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方程式

(中学1年生で、方程式を習い始まった人向けの記事です。)

$${2}$$乗して自分自身になる数を思いつきますか?

$${1}$$ですか?そうですね。$${1^2=1}$$ですからね。そのほかにはありませんか?

$${0}$$ですか?そうですね。$${0^2=0}$$ですからね。そのほかにはありませんか?

結論から申しますと、もうないのですが、「もうない」ということを言うのは大変ですね。

(この話は、$${1}$$と$${-1}$$の決定的な違いを言っているつもりです。中学に入ると負の数を習って「$${-1}$$キロ増えるのは$${1}$$キロ減ること」などと習いますので、あたかも正の数と負の数はリバーシブルな気がしてくるのですが、実際には、「$${1}$$は$${2}$$乗して自分自身に戻るが、$${-1}$$は$${2}$$乗して自分自身に戻らない」という顕著な特徴があります。正の数と負の数の決定的な違いです。)

ここで、「方程式」を立てましょう。「$${2}$$乗して自分自身になる数」を$${x}$$とするのです。$${2}$$乗して自分自身になるわけですから、以下のような方程式が立ちます。

$${x^2=x}$$

これ、「方程式を立てる」のがいちばん頭を使いますからね。上の方程式を思いつくところがいちばん頭を使うと思います。以下にこの方程式を解きますが、それは機械的な操作でいけます。

さて、この方程式を解きましょう。左右の両辺が等しいので、同じものから同じものを引いても同じですから、両辺から$${x}$$を引きましょう。

$${x^2-x=x-x}$$

$${x-x=0}$$ですから、以下のように式を変形できます。

$${x^2-x=0}$$

ここで、一見、不自然かもしれませんが、この方程式を以下のように変形します。

$${x \times x-x \times 1=0}$$

ここで、分配法則の逆を使います。

$${x \times (x-1)=0}$$

よろしいでしょうかねえ?すなわち以下のようになります。

$${x(x-1)=0}$$

方程式のいちばんの強みは、逆が成り立つことです。普通、ものごとは逆が成り立ちません。「犬は動物である」は成り立ちますが「動物は犬である」は成り立ちません。後者が成り立つと、世の中のあらゆる動物が犬になってしまいます。しかし、方程式というものは、逆が成り立つように変形しています。すなわち、この議論は逆がたどれるのです。ここも、逆が成り立つように先をすすめます。

これは$${x}$$と$${x-1}$$という、$${2}$$つの数をかけて$${0}$$になっています。複数の数をかけて$${0}$$になるということは、それらの数のいずれかは$${0}$$です。このように$${2}$$つあれば、両方とも$${0}$$でもかまいません。しかし、両方とも$${0}$$でないのはダメです。$${0}$$でないものと$${0}$$でないものをかけて$${0}$$になることはないからです。これが「逆も成り立つ」という意味です。つまり、逆も成り立って、以下のようになります。
 
$${x=0}$$ または $${x-1=0}$$
 
$${x-1=0}$$は、両辺に$${1}$$を足して、以下のように変形できます。
 
$${x-1+1=0+1}$$
 
すなわち、$${x=1}$$です。つまり、方程式が解けまして、
 
$${x=0}$$ または $${x=1}$$と言えました。
 
ちゃんと$${0}$$と$${1}$$が出て来ております。
 
しかも、方程式の強いところは、「$${2}$$乗して自分自身になる数は、$${0}$$と$${1}$$以外に、ない」ということが言えた点です!これは強い!これは、方程式というのは逆も言えるからです。「愛知県の県庁所在地は」と聞かれたら「名古屋市です」と答えるでしょう。しかし、もしも岡崎市(というところが愛知県にはありますが)にも県庁があったら「名古屋市と岡崎市です」と、すべて答えないとダメでしょう。県庁所在地が2つ以上ある県はないと思いますが。あるいは「東京都の県庁所在地は」と聞かれたら「ありません」と答えるでしょう。東京都は県ではないですからね。「都庁」はありますけどね。
 
もうひとつ、似た問いを考えましょう。
 
逆数が自分自身になる数は何でしょうか。
 
$${1}$$はそうですね。それからほかにはあるでしょうか。
 
$${-1}$$もそうですね。ほかにはあるでしょうか。この「ほかにはもうないか」という問いが難しいですね。
 
逆数が自分自身になる数を$${x}$$として、方程式を立てましょう。
 
$${x}$$の逆数はどうなるでしょうか。方程式を立てるところがいちばん頭を使います。
 
$${x}$$の逆数は、$${\frac{1}{x}}$$です。
 
ほんとうですか?
 
