たとえ地球がまるくなかったとしても。

昨日から決めていた。水曜日の朝は、ビーチでブランチをすると。お気に入りのパニーニとコーヒーで。正直、朝起きてから少し迷った。家でしておきたい仕事もあるな…。でも、とりあえず出てみた。立て続けに8が四つ並んだナンバープレートを見た。道路では、それはそれは美しい赤と緑のキジと遭遇した。なんだかいい感じだ。決めた通りに行っていいんだと思った。
車を走らせること40分。久しぶりの海だ。初夏を思わせる太陽が朝の海を照らす。風はまだふんわりと優しく心地よい。思い切ってパニーニを2つ買った。スタンダードと、チリ味だ。それにブレンドコーヒーも忘れない。まだ誰もいないビーチへ向かう階段を降りながら、久しぶりのこの感覚にわくわくが増す。ひとりを味わう大切な時間。やっぱり私には、この時間が必要なのだ。
木陰を背にして座れるベストポジションを見つけ、まずはパニーニだ。ハムとチーズ、シャキシャキのキャベツにほんのり辛いチリソースがたまらない。途中でトマトにも出会えた。最高だ。
小さなこどもを連れた若そうな夫婦がビーチに降りてきた。お母さんらしきひとは日傘をさし、海にテンションが上がったこどもの、嬉しそうな悲鳴が響きわたる。反対側からは、2人連れのおばさん。浜辺を100メートルほど歩き、何か見つけたのか、鞄から出したビニール袋に入れて、また反対側から帰って行った。それと同時に、さっきパン屋さんで見かけたブラジル人らしき女性グループが3人ではしゃぎながらやって来た。浜に降りるとすぐに裸足になり、風や波を楽しんでいたかと思うと、あっという間にいなくなった。
潮の香は、何年か前に住んでいたタイでの記憶を蘇らせる。ここにいる、それぞれの心はいま何を感じ、どう今までを生きてきたのだろう。ほんの少しの同じ瞬間をこのビーチで過ごし、この先はまた別々のそれぞれだ。パニーニを2つ食べ、コーヒーを飲み干す間の、ほんの少しの瞬間。
やっぱりチリ味は2個目に食べるべきだった。

誰かが言った。
「地球はまるい」
別の誰かが言った。
「地球はまるくない」
どっちでも構わないと思った。
まるかろうと、そうでなかろうと、どちらでもいい。
いつの間にか、ビーチには誰もいなくなっていた。来た時よりも波の音が大きく聞こえる。木陰もずいぶんと移動している。
ビーチに来て初めて空を見上げた。
本日は晴天なり。

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