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外山雄三を讃えて#12 ラフマニノフ「交響曲第2番」

 書くことがなくなってきたときは、音楽の話を書きます。じつは、自分のnoteの記事を分析してみると、クラシック音楽の記事は、とても閲覧数が少ないのです。なんかなさけないですけど、きょうも書いてみることにします。よく、クラシック音楽のブログみたいなのを書いて成功なさっているかたがいらっしゃいますが、私がそういうかたと決定的に違うのは、私は、「音楽を聴いた感想を、言葉で表すのが苦手」らしいのです。これは「「たまもの」のふしぎ」という記事でも書きましたが、人間の能力って、ほんとうにふしぎで、優劣はつけられないのですが、私は相当のクラシック音楽オタクであり、また、採譜の能力もありますけれども、こういう記事を書くことには向いていないようであります。しかし、きょうもちょっと書いてみようと思います。

 2000年3月18日、サントリーホールで、仙台フィルの東京公演を聴きました。外山雄三指揮です。曲は、北爪道夫「地の風景-オーケストラのための」、クイスマ:ティンパニ協奏曲、ラフマニノフ:交響曲第2番、でした。ティンパニのソロはライナー・クイスマです。作曲者の自作自演でした。

 この日の正確な日付、会場、前プロがわかったのは、あるマニアのかたが検索してくださったからです。ありがとうございます!私が大病をする前ですね。洗礼も受ける前ですね。

 外山雄三は、このころ、ひんぱんに、全国のオーケストラで、ラフマニノフの交響曲第2番を指揮していました。ひんぱんに音楽の雑誌に評論が乗り、また、よくラジオ放送されているようでした。しかし、私が、ラジオ放送があったことに気が付くのは、まず、放送が終わった後なのです。「また聴きそこねた、くやしい」という思いでした。それが、なんと生で聴ける!しかも外山雄三が音楽監督をしている仙台フィルで聴ける!ということで、たのしみにしておりました。

 これは、仙台フィルの東京公演ですが、そのころ、仙台フィルは、ヨーロッパへツアーに行っていたのでした。そのころはインターネット黎明期で、YouTubeもなく、音楽を聴くとしたらCDを聴くしかなかったような時代ですが、仙台フィルの、レスピーギの「ローマ三部作」のCD(「ローマの松」は円光寺雅彦指揮、「ローマの噴水」は梅田俊明指揮、「ローマの祭り」は外山雄三指揮)がどういうルートでか知りませんが、そのヨーロッパの町に伝わり、「このオケ(仙台フィル)を呼んでみよう」ということになったらしく、それでヨーロッパツアーが実現したらしいのです。その町では、期待に応えて外山雄三指揮で「ローマの祭り」をやったようですが、多くの町では「ラフマニノフの交響曲第2番」をやったようで、この演奏会は、「東京凱旋公演」だったのです。

 まず、1曲目の北爪道夫作品から。外山雄三の主要なレパートリーとして、日本のオーケストラ曲があるわけですが、北爪道夫作品を聴くのは2度目です。(1度目は外山雄三指揮神奈川フィルで聴いた「映照」。「外山雄三を讃えて④」に書きました。リンクがはれなくて申し訳ございません。)これも北爪道夫の作品の特徴である「液体の流れていくがごとき」音楽であり、しかし、「映照」ほど長い作品ではなかったと記憶しています(中プロのクイスマの協奏曲がかなり長く、また後半のラフマニノフがかなり長いものですから、当然、短い曲だったのでしょう)。

 2曲目は、ライナー・クイスマのティンパニ協奏曲。作曲者のソロによる演奏でした。かなり長い作品で、しかもかなりおもしろく、後半には、ティンパニがひたすら同じ音型を繰り返し繰り返し演奏する部分があり、その特徴的なメロディはすっかり耳についてしまい、この演奏会が終わったのちも、しばらくそのメロディは口ずさむことができたものです(この演奏会から21年たち、そのメロディはすっかり忘れましたが)。クイスマ氏はこのころ仙台フィルのゲスト・ティンパニストであり、もともとをたどれば、クイスマ氏は、ノールショピング交響楽団のティンパニストだったのでした。ここに1枚のCDがあります。広上淳一指揮ノールショピング交響楽団による演奏で、モーツァルトの「リンツ」と「プラハ」、外山雄三(作曲家として)の「ノールショピング交響楽団のためのプレリュード」というものです。ここでもクイスマがティンパニを演奏しており、「プラハ」などで、ときどきとてつもない大きな音を出しています。(このCDはおそらく現在は入手困難ですが、いまこのCDを聴くと、これらのモーツァルトは「古楽流」というより「アーノンクールの亜流」であったことがわかるというCDです。ある意味かなり貴重なCDです。)そういうつながりで、クイスマ氏は、仙台フィルのゲスト・ティンパニストになったのではないかと考えられます。外山雄三は、打楽器出身の指揮者でもあるせいか、クイスマのティンパニは、ほんとうに信頼しているようすでした。

 さて、後半のラフマニノフです。このラフマニノフの交響曲第2番を生で聴いたのはおそらく4回、うち1回は「川瀬賢太郎の思い出②」に書きました(リンクがはれなくて申し訳ございません)。残り2回は、アマチュア学生オケです。ラフマニノフの交響曲第2番は、私が学生時代であったころ(90年代半ば)、たまに候補曲に挙がっても落とされる曲で、弦楽器を中心に、かなり嫌われている曲でした。いまはアマオケのなかでも、かなり「やりたい曲」のなかに入ってきているようで、時代が変わってきていることを感じます。何度も書いて恐縮ですが、当時は、ラフマニノフの「交響的舞曲」を、ラフマニノフの「駄作」と呼ぶ音楽評論家もいたくらいですから…。いまはそんな人はいません。演奏会のプログラムでも、CDでも、ラフマニノフの交響曲は、第1番も第3番も(ラフマニノフの交響曲は、番号つきは3番まであります)、同等に見かけるようになり、時代は変わりました。第2番に限っても、国内オケ、国内指揮者によるCDはたくさん見かけるようになりました。外山雄三指揮のCDも出してくださいね!さて、この演奏ですが、「楽譜通り」「インテンポ」のイメージのある外山雄三ですが、必ずしも外山雄三の一筋縄で行かないところは、必ずしも「インテンポ」だけでは語れないことでありまして、この日の演奏も、楽想に合わせて、自然にテンポを動かしていました。それでも外山雄三らしい名演奏で、もう一度、聴きたい!(だからやはりCDを出していただきたい)と思う演奏でした。外山雄三指揮の仙台フィルの演奏会は、3回聴いており、どれも鮮やかな印象を持っていますが、この日もすばらしかったです。「外山雄三を讃えて⑥」(ラフマニノフの交響的舞曲)、「外山雄三を讃えて⑨:アルプス交響曲」とあわせて3回です。リンクがはれなくて申し訳ございません。このころ、私は、ある市民吹奏楽団にエキストラとして行っていたのですが、そこの若いティンパニの友人に会いました。「ティンパニ協奏曲」ということで聴きに来ていたようですが、むしろ、クイスマのティンパニは、後半のラフマニノフのオーケストラ・プレイングがよかったと言っていました。(クイスマは、ラフマニノフでは、オケのなかでティンパニを演奏しました。)また、この日は、珍しくP席ではなく、しかし安い席で、記憶にあるのは外山雄三やクイスマの横から見た姿です。どうも、上手(コントラバス側)の「横から」見える席で聴いたのですね。たいへん印象に残るいい演奏会でした。以上です。

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