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おすすめの曲⑰:シューマン「3つのロマンス」op.94ほか

「業界曲」を紹介するシリーズですが、今回は、ほんとうに超名曲としておすすめできる作品です(いままでのはおすすめできないのかいという意味ではないです)。シューマンの、オーボエとピアノのための作品で「3つのロマンス」という曲です。このほか、同じような管楽器のための室内楽作品として、クラリネットとピアノのための「幻想小曲集」op.73、ホルンとピアノのための「アダージョとアレグロ」も挙げておきます。

私がフルートのレッスンを受けた(そして人前でも吹いた)曲は、「3つのロマンス」op.94です。オーボエの楽譜を、そのままフルートで吹きました。オーボエもフルートもC管の楽器で、移調する必要がなく、また、音域もほとんど同じだからです。

哀愁を帯びていて、とても美しい曲です。シューマンらしさも、充分に出ています。シューマンの有名なピアノ曲や歌曲と比べて、遜色はないと思います。ぜひ、これらの曲が、管楽器業界だけではなく、多くの音楽ファンに聴かれることを願っています。

オーボエの曲ですが、このようにフルートでもやり、また、クラリネット、ファゴット、ヴァイオリンでもやられます。

3曲のロマンスからなる作品で、トータルで13分くらいの曲です。第1曲は、憂いに満ちた音楽で、第2曲は、少しほっとする音楽ですが、中間部で少しドラマチックになります。第3曲は、もっともシューマンらしいというか、少し晦渋な感じもしますが、いかにもロマン派な音楽です。

この曲は、CDごとに、違う楽譜を使っているのではないかと思うくらい、さまざまな楽譜があるようで、細かく音が違います。あまりこだわらずにお聴きになってよいと思います。

クラリネットとピアノのための「幻想小曲集」op.73は、ヴァイオリンやチェロでもやられます。フルートでもやります。ようするに、このあたりのシューマンの「管楽器のための室内楽」は、ある程度、どんな楽器でやっても通用するようなのです。

ホルンとピアノのための「アダージョとアレグロ」は、しばしばチェロでやり、また、オーボエでやられることも少なくありません。私はこの曲を、ラデク・バボラクの生で聴いています。いつか、その日のことも書けたら、と思っています。この曲は、「3つのロマンス」よりも、だいぶ明るいイメージの曲です。ホルンの超絶技巧が炸裂している曲で、生の名演奏に出会うと、圧倒的な感銘を受ける曲です。8分くらいの曲です。

演奏の話をします。「3つのロマンス」については、すばらしい録音があります。オーレル・ニコレ(フルート)と小林道夫(ピアノ)による日本での録音で、私はこれを学生時代に生協で、850円の新品で購入しましたが、どれほど元を取ったかわかりません。すばらしい演奏です。ニコレも、オーボエの楽譜をそのまま吹いているようです。第1曲に、1回、低いシが出てくるのですが、いわゆる「H足(はーそく)」と言われる低いシが出る足部管を持つフルートならば吹けます。また、ランパルの校訂した楽譜のように、フルートの曲としてアレンジされた楽譜もあります。ニコレのCDには、「幻想小曲集」も含まれており、また、シューベルトの「アルペジオーネ・ソナタ」も含まれており、いずれも名演奏です。よほどニコレが調子のよいときの録音なのでしょう。(私みたいなへたくそにも、調子のよい日、悪い日があるように、ニコレほどの名人でも、調子のよい日、悪い日はあります。)

本来の楽器で聴けるCDはと言いますと、NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)で聴ける演奏としては、「3つのロマンス」では、リヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲で超絶的な名演奏を聴かせたフランソワ・ルルーの演奏があり(ピアノ:エリック・ルサージュ)、また、古典的な名演として、ホリガーとブレンデルによる演奏があります。
「幻想小曲集」は、メイエとルサージュによる演奏があります。「アダージョとアレグロ」は、タックウェルとアシュケナージによる演奏がおすすめです。タックウェルの、ハイF(高いファ)に向かって「行くぞ!」と言わんばかりの進み方は、思わず応援したくなるという名演奏です。ノイネッカーの演奏もよいです。YouTubeで聴ける演奏としましては、「3つのロマンス」は、アルブレヒト・マイヤーとグリモーの動画があります。「幻想小曲集」は、ザビーネ・マイヤーの演奏があります。(さっきから、メイエだの、マイヤーだのが頻出していますが、じつは同じつづりです。Meyer。数学をやった人なら、マイヤー・ヴィ―トリスの完全系列を思い出されるかもしれません。私にマイヤー・ヴィ―トリス完全系列を教えてくださった先生は、毎回、「マイヤー」のつづりが違いました笑)そして、「アダージョとアレグロ」には、上に書きましたラデク・バボラクの演奏があります。

とにかく、シューマンらしい美しい曲たちで、短いですし、お聴きになることをおすすめいたします。本来の楽器でない演奏も、大いにおすすめします(お好きな楽器でお聴きください)。ニコレのCDは、いま手に入らないだろうなあと思います。

※2023年6月11日の付け足しです。フルートのエマニュエル・パユが録音しました!上述のニコレ以来で、CDを買いました(いや、トゥルコヴィチによるファゴット演奏のCDを持っているから3枚目か)。すばらしい演奏です。ピアノはまたもやエリック・ルサージュです。もうこの曲を、相手を変えては何回録音するのでしょうかこのピアニストは。パユのCDには、上述の幻想小曲集も入っているほか、クララ・シューマン(シューマン妻)の3つのロマンス、ファニー・メンデルスゾーン(メンデルスゾーン姉)のリート、いわゆる大メンデルスゾーンのソナタなどが入っています。パユの特徴でもありときに欠点でもある気がするのは、フルート以外の名曲をフルートで演奏してしまうことですが、それでもこれは比較的、悪趣味にはなっていないと感じました。シューマンの曲以外、知らない曲なのですが、フルートの曲だと思って聴いて違和感はないですね。これが私の青春時代を支えたニコレの850円のCDにまさるかというと、まさらない気はしますが、パユがこの曲を録音する日を待っていた私としては、このCDは特別である気がします。付け足し終わりです。

以上です!

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