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20枚シナリオ『変拍子』

シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:宿命


登場人物

前野浩平(16)高校生
河内良平(16)高校生
秋山春樹(16)浩平と良平の幼馴染
西川智子(48)音楽教師

シナリオ

○前野家・浩平の部屋(夜)
前野浩平(16)は手に持っていた手紙を机の上に投げ、ベットに寝転がる。

前野「はあ、いっそ指がなくなったら」

前野は手を見つめる。
頭を振り、起き上がる。
PCを立ち上げて操作する。
サングラスとヘッドフォンをつけて、エレクトーンの前に座る。
息を吐いてから鍵盤を触る。
PCの画面には
『練習配信中。リクエスト可』
と書かれた画面と手元が映っている。
 
○桜ヶ丘高校・中庭
秋山春樹(16)は自販機で飲み物を買う。

秋山「吃驚した。まさか同じ高校だったとは思わなかった」
前野「俺も驚いたよ。毎日連絡してるに分からないもんだな」
秋山「確かに。昨日だって音楽の話しかしてないな。エレクトーン始めたんだっけ?」
前野「ああ、ピアノはもういいかなって」

秋山は飲み物を飲む。

秋山「そっか。今度はエレクトーンとヴァイオリンでセッションしようぜ」
前野「まあ、そのうちな」
 
○前野家・浩平の部屋(夜)
前野は手紙を机の上に置く。
PCを立ち上げて操作する。
サングラスとヘッドフォンをつけて、
エレクトーンの前に座る。
PCの画面には
『練習配信中。リクエスト可』
と書かれた画面と手元が映っている。
いくつかコメントが流れる。
前野はコメントに流れるリクエスト曲
を弾いていく。
 
○桜ヶ丘高校・音楽室(夕方)
西川智子(48)は扉を開けて、
中に入りピアノの前まで歩く。
河内良平(16)は窓際へ行き、窓を開ける。秋山は中に入り、扉を閉める。

智子「20時が完全下校だから、19時30分までにはカギを返してくれたら好きに引いてもらって大丈夫だからね」
秋山「ありがとうございます」
河内「ありがとうございます」
智子「音楽に興味持って貰えて嬉しいわ。うちは吹奏楽部もなくなっちゃったから」
河内「へー、昔はあったんですね」
智子「昔はね。鍵はここに置いておくわね。じゃあ、練習頑張ってね」

智子はピアノの横にある机に鍵を
置いて音楽室から出ていく。

河内「やったぜ。言ってみるもんだな」
秋山「これで二人で練習が出来るな」
河内「さっそくやろうぜ」

河内はピアノの前に座る。
秋山はヴァイオリンを持つ。
 
○桜ヶ丘高校・中庭
前野「ピアノを教えて欲しいって?」

前野は自販機で飲み物買う。

前野「春樹に教えるのか?」
秋山「違う違う。一緒に音楽をやってる奴がいてさ。3組の河内良平っていうだけど。知らない?」
前野「いや?俺は1組だし。3組の人とは接点ないな」
秋山「あー、そっか。まあ、そいつと配信サイトに演奏を上げようってなって」

