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「球面と平面の式を連立させて1文字消すと楕円になるのはなぜですか」

(これは、内容も理解しようとなさいますと、高校くらいの数学の知識がいりますね。それでもよいかたはお読みくださいね。でも私の塾講師になろうとして失敗した話としてもお読みになれます。)

 学生時代、ある寮の仲間から、塾講師のアルバイトの誘いを受けました。そこは、ある全国的に有名な大手の塾の経営者がやっている「東大専門です」という塾でした。たとえばそこの数学の講師は東大の理学部の数学科の学生ばかりという具合です。当時、学部生だった私は、「有資格者」だったので、誘われたわけです。破格の待遇だったと思います。

 それで、塾長じきじきの面接を受けて、一発で落ちたのですが(ここは笑うところです)、どういう面接だったかと言いますと、その「東大専門」の塾で最も多く出る質問の2つに答える、というものだったのです。(いまから四半世紀以上も前の話です。いまはどうなのか知りません。)そのうちのひとつは

 「なぜ、k(x+2y-4)+(3x+5y+1)=0 とすると、直線x+2y-4=0 と 直線3x+5y+1=0 の交点を通る直線になるのですか」

 という問いで、もうひとつが、

「球面と平面の式を連立させて1文字消すと楕円になるのはなぜですか」

 という問いでした。

 両方ともちゃんと「明解に」答えたのですが、「明解路線」はダメですから、落ちたのだと思われます。

 1問目はたいしたことがありませんので、本日の話題は2問目です。(べつに2問目もそんなにたいしたことではないのですが、私が教員時代に答えられない同僚もけっこういたものですから。)

 「空間内で、球面と平面の式を連立させて1文字消すと楕円の式になる」

 これへの疑問というのは「球面と平面の共有部分って円じゃないの?」ということだろうと思います。

 すごく簡単な例でやってみますね。球面を

   $${x^2+y^2+z^2=4}$$  ・・・(1)

としまして、平面を

  y=z ・・・(2)

とします。ここからzを消去しますと、

 $${x^2+y^2+y^2=4}$$  

となりまして、

 $${\frac{x^2}{4}+\frac{y^2}{2}=1}$$  ・・・(3)

となってこれは楕円の式ではないか、というような現象のことを言っていたのでしょうな。

 皆さんは、こういう質問を受けたら、どうお答えになりますか?

 これはですねえ、「連立して文字を消去すると、共有部分が出るはず」という素朴な「信仰」に原因がありますね。

 (3)は、空間内では楕円の式ではありません。正確に言うと「楕円柱」の式です。(上下に無限に続く)

 そして、ナナメになった平面(2)と、球面(1)の式を連立させてzを消すというのは、zの方向へ点が自由に動くようになったということで、「ナナメの円」をz軸の方向へ自由に動くようにしたものなのですな。

 だから楕円柱になったのです。

 どうも私の説明がうまく通じたわかりませんね。わからないからその塾の面接は落とされたのでしょうけど。

 「東大の受験生」って、もっと複雑な状況でこの現象に当たっているのかもしれませんが、かんたんに言うとこういうことです。

 ごめんなさいね、なんだかわからない記事だったらすみません。ちゃんとあたまを使わないで式の変形だけしているとこういうことになります。

 ちなみに、「東大理学部数学科」っていうのは、それほどすごくはないですよ。かしこい東大生の皆さんは、数学ではなかなか食えないことを知っているので、よほどのことでもない限りは、専門に数学を選んだりはしないからです。そんなに高い倍率ではないです。ただし、「大学院数理科学研究科」はかなりたいへんです。

 それではみなさん、また今度!

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