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ライチ

タイで妊婦をしていたあの頃、私の食を救ったのは路店のフルーツだった。 マンゴスチンにランブータン、ドラゴンフルーツにモンキーバナナ。ライムを絞ったパパイヤ、注文するとその場でカットしてくれるスイカ、マンゴー。 どれもが最高に美味しくて、慣れない土地での身重でもその瞬間は最高に幸せだった。 中でも忘れられない味がある。 それは、ライチ。 旬になると枝についたままの、プリップリが束になって売られる。ビニール袋に溢れそうなほど詰め込まれたライチ。大粒のものが30個は入ってい

    • 友情のかぼちゃプリン

      次男を出産した後すぐの事だから、6年も前になる。 あれから毎年、この季節になるとかぼちゃプリンを思い出す。 「何か欲しいものない?」 こう聞かれた時の私は決まって、 「ないよー!」だ。 幼少期からずっとだからそれはもう染み付いていて特に何も思わないし、周りの誰も気にする様子はない。 しかしその時は違った。 恐らく相当に疲れていた。 身も心もヨワヨワで、自分なんてものを無くしていた。 「何か欲しいものない?」と聞かれ、 「かぼちゃプリン」と即答した。 友人は相当喜んでくれ

      • 優越のコーヒーフロート

        バイキングが好きだ。 だって自分の好きなものを好きなように皿へ盛る事ができる。 全てが適量で完璧。 人は私の皿を見てこう言う。 「それじゃモト取れないよ」 それでもいい。 自分にとっては完璧なのだから。 しかし言われてしまった以上気になることは否めない。 モトを取るべきか。 その日のバイキングも完璧だった。 グリーンカレーと菜の花和えとシュウマイ三つ。 正直シュウマイは無くてもよかった。 しかし『モト』を取るべく、これなら大丈夫だろうと並べた。 満足だった。 おかわりはしな

        • 水筒

          嫌いな家事がある。 ほぼほぼ主婦であり大抵の事には苦を感じないが、どうにも好きになれない家事。 それは、水筒洗い。 まず蓋を開ける所からもう既に辛い。 人の手によって絞められた蓋は堅い。 やっとの思いで開いた後にはパッキンを外す。 これもなんとも難しい。 高性能であればあるほど外れにくい。 格闘しながら、 「あーこれ装着させるのもキツいんだよな…」 と明日の朝の事まで考えてしまい更に辛くなる。 毎回の事だがやってしまう。 息子二人分のものは1.8ℓでデカい。 夫は2本。熱い紅

        ライチ

          たとえ地球がまるくなかったとしても。

          昨日から決めていた。水曜日の朝は、ビーチでブランチをすると。お気に入りのパニーニとコーヒーで。正直、朝起きてから少し迷った。家でしておきたい仕事もあるな…。でも、とりあえず出てみた。立て続けに8が四つ並んだナンバープレートを見た。道路では、それはそれは美しい赤と緑のキジと遭遇した。なんだかいい感じだ。決めた通りに行っていいんだと思った。 車を走らせること40分。久しぶりの海だ。初夏を思わせる太陽が朝の海を照らす。風はまだふんわりと優しく心地よい。思い切ってパニーニを2つ買った

          たとえ地球がまるくなかったとしても。