なんかさ、とってもきれいだけど とっても寂しい花だよな 荒れ地や痩せ地でも育つってのもさ 豊かじゃないってことみたいだし なんでだろうな、こんなにきれいなのに こんなに真っ白なのに 茎は真っ赤なんだよな、血の海みたいだ うん、お前みたいだな、って思うよ 文字あそび 蕎麦の花~そばのはな~ 冷涼な山間の畑で栽培される一年草。 荒れ地・痩せ地でもよく育つ。
島隠る舟にございますね あなたのようなお人は呼ばれてしまうのですわ お舟によばれて島に隠されてしまいますの さぁ、隠されたお人はもう帰りませんから どうなるかなんて誰も知りませんわ 無駄だと思いますわ 帰ったところで あなたを見る者なんておりませんもの 文字あそび 島隠る~しまがくる~ 島影に隠れること。
里の霧は晴れることがありませぬ 霧に閉ざされた里は 霧に守られた里でもございます 足元さえ見えぬ白い世界では 見えるものなど信じてはいけませぬよ 目に見えるものは紛いもの 耳を頼りに進むのが吉 …とはいうものの、 わたくしのこの声が紛い物でないとは…ねぇ 文字あそび 狭霧~さぎり~ 霧。 「さ」は「さ百合」「さ曇る」など、名詞・動詞・形容詞に付いて語調を整え、歌語を作る接頭語。
三束の雨さんは足が速いよ もたもたしてたら捕まえられちまうよ 頭の天辺から足の先まで ぐっしょりとやられたら、もうおしまいだ 雨さんの一粒一粒が肌から腹へと入り込んで 人の形じゃいられなくなるんだよ 歩けないあんたじゃ、 逃げられっこないだろうねぇ 文字あそび 三束雨~みつかあめ~ 雷雨が近づいてくる速さを表現する言葉。 群馬県沼田地方などで使われている。 「三束」は稲三束のこと。雷雲が発生してから、稲を三束も束ねないうちから降り出すところから生まれた言葉。
花言葉は「片思い」だって ほら、葉っぱがアンバランスなハート型だろ でもさ、 アンバランスだろうがハートはハートだよな 見えている部分はアンバランスでも そうじゃない部分で ちゃんとバランスが取れているかもしれないのに なぁ、そう思わないか? 文字あそび 秋海棠~しゅうかいどう~ 庭園などに植えられ、次々と枝分かれした花茎の先に、秋、海棠に似た薄紅色の花をつける多年草。
あそこまでたどり着いたなら もう離れることなぞないのでしょう 西方だろうが東方だろうがかまいはしません 共にあればそこが浄土 海と空が溶けあうのですから 悲しみも憎しみもすべて悦びに溶けてしまうと そう信じることだけが今を繋いでいるのです 文字あそび 水天髣髴~すいてんほうふつ~ 遠い沖合で、海と空がひと続きになって見分けがつかないさま。
今はここから見つめるだけ これでもしがらみの多い身でね そりゃ、いつだって願ってるさ 温もりを分け合えるほど近くに、ってね でも、今はここから見守るだけ あの子だってわかってるのさ 今はこれが一番良いはずだって、ね 迫間~はざま~ 物と物との間の狭い所。すきま。 谷。谷間。 ある事柄と次の事柄との間の時間。 「狭間」とも。 ●写真:むにさん https://twitter.com/160muni911
決まり事でございます 良き便りは、わたしからあなたへ 悪き便りは、あなたからわたしへ わたしたちが決めたことではございません ただ、そう決まってしまったのです 良き便りを、 爪の先ほどの吉事をかき集めて良き便りを あなたからの便りがないことも良き便りに 文字あそび 恒信風~こうしんふう~ いつも一定方向へ吹いている風。貿易風。
夏の終わりの驟雨のように君は 僕の心をずぶぬれにして ぽっかりと開いた胸の穴を 瞬く間に溢れさせてしまった 終わったはずの夏の夜の夢は 強引に幕を押し上げ 奈落の底すら輝く湖にして 夢を現実に塗り替えていく 夢から醒めた夢は夢ではないと 僕の心に注ぎ込んでいる 文字あそび 沫雨~まつう~ 驟雨(にわか雨)のあとの水たまりが溢れること。 「雨沫」は雨のしぶき。
いかにも人の生は葛籠折りではございますが あながち悪いことでもございません 一直線の急な坂道ばかりでは このような語らいもできませぬし 葛籠に折れているがゆえに あなたさまとの時もあるということ さて、また葛籠の曲がり角にて お目にかかりましょうぞ 文字あそび 葛籠折り~つづらおり~ いくつもくねくねと折り曲がった坂道。
寝覚月だとて、坊の眠りは深くてござるな 幼子だけの眠りの時であるからの 我ら年寄とは時の長さが違うのよ さてさて、いつまででも眺めていたい寝顔だがの そろそろ連れてゆかねばな 上つ方がお待ちでござるわ 寝覚月だからの まんじりともせずお待ちであろうよ 文字あそび 寝覚月~ねざめづき~ 旧暦9月の異称。 夜が長く、寝覚めがちな月であることから。
お山の御子でございます 転ばぬように震えぬように このようにぐるりとお守りしているのです ご覧ください この鮮やかな朱橙のお姿を 我らはこのお姿が引き立つよう 碧に控えているのです 里のお方、 どうぞ騒がれませぬように そして、来年もまたおいでくださいませ 文字あそび 車百合~くるまゆり~ 高山の草地に自生し、濃い緑色の葉が花軸のい中ほどを車輪のようにぐるりと取り巻いて生えているところからの名。 夏に花茎の先端に朱橙色の花を咲かせる。
俺の知らない誰かと旅立ったあいつは 俺の知らない誰かと手を取り合って 俺の知らない誰かに笑顔を向けていた 共に育ったあいつは輝く雲に乗って 共に育った俺に眼差しひとつ向けずに 共に育った思い出も失くしたのだろう あいつの中の俺はどこに消えたのだろう 文字あそび 慶雲~けいうん~ 太平の世に現れるという、美しくめでたい雲。
だって、仕方ないじゃないか ここまで来てしまったんだから 今、ここにいる もう、帰る道はない 幸い、陽射しは降り注ぎ緑も豊かだ 帰る道はないけれど進むことはできる ここにとどまるのなら好きにしたらいいさ 私はもう少し行ってみる それじゃあ、ね 文字あそび 事過境遷~じかきょうせん~ 状況が変われば、それにつれて心境も変わっていくこと。 過ぎ去ってしまえば、その物事の境遇や周囲の様子も変わっていくこと。
そろそろいいんじゃないかな いいかげん、待つのも飽きたし ほんの少し道をひらいて ほんの少し道を照らして 最初の一歩さえ踏み出してしまえば 最初の光さえ見つけてしまえば ほら、こっちへ ほら、聞こえるだろう 文字あそび 誘掖~ゆうえき~ 力を貸して導くこと。 ●写真:むにさん https://twitter.com/160muni911
そんなに泣いていると民が困ります 悲しいのも寂しいのもわかりますが あの子も民が困ることは望みますまい ご覧なさい あの子のお気に入りの川だってあんなに あぁ、もぅ、あの川を見てまた泣くのですか あぁ、もぅ、あなたがそんなに泣くから 私が泣けぬではありませぬか 文字あそび 滂沱~ぼうだ~ 大雨の降るようす。 涙がたくさん流れる意で使われることが多いが、雨にも使われる。