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ほんとうのダイバーシティは、カートゥーンアニメ『スティーブン・ユニバース』にある。

この自粛生活がいつ終わるか見通しが立たない最中、みなさん室内でできる娯楽・趣味でどうにかこうにか気を紛らわして生活を送られているだろうと思う。

私も2月末にあった「スター☆トゥインクルプリキュア感謝祭」というマジスーパー最高だったイベント(感想文が未だ下書きなのでどうにかしたい)に行って以降は、チケットを押さえていたイベントや毎年恒例だったイベント・楽しみにしていた新作映画等ほぼすべてが中止・延期の憂き目に遭ってしまった。仕方がないので、ひたすら観たかった映像作品を視聴したり遊んでみたかったゲームを遊びまくったりしている。

時間を持て余している方に私が是非おすすめしたいのが、アマゾンプライムでシーズン4までが全話見放題になっているカートゥーンネットワーク制作の米アニメ『スティーブン・ユニバース』だ。

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⼈間とクリスタル・ジェムズの間に⽣まれたスティーブンが世界を救う!カートゥーン ネットワークの最新TVアニメシリーズ。「スティーブン・ユニバース」は2013年11月にアメリカで放送スタートしたばかりの最新TVアニメシリーズ。人気オリジナルシリーズ「アドベンチャー・タイム」の制作スタッフであるレベッカ・シュガーが手がける“マジカル・コメディ”。人類を守るマジカル・チーム『クリスタル・ジェムズ』の一員スティーブン。彼はまだチームの中では見習いの身で皆の弟分的存在。体の一部に“Gem(ジェム)”という武器を持つ最強の姉たち、パール、アメジスト、ガーネットのバックアップのもと、世界を救う!70年代テイストがただよう、どこか懐かしくやさしいアニメーションにも注目。(カートゥーンネットワークジャパン公式サイトの紹介より)

これまでは視聴方法がカートゥーンネットワークへ契約して定期的にある再放送を追いかけるしかなかったようでハードルが高かったそうだが、今年に入ってからアマゾンプライムビデオで日本語吹替されているシーズン4・計128話分が一気に見放題になったそうだ。

私がなぜスティーブン・ユニバースに興味を持ったかというと、兼ねてからSNS上で聞こえてくる「カートゥーンだが百合オタク方面で人気」という噂、さらに決め手となったのは以前直接会う機会があった趣味の合う百合オタクさんが超ハマっており猛烈にプッシュしてくれたことだ。私は百合萌えできるコンテンツが好きだが、国内のものをせっせと追いかける気力が枯れてきていたのでカートゥーンアニメで百合とはどのようなものなのだろうと興味を持った。

そうして、いざ食事の時間にちまちま視聴し始めた結果、超どハマりしてしまった。10分×128話なんて、まだまだあると思っていたのに瞬く間に観終わってしまった。このアニメは、私が目当てにしていた百合要素もさることながら、とてつもなくコミカルで、エモーショナルで、ファンタジックなのだ。

今は未見のストックが無くなってしまった喪失感と、なぜ、日本には未だにシーズン5以降が上陸していないのかと呆然としている。国内のもの・もしくは国内でも充分情報があるものにばかりハマって生きてきたが、うっかり他国のコンテンツにハマってしまうとこんなにもどかしく、言語学習の重要性を痛感するものなのかと思い知らせた。

前置きが長くなってしまったが、観終わってあまりにも寂しいので、同じような精神状態になってくれる人がひとりでも増えてくれるといいな!という勝手な思いで未見の方向けにプレゼンをしたい。

独特で、しかし深く共感できる愛すべきキャラクターたち

ところで、キッズ向けアニメほど魅力が伝わりやすいキャラクターをつくるのが難しいものは無いのではないかと常々感じている。幼児向け作品=幼稚な作品という図式では到底良いものはできないからだ。

スティーブン・ユニバースに登場するキャラクターたちは、一見カートゥーンらしいコミカルなデザインでありつつ内面への掘り下げが徹底されていて、非常によく練られている。

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主人公の少年スティーブン・ユニバース。

彼はジェムという宝石の名前がついた人間ではないらしい種族のおねえさん3人、クリスタルジェムズと同居している。そして彼は人間でもジェムでもない。そのことが何の説明もなく1話目が始まる。日本のキッズアニメだったら考えられないほど説明がなく唐突に始まるが、ジョークを交えつつもハイテンポに進む物語を観ていくうちにそれらの疑問は丁寧に回収されていく。

スティーブンの出生の謎と成長、謎の種族ジェムとは何か、がシリーズを通した大きなテーマとなっている。見た目は小太りで頭は天パ、非常に明るくポジティブでみんなに愛されているが、出生の謎、とりわけ母親についての謎に迫るほど彼は苦悩する。周囲の人々の支えで少しずつ乗り越えていく。本記事ではネタバレを避けたいのでこれ以上書けないのがもどかしい。

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クリスタルジェムズのひとり、アメジスト

クリスタルジェムズトリオでは一番若くて感性が人間に近く、スティーブンとは一緒にふざけるきょうだいのような存在。ジェムたちにはそれぞれ特殊能力があるのだが、彼女は自由になんでも変身する能力があり、日常回はコミカルでカートゥーンキャラらしいコメディ要素を提供する。