秋山はスマホで動画を見せる。
前野は河内のスマホを見る。
秋山の顔が見えないように映っている。
ヴァイオリンを弾く動画が流れている。

前野「へー」
秋山「文化祭で演奏しようって話もあって」

秋山は前野をちらりと見て
スマホに目線を戻す。

秋山「浩平もどう?」

前野は飲み物を飲む。

前野「あー、いや、やめとくよ」
秋山「そっか、まあ。気が向いたら聞きにきてよ」
前野「それは、うん。絶対行くよ」

秋山はスマホをしまう。

秋山「それでどう?独特だけどセンスはあると思うんだ」
前野「うーん」
秋山「バイト代も出すよ」
前野「え?いや、お金はちょっと」

前野は手を振る。
秋山は両手を合わせて、頭を下げる。

秋山「頼む!一回だけでもいいからさ」

前野は腕を組む。

前野「まあ、聞くだけなら」

秋山は顔を上げて、笑顔になる。

秋山「良かった!毎日、放課後は音楽室で練習してるからさ。いつでも待ってるよ!」

チャイム音が鳴り響く。
秋山は手を振って階段を上っていく。
前野は秋山を見送る。
見えなくなると深く息を吐いた。

前野「ピアノか」

前野は廊下を小走りで通る。
 
○桜ヶ丘高校・音楽室(夕方)
前野はピアノの近くまで歩く。

前野「ほら、あと二時間しかないから」
河内「はいはい。急かすなって」

河内は椅子に座り、ピアノを弾く。
だんだん音が外れていき、
原曲が分からないくらいの
演奏が音楽室に響く。
河内は演奏を終えると胸を張る。

河内「どうだ?」

前野は頭を抱える。

前野「何が春樹のヴァイオリンと同じレベルだ!よく文句言われなかったな」
河内「ええ?独創的って褒めてたぜ」
前野「それ、いや、うーん」

前野は腕を組む。

前野「今からでも断ってもいいか?」
河内「え!春樹との約束を破るのか?それともさては」
前野「なんだよ」
河内「実は俺より下手とか?なら悪いこと頼んだな」

河内は得意げに腕を組む。
前野は眉間に皺を寄せて咳払いをする。

前野「ちょっと退けよ。見本見せてやる」

前野は河内を席から退かそうと押す。
河内はよろけるように席を立つ。

河内「ちょっ、おい。押すなよ。退くから」

前野は席に座り、ピアノを弾く。
演奏が終わる。
河内は興奮して、拍手をする。

河内「なんだよ、めちゃくちゃ上手いじゃん!凄い!かっこいい!」

前野は気恥ずかしそうに席を立つ。

前野「昔から弾いてるんだ。このくらいは普通だろ」
河内「へえ、俺は去年からだ」

河内は自慢げに胸をはる。

前野「去年?」

前野は河内を見る。

前野「ふーん。なら、上手いほうなんじゃないのか?でもなんでピアノなんて始めたんだよ」
河内「え、だって弾けたらかっこいいじゃん。好きなの極めたら楽しいだろ?」

前野はため息を吐く。

前野「ああ、そう」
河内「前野は?」
前野「俺は」

前野は息をのむ。

前野「親がピアノやってたから、気づいたら弾いてた」
河内「へー、生まれながらのってやつか」
前野「まあ、だから河内みたいに好きってわけじゃない」
河内「え?そうなのか。俺はてっきり好きなのかと思った」

前野は立ち上がり、
ピアノの横に移動する。

前野「義務だよ、義務。それよりまずは正しく弾けるようにゆっくり引くところからやるぞ」
河内「お、やる気出たんですか、先生」

前野はため息を吐く。

前野「本当に何度も頼んでくれた春樹に感謝しろよ」
河内「はーい」

○桜ヶ丘高校・一年一組教室前
にぎやかに飾り付けされた咥内。
歩く生徒は仮装やジャージ姿で看板を
持ちながら歩いている。
校内放送では『文化祭のおすすめ』
を紹介する放送が流れている。
河内はピーヒャラ笛をくわえている。
前野は頭に紙袋で作られた
ウサギの頭をかぶっている。
手に持った看板には
「アニマル喫茶店へようこそ」
と書かれている。

河内「え?それ前見えてるの?」
前野「目の位置がズレるから、あんまり見えない」
河内「へえー」.

河内はピーヒャラ笛を口にくわえて、
何度か鳴らす。

前野「そろそろ時間だろ。交代頼んでくる」

前野はふらふらと歩き、
教室の中に入る。
河内はピーヒャラ笛を手に持つ。

河内「え、まじで大丈夫なのか?」

To be continued…

感想

シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
今後の展開が気になるように制作しました。

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