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積分を習う前から積分を知っていた

(この記事は高校までの数学を知らないとお読みになれないと思います。とくに積分です。それでもよろしければどうぞお読みください。)

 なぜ、円錐の体積は、円柱の体積の$${\frac{1}{3}}$$なのでしょうか。これは円錐と円柱に限らず、「なんとか錐」はみんなそうですけど。円と、その円を含む平面に含まれない点を結んで得られる図形である円錐は、体積が(底面積)×(高さ)×$${\frac{1}{3}}$$です。これは、私が中学のころに習ったときは、底面が同じ円柱と円錐の形をした入れ物(という教材)があり、先生が、そこに水を入れて、われわれは、円錐の体積はだいたい円柱の体積の$${\frac{1}{3}}$$であるということを教わったものです。これは、以下のようにして、習う前から自分で証明ができました。

 私は高校生で、積分をまだ習っていませんでした。微分もまだ習っていませんでした。そして、私の予想は以下の通りです。2次元で「線分錐」と考えられる「三角形」の面積は、2次元で「線分柱」と考えられる長方形の面積の$${\frac{1}{2}}$$です。(1次元で「点錐」である線分と「点柱」である線分の長さは同じで$${\frac{1}{1}}$$です。)ここから私は、4次元に行くと、たとえば「立方体錐」は「立方体柱」の4次元体積の$${\frac{1}{4}}$$で、「球錐」は「球柱」の4次元体積の$${\frac{1}{4}}$$倍ではなかろうか、と思ったわけです。

 しかし、そのころ、私は微分も積分も習っていなかったわけです。しかし、物理で「時間がちょっと経過すると、動いているものの位置がちょっと動く」というのを習っていました。つまり数学で微分を習う前に物理で微分に相当するものを習っていたのです。この考えはおもしろいと思いました。この考えをうんと展開すると、面積や体積が出るのではないかと思ったわけです。それで積分を習う前から発見していたのです。もちろん私がニュートンやライプニッツほど偉かったという意味ではありません。私(たち)の身の回りには、微積分の恩恵を受けた品物や製品がたくさんあったので、その状況で積分を思いつくのはニュートンやライプニッツには及びもつきません。しかし、ずっとのちに中高の教員になったときに思いました。小学生は方程式を習わないで中学入試に臨みます。以下は誰にも言ったことのない話だと思いますが(少なくとも職場では言えなかった)、「自分で方程式を発見して使っている小学生はいるのではないの?」ということでした。その可能性は充分にあり得ます。私だって積分を習う前から発見していたのですから。

 そこで、もちろん積分の記号など知りませんが、つぎのように考えました。円と、その円を含む平面上にない点(円錐の頂点)のあいだに、たくさんの円をかいて、その面積を足し合わせよう。のちに積分という記号を習ったあとの記号の使いかたをさせていただければ(当時の私の自分の記号は覚えていません)、$${\int_{0}^{a} x^2 dx= \frac{1}{3}a^3}$$であり、たしかに$${\frac{1}{3}}$$になるのでした。同様にして4次元に行きますと、$${\int_{0}^{a} x^3 dx= \frac{1}{4} a^4}$$となるので、たしかに$${\frac{1}{4}}$$になるのでした。これが、私が習う前から積分を思いついた動機づけでした。これはずっとのち、数学者の道を断たれて中高の教員となり、あるテレビ局の企画で、数学の問題の出題者となったとき、この問題は出しました。皆さん答えが速かったですけど、誤答も多かったですね。そのときのことを記事にしたこともあります。

 もうひとつ、これはかなりきちんと積分をならったのちだと思いますが、4次元の球の体積を計算したこともあります。当然の流れだと思います。$${xyzw}$$空間のなかで(こういう書きかたも知っていたとは思えませんが)、球の体積を積分するわけです。$${x}$$が$${-r}$$から$${r}$$まで動くときに、球の半径は$${\sqrt{r^2-x^2}}$$ですから、求める4次元球の4次元体積は$${\int_{-r}^{r} \frac{4}{3}\pi(\sqrt{r^2-x^2})^3 dx}$$ですね。式、あっているかな?ここから先は数学Ⅲの積分の得意な人にお任せしまして、答えをカンニングします。$${\frac{1}{2}\pi^2 r^4}$$となります。いまや「4次元の球の体積」で検索すればいくらでもヒットします。しかし、1992年ごろ(私が考えていたころ)はインターネットなど(ほとんど)ありませんでしたし、ひたすら自分で考えるしかなかったものです。ずっとのちにそのテレビ局での仕事でも、これは予選で使われた(らしい)問題ですが、あの当時も一切ヒットしませんでした(2007年)。検算しようと思って、必死に自分以外の人が4次元球の4次元体積を出そうとしていないか、確認しようとしたのですが、誰も書いていなかったのです。

 そのようなわけで、いまとなっては陳腐かもしれない話題でした。でも、私が考えたころは陳腐ではなかったですからね。私は積分を習う前に積分を発見していたのです。

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