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バーンスタインのマーラー(いまさら)

 (いまから、またクラシック音楽のオタク話を書こうとしています。マーラーの交響曲について書こうとしています。そんなマニアックな話でもよろしければお読みください。ただしおもしろい話が書けるかどうかは保証できません…)

 ナクソス・ミュージック・ライブラリ(NML)というサービスに、図書館のカードで無料で入るようになって、いろいろなクラシック音楽の音源を、たくさん聴けるようになりました。こういうのをサブスクとか言うそうですが、図書館で無料で聴ける場合がありますので、音楽の好きなかたにはおすすめしたいサービスです。

 このおかげで、学生時代から、有名な音源なのに、聴けなかったCDなどが、たくさん無料で聴けるようになりました。本日、話題にするのは、有名な、バーンスタイン指揮の、晩年のマーラーの交響曲全集です。

 マーラーへの私の思いは、以下のだいぶ前の記事に書きましたので、繰り返すことはしませんね。すみません。



 私が学生時代に有名だったマーラーの交響曲全集は、ショルティ指揮シカゴ交響楽団とか、インバル指揮フランクフルト放送交響楽団とか、ベルティーニ指揮ケルン放送交響楽団などでしたが、とても有名だったのが、このバーンスタインの全集です。オケは、ニューヨークフィル、コンセルトヘボウ管弦楽団、ウィーンフィルと、3つのオーケストラにまたがっています。大学に入ったばかりのころ、コンセルトヘボウの9番の2枚組のCDが、よくお店に売っていたのを覚えています。マーラー開眼前の私に、それを貸してくれた仲間もいました。私にはよさがわからなかったものです。

 いままで、生で聴いたコンサートを思い出しての記事も書いたことがあります。スヴェトラーノフ指揮N響の7番、大友直人指揮東響の6番、デュトワ指揮N響の1番。いちいちリンクははらないことにいたしますね。わかっていなかったころの出来事なので、ちんぷんかんぷんだったからです。惜しいことをしました。ほか、アマオケで、2番や5番は聴きました。1番は、自分でやったこともあります。4番フルート(2番ピッコロ持ち替え)でした。ひたすら休んで、第4楽章で、ピッコロ炸裂!たのしかったけど意味は不明でした。

 それで、NMLのおかげで、あらためてバーンスタインの全集を聴くことができるのです。じつは、バーンスタインのマーラーには苦手意識がありました。あまりにも大げさに感じられるのです。そもそも初めて買ったマーラーのCDは、中学のとき、「大地の歌」(バーンスタイン指揮イスラエルフィルほか)でした。ちんぷんかんぷんで、不幸な出会いでした。

 たしかにこれはくどい演奏ばかりです。2番「復活」などは、あまりにも強烈すぎて、くどいと感じます。もともと曲が濃いわけですが、それをまた濃くやっているので、極めてくどい仕上がりになっています。7番も元気すぎる気がします。何度も書いて恐縮ですが、7番は、アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団のような演奏が望ましいのであって、バーンスタインのマーラー7番は、濃すぎだと思います。9番は、それほどくどいとは思いませんが、学生時代に、バーンスタイン指揮ベルリンフィルのマーラー9番を聴いて「そこまでやるかあ?」と思った記憶がありますので、基本的に、バーンスタインのマーラーはくどいのでしょう。大げさというか。

 しかし、それが奏功している曲もあります。1番などは、手に汗にぎるような、スリリングないい演奏ですし、5番も、すばらしい出来だと思いました。もちろん大げさなのですが、それが嫌な感じではありません。「マーラーの真実」みたいに感じました。

 3番は、やはりちょっとくどいと思いましたし、6番もすごく濃い。8番も濃いのですが、まずNMLは、トラックのあいだで音のギャップが生じまして、そして、バーンスタインのマーラー8番は、たくさんのトラックに分かれていて、ひんぱんに音が飛びますので、これは聴いていられないものです。でも、すごい演奏ですね。10番は、第1楽章のみです。私は、10番は、クック版などの、補筆完成版を好みますので、できれば補筆完成版(全5楽章版)で聴きたいのです。

 学生時代に出会った、あるマニアックなCD屋さんの店長さんは、「マーラーの5番の第3楽章や第5楽章を『わかる』という人は信用ならない」と断言し、そして第9番の第4楽章を絶賛していました。これは残念な意見で、前にも書いたことで恐縮ですが、マーラーの魅力って、その支離滅裂ぶりにあると思う私は、第5番も全楽章、好きです。その人は、第7番とか、まったく評価しないのでしょうか。第7番は、その支離滅裂ぶりがすてきな曲です。「唐突なハッピーエンドには一抹の真理がある」という記事を書いたことがありますが、音楽の世界でそれを挙げるならば、メンデルスゾーンの「スコットランド」とか、チャイコフスキーの5番なども、その例に含まれるかもしれませんね。いずれも私は大好きです。最後だけハッピーエンドになる「ヨブ記」とか「ヨハネの黙示録」も好きです。

 というわけで、バーンスタイン指揮のマーラー交響曲全集を聴いてみての感想は、1番とか5番がいいのです。こういう曲は、バーンスタインの強烈さが長所になっていると感じます。かっこいい!っていう感じです。いまさらバーンスタインのマーラーについて書いていてしようがない感じですが、とにかくようやくこの全集を聴いたわけですので、あらためて感想を書きました。いまはもっとすぐれたマーラー演奏があるでしょうが、これは一世を風靡したものです。バーンスタインの功績を低く見積もることはできないと思います。どうもオタク話に付き合わせてしまいまして申し訳ございませんでした。また。

 (※私が宗教に頼るのは、神仏に助けてもらえないと生きていけないからです。弱い人間なのです。マーラーの音楽に私が共感するのも、弱ったときに染みこむ音楽だからではないかと思います。人生そのものです、マーラーの音楽は。)

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