$${2}$$の逆数は$${\frac{1}{2}}$$ですな。$${3}$$の逆数は$${\frac{1}{3}}$$ですよね。では、$${\frac{1}{3}}$$の逆数は?$${\frac{1}{\frac{1}{3}}}$$ですか?
$${\frac{1}{\frac{1}{3}}}$$の分子・分母に、$${3}$$をかけてみましょう。
$${\frac{1}{\frac{1}{3}}=\frac{1 \times 3}{\frac{1}{3}\times 3}}$$ですね。すなわち
$${\frac{3}{1}}$$となって、$${3}$$ですね。たしかに$${\frac{1}{3}}$$の逆数は$${3}$$ですね。
 
というわけで、どうやら$${x}$$の逆数は$${\frac{1}{x}}$$でよさそうです。ここで分母が$${0}$$であってはいけないので($${0}$$で割ることはできません。それはまた日を改めてご説明いたしましょうか)、$${x \neq 0}$$と断った上で、
$${x=\frac{1}{x}}$$と方程式を立てましょう。これで方程式が立ったことになります。
 
ここから、その方程式を解いていきますね。
 
両辺に、$${x}$$をかけます。すなわち$${x \times x=\frac{1}{x}\times x}$$となり、右辺は約分されて
$${x^2=1}$$となります。この方程式は、「$${2}$$乗したら$${1}$$になる数はなんですか」と言っています。それはおそらく$${1}$$と$${-1}$$しかないだろうと思うわけですが、もう少しお付き合いくださいね。
 
この両辺から$${1}$$を引きます。次のようになります。
 
$${x^2-1=1-1}$$
 
すなわち
 
$${x^2-1=0}$$
 
です。
 
ここで、「どうしてそんなことを思いついたのだ」という変形をします。左辺で、$${x}$$を引いてから$${x}$$を足すのです。それは$${0}$$を足していることになりますから、なにもしなかったのと同じことですので、問題ない計算ですし、ちゃんと逆もたどれるのですが、とにかく「どうしてそんなことを思いついたのだ」と言いたくなる変形です。でも、やりますね。
 
$${x^2-x+x-1=0}$$
 
ここで結合法則を用いて、カッコをつけます。
 
$${(x^2-x)+(x-1)=0}$$
 
さきほどと同じ変形なのですが、$${x^2-x=x\times x-x\times 1}$$ですので、分配法則の逆を使って、方程式全体は以下のように変形されます。
 
$${x\times(x-1)+(x-1)=0}$$
 
ここで、以下のように変形して、
 
$${x\times(x-1)+1\times(x-1)=0}$$
 
また分配法則の逆を使います。左辺の$${2}$$つの項にそれぞれ$${x-1}$$がありますからね。
 
こうなります。
 
$${(x+1)\times(x-1)=0}$$
 
ごめんなさいね。ついて来られていますか?
 
よろしければ先へ進みますね。以下のようになります。
 
$${(x+1)(x-1)=0}$$
 
また、$${2}$$つの数をかけて$${0}$$になりました。これは、いずれかが$${0}$$です。この変形が「逆が成り立つ」ことは先ほど言いました。つまり
 
$${x+1=0}$$または$${x-1=0}$$です。ここから
 
$${x+1-1=0-1}$$または$${x-1+1=0+1}$$となり、
 
$${x=-1}$$または$${x=1}$$となって方程式が解けます。
 
たしかに、$${-1}$$と$${1}$$だけが出て来ました。そして、方程式というものは逆が成り立ちます。つまり、逆数が自分自身になる数は、$${-1}$$と$${1}$$のほかにはもうないということも言えたのです!
 
これは強くないですか?すごく強いですよね!
 
これが方程式の強いところです。「ほかにはもうない」と言えるところですね。
 
もうだいぶ方程式になじんでいる高校生の皆さんとかも、忘れないでくださいね。方程式というのは、その式を満たす数を求めるだけではなく、「その式を満たす数はすべて求める」ということであることを、忘れないでくださいね。
 
本日は以上です!

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