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フォーレのフルートとピアノのための曲

これは私がときどき書くクラシック音楽オタク話です。それでもよろしいというかたはどうぞお読みください。

フォーレについて、記事を書いたことがなかったようです。その理由ははっきりしています。私はフォーレについて、記事を書く資格がないと思ってきたからです。フォーレには深みがあるようです。フォーレについて詳しい人からしばしば聞きます。私は以下に挙げるフォーレの入門編のような曲しか知らないのです。それでも開き直って記事を書きたいと思うわけです。おもにフルートのレッスンで習ったフォーレの曲についてです。フルートをやる人にはおなじみの曲かもしれません。

はじめてフォーレの曲に接したのは、いまから30年以上前、中学のときに「ドリー」の「子守歌」のフルート版に接したときかと思います。はっきりコードネーム化できるその和声進行に感じ入りながら、レッスンを受けた記憶があります。

つぎが「シチリアーノ」だと思います。これはオーケストラ曲からの編曲(だれによる編曲かは知りません)です。組曲「ペレアスとメリザンド」の第3曲です。この曲は、レッスンで習ったのみならず、人前でもずいぶん吹いたものです。高校3年のときの文化祭の室内楽で、後輩のピアノで演奏したときのことなど、よく覚えています。レッスンで習ったときのこと。途中に「ソーレ」という特徴的な音型がありますが、絶対音感があって階名が擬音に聞こえる私には「フォーレ」と感じられたことを覚えています。

大学に入ってから「モルソー・ド・コンクール」を習いました。「コンクール用小品」などと表記されます。以下、モルソーと書きたいと思います。フォーレが、コンクールで「初見の能力を見る」ために書いた曲のようです。ゆっくりしたテンポの、歌曲のような(私はフォーレの歌曲をほとんど知りませんが)曲です。フルートをやる人はけっこう知っていたりするので驚いたりもしますが。私はレッスンで、フォーレが書いたダイナミクスの指示にすべて逆らうように吹いていたりしたことを思い出します。穏やかな、いい曲です。いま、これのパユによる演奏が、私の、数学の授業の前の時間調整音楽のひとつになっています。後味が悪くなく、感じのいい曲で、授業前の時間調整にちょうどよい音楽です。

先生には、モルソーは「音作りにちょうど良い」と言われて習ったと思いますが、同じように音作りにちょうど良いと言われて習ったのが「ファンタジー」の前半のゆっくりした部分です。フォーレのファンタジーは、中学のころからカセットテープを持っていて知っていました。これは、通のかたからしても「フォーレくさい」音楽なのでしょうか。全曲をレッスンで習ったことはありません。

さて、フォーレの「フルートとピアノのための曲」というのは、上述の「モルソー」と「ファンタジー」しかありません。ジャン=フィリップ・コラールのピアノを含むフォーレの室内楽全曲録音では、ミシェル・デボストの演奏で、その2曲が収録されていました。これもカセットテープで聴いた音源ですが、いまナクソス・ミュージック・ライブラリで聴けます。モルソーは繰り返し(歌曲で言う1節と2節みたいな。フォーレはダイナミクスを少し変えている)を省いた演奏でした。のちにデボストとイヴァルディのピアノで録音されたもののCDを買いました。いまも持っています。これは18年前の結婚披露宴で流しましたね。同様の趣向のCDとしては、エリック・ルサージュのピアノによるものがありますが、これはフルートがパユであるわけです。そこにはファンタジーとモルソー以外に、シチリアーノも含まれています。フォーレのオリジナル作品とは言えないだろうと思いますが、サービスで入っているものと思われます(よく演奏されますし)。パユも、ファンタジーやシチリアーノは何度目の録音であろうかと思います。

ファンタジーの、前半だけをレッスンで習ったと書きました。じつは先生も知らないことだろうと思いますが、「ファンタジーの前半だけ」というのは、ジンマン指揮のCDに入っていたのです。オケ版。「ペレアスとメリザンド」の、上述の組曲以外から抜き出された楽曲のなかにあったのです。

さて、この記事に、私の作成した楽譜をはります。シチリアーノのオケ楽譜のチェロのパートの、imslpから手で写した、finaleで作成した楽譜です。



シチリアーノには、ピアノ譜の、フラットが2つに戻ったあとに、ラのフラットなのかナチュラルなのか、どちらかわからない(どちらの楽譜もある)箇所があるのです。演奏も、両方ともあります。

(この楽譜で、10小節目の、ラのフラットのことを言っています。)

上述のルサージュの演奏では、フルート版ではナチュラルとし、そのあとに入っているチェロとピアノ版(これがオリジナルと考えられます)では、フラットで弾いていますので、少なくともルサージュは気が付いています。レッスンのときに私がこれを指摘したら、先生は、それならフラットだよと言い、それは有名なフルートパートの誤植なので、そこではなく、といって、フラットが2つに戻ってからのピアノパートだと申し上げると、先生はさまざまな楽譜を出してきました。フルートとピアノの楽譜では、ほぼすべてがナチュラルでした。先生がオケのスコアを出してくるとそれはフラットであり、先生はすべてのピアノパートのその箇所にフラットを書き込んでしまいました。私は内心、そのスコアはそんなに信用に値するのか、と思ったりしていましたが…。

それを最近、imslpを見て、チェロのパートのパート譜を写したものが上記です。ナチュラルでした。あえてフラットにして写しました。

(これを手で写す作業を通して、このシチリアーノのオーケストレーションはかなり「安っぽい」のではないかと実感しました。これはフォーレ本人によるオーケストレーションでないと聞いたことがあります。フォーレ自身によるオーケストレーション、レクイエムとか(?)と比較して検討する価値はあるかもしれません。私、それをやるかどうかはわかりませんけど…。やらないか。)

というわけでした。いわゆる通は書かない記事です。しかし上の「フラット問題」はある意味で通向けかもしれません。以上です!

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