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ラフマニノフ「晩祷」の思い出

 どこで知り合ったのか忘れました。だれか知り合いが乗っていたという話でもなかった気がします。私が演奏会を聴きに行くのは、たいがい、「知り合いが乗っている」「招待券をいただいた」といった具合で聴きにいきますので(演奏会とも「出会い」なのです)、どうしてこの合唱団を聴きにいったのか覚えていません。とにかく、「東京トロイカ合唱団」と言われる、ラフマニノフの「晩祷(ばんとう)」と言われる無伴奏合唱だけをレパートリーとする合唱団の演奏会を聴きに行くことになったのです。

 ラフマニノフの「晩祷」という作品は、「夕べの祈り」(ロシア正教の晩の礼拝。「礼拝」とは言わないのでしょうが、正教会の言いかたを知らないので、どうかおゆるしください)です。1時間くらいかかる大作でして、この日も、この曲、1曲プログラムでした。私が行ったのが第4回演奏会、2001年10月19日、東京カテドラル聖マリア大聖堂における演奏でした。

 ここはカトリック関口教会と言い、当時、私が住んでいたところから最も近い教会でした(地震があってあの尖塔が倒れてきたら、場合によっては私の住んでいるところを直撃するのではないかというくらい近かったです)。カトリックのこともよくわかりませんので、どうも不正確で申し訳ないのですが、東京教区の司教がいるところが東京カテドラルという?聖堂のこと?インターネットで見ると、「司教座」と書いてありますが、どうもプロテスタントの私にはわかりかねるところが多く、これ以上、「ウソ」を書くのはかんべんさせてくださいね。(フォロワーさんにはカトリックのかたが複数おられたと思います。どうぞ私のいい加減な間違いを正してください…。)

 ここの大司教館というところには、事務職員として、私の友人が勤務していたことがあります。私も学生でヒマでしたので、遊びに行って、ちょっと案内してもらったこともあります。ルルドなんかもあるんですよね(なんかマリアさまが観音様っぽい)。売店もあった。ナントカユースデイで来て、おみやげを買ったこともあるという記憶もあります。平日の昼間みたいな閑散とした時間は、のんびりながめて、おみくじなど引いたりしたのです。聖書の言葉が書いてあるおみくじ、複数回、引きました。いまでも覚えています。「主において常によろこびなさい。重ねて言います。喜びなさい。あなたがたの広い心がすべての人に知られるようになさい。主はすぐ近くにおられます(フィリピ4:4-5)」。やっぱり好きな言葉が出たらうれしいものです。このカトリックの、日本の神社みたいなノリは好きですね。プロテスタントもいいけど、堅苦しくてね~。

 さて、余談はほどほどにして、この日の演奏会の話です。正教会では、歌を歌うとき、楽器を使わないと聞いたことがあります。したがってラフマニノフのこの作品も、無伴奏の混声合唱曲です。この曲をもってラフマニノフの最高傑作とする人もいるのですが、私はどうも…。何度も書いていますが、「交響的舞曲」が最高傑作である気がするものですから…。もちろん「晩祷」が傑作であることに疑いはないのですが。

 そういうわけで、事情は忘れたのですが、ラフマニノフの「晩祷」を生で聴く滅多にないチャンスでした。ちなみにここはカトリック(西方教会)の教会で、ラフマニノフの晩祷はロシア正教(東方教会)の音楽ですから、教派は違います。たんに演奏会場として借りたのかな?と思いますけど。プログラムを見る限り、この合唱団は、完全にこの曲を「芸術作品」と見ていて、「宗教音楽」とは見ていない感じでした。いいと思います。(前にも書きましたが、私、信仰と音楽が体のなかで分離している人間ですので。)いまみたいに手軽に予習ができる時代でもなく(YouTubeもありません。みなさんiPodを持つようになるよりも前の時代だろうと思います。私自身は、携帯電話を持って間もないころ)、はじめての音楽に戸惑いまくりながらの鑑賞でした。大聖堂のおごそかな雰囲気も、おおいに曲を演出していました(やはりホールでやるのとは違うのかな?)。私は逆に、「交響的舞曲」で引用されている部分が気になりました。おおいに感銘を受けて帰りました(と言っても歩いてすぐに帰れるのですけど。ものすごく近いから)。

 この合唱団、たぶんアンケートとかにメールアドレスを書いたのだと思いますが、毎年、シーズンになると、律儀にメールを送ってきました。なにしろ毎年、1年に1度、ラフマニノフの「晩祷」だけをレパートリーにしてコンサートを開いているのです。ショスタコーヴィチだけをレパートリーとするアマチュアオーケストラもあったし、東京というところは、文化も広いなあ、と、いま改めて思う次第です。以上です!

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