店を出ました。誠一は無事に車まで辿り着きました」
理恵「なんですって?」
志乃「お嬢様、早く。時間がないです」
理恵「ああ、えっと、その後はどうしたの?」
長谷川「誠一様を車に乗せて、扉を開けました。周りを確認しようとした時に、背後から誰かに殴らました」
理恵「それで?」

長谷川は俯く。

志乃「うーん、意識を失ったようですね」
理恵「何それ!貴方の言うとおり、こいつが犯人じゃないってこと?」
志乃「私がというよりは会長が、ですね」

志乃が長谷川の肩をぽんと叩く。
長谷川は顔を上げる。

長谷川「お嬢様。あの」
理恵「ああもう!今から説明するわ。起きるのが辛いでしょうから寝てていいわ」

理恵はデスクから新聞を持ってきて、長谷川に投げようとして止める。
志乃に近づき、新聞を渡す。
志乃は長谷川が新聞を読めるように広げる。

理恵「新聞に載ってる通り、貴方は宇賀耶財閥の息子を狙って爆弾を仕掛けた犯人よ」
長谷川「なんだって」
理恵「爆弾で他の護衛の目を逸らした隙に兄を誘拐。山奥まで逃亡に成功した貴方は、お兄ちゃんを殺し、証拠隠滅のため兄の死体と一緒に自身に火をつけた。覚えてる?」

長谷川は新聞の見出しを見る。

長谷川「俺が?でも誠一様は行方不明って」
理恵「残念だけど、新聞の内容は半分噓よ。遺体はこの病院にあるわ。お兄ちゃんが死んだことは、お祖父様と私。細川と山岸にあのさっきのあいつ以外は知らないわ」

理恵は手術台を揺らす。

理恵「何か思い出した?」
長谷川「どうやって山奥いるって分かったんですか?」
理恵「それは貴方が知る必要はないわ」

理恵は手術台から離れて、長谷川に背を向ける。

長谷川「俺は店から出て、誠一様と車で安全な場所に移動する予定だった。だが、車に乗る前に誰かに背後から殴られて気絶した。だから車には乗ってない。誠一様が殺されたなら、その攻撃したのが犯人だと思います」
理恵「俺は殺してないって?ふうん」
長谷川「ああ、殺してない。殺してないが。会長と社長は俺を信頼して、誠一様をお任せしてくださったのに、こんな結果だ。殺したも同然だ」

長谷川は起き上がる。

理恵「え、ちょっとまだ完治してないでしょ?傷まないの?」
長谷川「この程度の痛みより、会長に詫びる方が先です」

志乃は長谷川の前に立つ。

長谷川「どいてくれ」
志乃「まあ、待ってください。会長を裏切ってないなら、頼みたいことがあります」
長谷川「悪いが」
志乃「会長からの頼み事です」

ポケットから手鏡を取り出し、長谷川を映す。

長谷川「誠一様!?」

長谷川は鏡を手に取り、顔を見る。
頬を触る。

長谷川「俺の顔が?」
志乃「座ってください」

長谷川は手術台に座る。

志乃「今の貴方は、顔も声も体格も全て誠一様と同じです。いえ、まあ、ほぼ同じです」
長谷川「なんだって?」
志乃「事情は割愛しますが、会長の指示で行いました。全ては犯人を探すためだそうです」
長谷川「そうか」
志乃「尋問の結果。貴方が犯人でないなら、誠一様になって犯人を探してほしいとのことです」
長谷川「なんだって?」
理恵「本当に貴方がやってないなら、お兄ちゃんになって犯人を探しなさい」

○喫茶店
長谷川はコーヒーを飲む。
理恵はショートケーキを食べる。

長谷川「あの、社長。義一様には言うべきじゃないのか?」
理恵「ちょっと、お兄ちゃんはそんな喋り方しないわ。何年付き添ってのよ。分かるでしょ?」

長谷川はコーヒーを飲む。

長谷川「ああ。父さんには言うべきじゃないのか?こんな騙すようなことをして」
理恵「騙すですって?」

理恵はいちごをフォークで刺す。

理恵「貴方、昨日は何を聞いてたの?父さんの話を聞いてなかったの?単独犯とは思ってなかったけど、父さんは長谷川のことを犯人だと思ってるし、まだ誰が敵なのかも分かってないのよ。犯人に逃げられたらどうするの?」
長谷川「お祖父様も父さんも探してるんだろ。一部は捕まえたそうだが、それが全員の可能性は?もしくはもう逃げてる可能性は?」
理恵「その可能性は低いってまだ内部にまだいる可能性が高いってお祖父様は言ってた」
長谷川「会長の調べなら」
理恵「お兄ちゃん?」
長谷川「お祖父様がいうなら、そうだろうが」
理恵「私が部屋から出た後に、お父様に何を言われたかは知らないけど絶対に他の人には言っちゃダメよ。これはお祖父様の命令でもあるのよ?分かる?」
長谷川「分かるさ」
理恵「父さんと仲が良かったからって、変な気を起こさないでよ。それより、お兄ちゃんが生きていて不審な動きをした人は居ないの?」
長谷川「そんな分かりやすい人は流石にもう捕まってる」
理恵「そうよね」

理恵はフォークを置いて、紅茶を飲む。

理恵「あと、私もまだ疑ってるからね」
長谷川「はい、分かっています」

To be continued…

感想

シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
テンポ感を意識して制作しました。

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