夜明けのすべて

三連勤が終わって久々のオフ、いつもより遅めに起きて今日は何しようかなぁと布団の中で思案。ふと、予告を観て気になっていた映画が公開されたことを思い出し、布団の中でオンラインチケットをポチッと購入した。

そんなわけで、松村北斗と上白石萌音が主演を務める「夜明けのすべて」を観てきました。監督は「ケイコ目を澄ませて」が記憶に新しい三池唱監督。

PMS(月経前症候群)を抱える藤沢さん(上白石萌音)とパニック障害を抱える山添くん(松村北斗)が病と向き合い、時には支え合いながら、互いに強く生きていこうする物語。

映画鑑賞後、サウンドトラックがとても心地良かったため、Spotifyにあるか検索してみたところ、この映画について映画評論家の方たちが話しているポッドキャストを見つけたので(サントラはまだないっぽい)、良かったら聴いてみてください。僕が言いたいことはほぼ言ってくれていると思うので。あとめちゃめちゃわかりやすい。

ここでも冒頭に語られていたけど、この映画の最大の功績は、PMSとパニック障害というかなり深刻な題材を扱っていながらも、映画を通して全く悲観的な印象を与えないところにあると思う。それぞれの病気の症状が出てくるシーンは、確かに観ていて目を瞑りたくなるほど苦しい。だけどそれ以上に、懸命に生きていこうとする二人の姿に作中何度も勇気づけられる。

個人的には、PMSという症状がどういうものかを知ることができたことも大きかった。映画の中で、藤沢さんにPMSであることを告げられ、お互い頑張ろうねと言われた山添くんが、自分の症状と同等に扱わないでほしいというようなことを言ってしまうシーンがある。その時はまだPMSに無知であったが故の言動だったものの、その時に思わずハッとしてしまった。無意識のうちにPMSよりパニック障害の方が症状的にはキツいよなぁと思っていた節があったから。今回この映画を通して、PMSという症状を知ったからこそ、今後その症状を抱えているがいたら、知らない人よりも寄り添うことがきっとできる。だけど、自分が持つ常識という名の偏見に囚われず、相手のことを理解しようとすることはそんなに容易いことではないとも思ったり。

自分自身、二年ほど前から少々難儀な病気を患っていて、勝手ながら二人と自分自身を重ね合わせながらずっと映画を観ていた。どんなに打ちひしがれようと、これからもこの病気と共存していかなければならないこと、そんな辛く苦しい日々の中にも心躍るような瞬間が確かにあるということ、そして何より、周りにはいつも助けてくれる温かい人がいるということ。時々、周りも自分自身でさえも見失って、孤独になってしまうことがあるから、心にいつもこのことを留めておきたい。

終盤、病気で会社を早退してしまった藤澤さんの家に山添くんが忘れ物を届けに行ったあと、会社まで自転車で戻りながら夕空を見上げるシーンがある。なんてことはないシーンだけど、なぜだかそこで心を鷲掴みにされてしまった。山添くんのその表情が、自分自身とこれまでの人生をそこで初めて受け入れることができたような、そんな表情だった。上手く言えないけど、あの時、あのシーンで、確かに自分も山添くんと同じ気持ちになっていたと思う。そして、そんな山添くんの心情を鮮明に映し出した松村北斗の演技に惚れ惚れした。あのシーンは本当によかった。

三池監督の作品には、人にも自分にも優しくなれるような温かさがある。これから生きていく中で、身体的にも精神的にも辛くなったり、それで自分自身を嫌いになりそうになった時にまたこの作品を観ようと思う。これからそんな映画にたくさん出会えたらいい。たくさんあればあるほどいいですからね。

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