高3の夏のカミングアウト。「私ね、彼氏以外にセフレが2人いるんだけど、女の子も好きになっちゃった!」


「誰が誰を好きであろうとどうでもいい」と高校生の頃は思っていた。
当時は僕にとってどうでもよすぎて、性的マイノリティは深刻な差別問題に晒されていると認識をしていなかったのか。「悪口を言ったりいじめる人ってバカで低レベルで関わらない方がいい」と同じように「差別する人も低レベルな人で関わっていてもしょうがない」対象に過ぎなかった。

「バカとは関わるだけムダ」というホリエモンの主張はそれに通ずるものがある。

しかし、現実はそうではないことに僕は大学の後半以降、少しずつ気づかされてきた。政治は社会は、"バカ"を排除することはできない。"バカ"と関わることから逃避できる人間など、多分いない。だから、構造から変えなければいけないのだ。
気づけは、僕はホリエモンとかなり違う考えを持つようになっていた

さて、これは僕がそうなる前の高校時代の話。
バイセクシュアル、というワードだったかは覚えていない。でも、彼女からはそれを示すエピソードが語られた。しかしそのカミングアウト、だいぶ情報量が多かった。

「私ね、彼氏に加えてセフレが2人いるんだけど、隣のクラスの女の子も好きになったんだ。彼女にも彼氏がいるんだけど、思い切って告白したら、彼女も私のこと好きになっていたって言ってくれた。普段からイチャイチャしたりしていて、彼女もだんだんそういう気持ちになっていたんだって。”これからはお互い第2のパートナーとして仲良くしていこうね”って約束し合ったんだ!」

そうなんだ。すご。

そして続いて、彼女は医学部を目指す理由について語った。
「産婦人科医になりたいんだ。産婦人科医ってさ、圧倒的に男性が多いじゃん。妊婦は全員女性なんだから、自分の性器を見せる相手が男性なんて、心理的抵抗が大きいはず。私もかなり抵抗がある。そういう女性が多いと思うから、自分は女性の産婦人科医になって安心させてあげたい。あと、私自身がバイだからいろんな女の子の秘部を見たり触ったりを合法的にしたい!」

いや待て。最後の一文。これだけで、それまでの思いやりと高い課題意識に溢れた話を全て吹き飛ばしてしまってるぞ。それでいいんか。

と、突っ込みたかったが、ただでさえ受験生の僕の頭はすでに情報過多で処理に追われており、何も言えなかった。
別に相手にその気持ちを悟られなければいいのか。悟られなければ、男性であるよりも女性の方が安心するわけで、相手にとってはプラスだから問題ないと言えるのか。分からなくなってきた…

同性愛。ポリアモリー/オープンリレーションシップ。医者のジェンダーギャップ。性的対象化。見るということの暴力性。客体側の無意識の差別。
今思えば、性とジェンダーに関するテーマがてんこ盛りだった。

彼女も浪人したようで、浪人中に一回だけLINEがきた。
その後の接触はなく、一浪では受からなくて、二浪の末にとある旧帝大の医学部に受かったという噂を聞いた。

今、どこで何をしているのだろう。また会えたら話を聞いてみたい。
医学部の勉強をしてどうだったか。このおよそ10年の間に何があって、価値観や性格がどう変わっただろうか。下心の暴走が起きてないと願いたい…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?