僕の人生を変えてくれた人と初めて会った。

4年前、僕は一切の不安とか恐怖といった感情から自由になった。
自分自身に疑いの感情を抱きながらも、他人を気にせず、自分の道を選ぶ勇気を得た。
彼の言葉が、僕にひとりの独立した人間として生きる力を与えてくれた。
そんな人が先日、ある場所の傘立てにいた。

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先日、とある人物の、活動25周年のパーティーへ行ってきた。千代田区のとあるホテルの、花の名前のついた大広間。7000円という安くない会費。この投資を上回るコミュニケーションを、この会で作れるのか。緊張があった。紹介してくれる知り合いもおらずひとりぼっち。若さを全面的に押し出して積極的に話しかけるしかない。とはいえ、力んでいるとそれはそれで良くない。深呼吸をせねば。

建物を入り、傘立てにつく。

するとそこには、傘以外に何も手に持っていない、大柄な60歳くらいの男性がいた。
マスクをしている上、後ろからわずかに横顔が覗く程度だったが、僕はそれが誰なのか何故かすぐに分かった。

元文部科学省事務次官、前川喜平氏。

白地にストライプの半袖ワイシャツに、ベージュのチノパン。どこにでもいる普通の”おじさん”の風体だった。しかし柔道家のような彼の背中はブレなく力強く隙がなく、それでいて穏やかで優しくて柔らかい空気をまとっていた。

「あの、すみません、前川さんですよね」

「あ、はい、そうです」

「こんなこと言われても恥ずかしいかもしれませんが、私、前川さんの言葉で人生が変わったんです。『同調圧力』の前川さんのところで…」

勝手にファンになられるのも、実は結構迷惑なことだったりするのだ。
尊敬されるとハードルが上がってリラックスできず居心地が悪いし、相手が自分の像を勝手に作り上げていたのだとしたら、なおさら窮屈だ。

「実は、前川さんの章の最後の数ページの好きなフレーズを全て、ノートに書き写したんです」
と言いたかったのだが言わず、その代わりに
「これからも自分を疑いつつ、自分を信じて頑張ります。前川さんのことも応援しております。」

とだけ言った。彼は目尻にシワを寄せ優しく笑った。

学生運動の盛んな時代に、カオスと化した中高で、何が正しくて善なのかは自分で考えるしかないと悟ったこと。人は元来孤独で、何も持たずに生まれ死ぬということ。人間でいられることの意味は、自分で考え判断し行動できることなのだということ。
そして、今の社会や教育はそれを奪う潮流の中にいるのだということ。

もしあなたが、あなたの自由な思考を奪い支配しようとする空気の中にいると感じるのなら。

ぜひあなたがあなたであるために買って読んでみてください。『同調圧力』

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