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爪噛み癖の当事者研究(2)

https://note.com/3150_sinriya/n/n1bc3dc9fb8bc
連載と言っておきながら間が空いてしまった。

今回は前回の続き、爪噛みが生じる背景とそれに基づく解消法について解説していきたい。

「そんなことはどうでもいい!早く治療法や解消法を教えろ!」という方もいるかもしれないが、前提としての機序を押さえておかないとその後の対処法などについて話しても象牙の塔にしかならない可能性がある。

スライド5

爪噛みは複合要因の組み合わせ

上記の図は先行研究を概観したスライドである。
簡単に解説すると、オニコファギア(爪噛み)が生じる原因としては以下3つが考えられる。

①愛着、家族関係の問題
②人格、完璧主義的な問題
③発達特性、不注意的な問題

個人の経験から話させてもらうと、自分で当てはまるのは、①②ではなく圧倒的に③であると感じる。
しかし、そもそも①自体が②③から影響を受けたり、逆もまた然りだったりするので、一概に分けられるわけではないと思うが、大別するとこのような形になるのではないか。

たとえば、①の例でいうと家族からの愛がないと感じていた場合、爪噛み行動をすることで「だめじゃない」と叱ってもらえて愛を感じることができるかもしれない。

②はもうそのままで、爪が欠けたり、皮膚のささくれがあった場合それを完璧にしたいという動機から生じる。

③が少し厄介で、発達特性の背景をある程度理解する必要がある。
こちらについては、後程筆者自身の例を挙げて簡単に解説する。

スライド4

爪噛み行動の機能分析~誤学習で成り立つバグ~

心理的な機能分析を爪噛み行動に当てはめてモデル化してみた。
ただ、筆者自身心理士ではあるものの行動療法のバックグラウンドはまだあまりないので、より専門的な人から見てあまりにも的外れである場合ご指摘いただけると幸いだ。

上記の機能分析、複雑となってしまい恐縮ではあるが、①②③の要因を複合的に含められたのではないかと感じている。
(ただしあくまで行動的機能分析に絞ったものではないので、ご注意いただきたい)

簡単に見方を説明すると、「爪噛み」の左側にあるのが先行的な要因(刺激とはここでは言い切れない)、爪噛みの右にあるのが爪噛み行動の結果、そして強化子となって誤学習を促進する要因である。

たとえば、自分を例に挙げると、

爪噛み行動のモデリング

この図の赤枠の部分が機能して爪噛み行動の学習を成立させてしまっているのではないかと思う。

③「発達特性」の問題の解説にもなってくるが、私自身「不注意」「集中しすぎる(過集中)」といったいわゆる発達障害的な特性を持っている。

といっても、全人類それぞれ何らかの発達特性は持っていると思うので、それ単体では何の問題とならない。
ただ、爪噛み嗜癖の問題に至っては、クリティカルな問題をはらんでいる。

私の場合、たとえばYoutubeでゲーム実況を見ているときやテレビを見ているとき、勉強をしてわからないときや難しい考え事をしているときに多く発生するようだ。
(このことについては次回の記事の行動モニタリングと対処の時にもう少し説明したい)

つまり、「不注意」によって覚醒度が下がっている(ボーっとしているとき)や、「過集中」によって集中しすぎて周りの音が入らなくなりすぎないように、ある種対処的に「自己刺激行動」として、爪噛みを行っている。

もちろん、これはあくまで私の例ではあるが、このような発達的な特性によって爪噛み行動が生じ、誤学習までつながってしまっているという背景があるのではないかと考えている。

スライド6

二重プロセス理論

筆者の場合だと(非常に簡単にまとめると)上記図のような悪循環が形成されてしまっているようだ。

「ここまでわかっているなら自分で止めれるじゃん!やったね!」と思う方もいらっしゃると思うのだが、それができないのが嗜癖の辛いところである。

爪噛み行動のモデリング

皆様は二重過程理論というものをご存じだろうか。
二重過程理論とは思考がどのように二つの違った方法で生まれるか、または二つの違った過程(プロセス、処理)の結果として生まれるかのについての理論であり、この二つの過程は無意識の自動的な過程と、コントロールされた意識的・理性的な過程からなるとされている。

これはどの依存症においても同じだが、爪噛み行動の誤学習は、この二重過程における、「自動的な反応」を非常に強く強化する。

すると、頭では「噛んじゃだめだ」と分かっているのに行動としてまったく止められないということが発生してしまう。

これが前回の記事でも話した通り「誤学習から生じる脳のバグ」である。

僕たちは野性をコントロールしなければならない

この記事では爪噛み行動の背景要因と考えられることについて概説してきた。
結論として言いたいことは、様々な要因による誤学習が発生しており、それによって生じている脳のバグを再調整し、理性の力を取り戻して野性をある程度コントロールする必要があるということだ。

こちらについて、対処法や治療についてなど次回の記事で解説していきたい…が、最近私も再発が生じているので自分のコントロールをある程度行って説得力を出してから続きを進めていきたい。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

おたち

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