しかし、普段は明るい彼女にもある大きな劣等感を抱えている。とあるシリアス回では、自己肯定感が低い私には共感で観ていて精神にくるものがあった。身体が紫色の三頭身キャラクターに、こんなに感情移入できることは今後あるだろうか。

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クリスタルジェムズのひとり、パール端的に言って一番好き。推し。

クリスタルジェムズトリオではツッコミキャラであり一番オカン性が強く、スティーブンのことになると非常に過保護になるのだがそこにはある秘められた過去の想いがあり…非常に女性的な面が強い。ジェムたちは人間とは違うので無性別なのだが。

そう、性別といえばここで私が期待していた百合要素について。ジェムたちって全員外観上女性型しかいないのだ。だから必然的に恋愛絡みになると大体そういうことになるのだが(例外はあり)、彼女たちは人間とは価値観や感覚が著しくズレている部分が幾度となく強調されている。

しかし各々感情と個性があり、人間から見てもそのドラマは感情移入できる。という不思議なバランスの塩梅が秀逸なのだ。

パールに話を戻すと、異種族らしくナチュラルに人間を見下した発言をしてしまうシーンもしばしばあるのだがそのいっぽうで抱えている感情が重く生っぽく、もしかしたら一番抱えている感情は人間っぽいのでは?と私は感じてしまうのだが、ただ先述のアメジストのほうが人間っぽいと感じる人もいるのではと思う。人間くさい、身近に感じる、共感できる…とはどのようなキャラクターか?ということをジェムズたちを通じて考えたくなる。

加えて、日本語吹替を担当されているのが小島幸子さんなのも個人的にポイントが高い。サクラ大戦3のメル・レゾン、ファイアーエムブレム風花雪月のマヌエラ先生、スター☆トゥインクルプリキュアのひかるのママなどが私的にはすぐ浮かぶのだが、どちらかと言えば洋画吹替で活躍されている方である。落ち着いたアルトの美声で歌唱力も素晴らしく、今作のミュージカルシーンでも沢山歌ってくれる。

こちらはシーズン3の86話「ミスター・グレッグ」のミュージカルシーン。(米カートゥーンネットワーク公式の動画なので言語は英語)

この回はパールとスティーブンの父親グレッグにフォーカスを当てたシリアスめな回なのだが、このシーンだけではなく10分間に踊りまくり歌いまくりの本格的ミュージカル回。ミュージカル好きは特に是非このクリップだけでも観てほしい…!

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クリスタルジェムズのひとり、ガーネット。日本のファンからはガネキとしばしば呼ばれているようだ。

強そうな見た目に違わず一番落ち着きがある。精神的にも肉体的にもタフ。勿論、どうして彼女が強いのかも理由がありその理由こそがこのアニメで最も重要な部分なのだが、本当にもどかしいながらも未見の人にどうしてもそれが分かる回を予備知識なしで到達してほしいために書くことができない!!!特に百合オタクには、彼女の秘密がとってもエモい、ロマンティックなものだとだけ伝えておく。

日本語吹替は女性なのに男声にしか聴こえない声域が出せることで有名(?)な斎賀みつきさん。歌もかっこよすぎるので必聴だ。

カートゥーンアニメで知る、ダイバーシティ

長くなりすぎるためメインキャラたちのことだけなるべく簡潔に紹介してきたが、スティーブン・ユニバースには他にも一癖も二癖もある街の住人たちやジェムズがたくさん登場する。どのキャラにも欠点があり、様々な性的指向を持っていることが大げさすぎずにサラリと描写される。

多様性(ダイバーシティ)はどのようなものか、というテーマは近年日本国内のフィクションにもしばしば取り出されるテーマではあるが、それをサラリとした描写にしかも児童向けジャンルであるカートゥーンで実現できるというのが私にはとても驚きだった。

スティーブン・ユニバースの監督レベッカ・シュガー氏は弱冠20代にしてカートゥーン・ネットワーク初の女性監督であるという。その上、自身のセクシャリティはバイセクシャル・ノンバイナリーであるということをカミングアウトしているというのだから、この作品がいかに娯楽でありながらも多様性に満ちているのか、ますます興味深くこのコンテンツを追いたくなった。

気になったら是非観てほしい。

日本公式が上げている4話までの公式YouTube動画とテーマソングの曲ができるまでの短編動画があるので雰囲気を是非。

繰り返すが、アマゾンプライムにさえ加入していればシーズン4までは全話観れる。もしもハマってしまったら、私と一緒に続きが観たい踊りを踊り、日本の有志が翻訳してくださっているシーズン5以降の記事を泣きながら読んだりして、正式な上陸を祈りましょう。具体的には、公式に要望を出しましょう。お待ちしています。

アマゾンで本記事のヘッダーにしている、フルカラーの立派なハードカバー設定資料集が比較的安価に買える。初期のラフスケッチや先述したミュージカル回の曲楽譜などが見れて英語読めなくても面白い。この時間ばかりあるこの機会に頑張って翻訳して読んでいこうかと思っている…勉強ってだいじ…




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