学生フォーミュラ VS. 自動車部


 この記事は学生フォーミュラの現役学生、OB、審査委員などの関係者によって12月9日から25日まで一日一記事づつリレーしていくアドベントカレンダーです。

アドベントカレンダーはこちらからどぞ。

 前回の記事はうしさんさんの『田舎・無名・弱小 学Fチーム 広報戦略』でした(”うしさん”が名前……?)。

本日は第4打者、関西の某大学のチーム()に在籍していたWDです。わでぃーと読みます。初めましてのひとは初めまして。こんにちはのひとはこんにちは。


時は令和元年、師走

字数無制限時代到来

ここパクリです。非常に本文長いです。うしさんより長い。


 私の学生フォーミュラチームの在籍は2016年から2018年、自動車部には2016年の春から9月まで在籍し、それから一度退部して2018年の9月頃に復部しました。現在はオフシーズンを迎え引継ぎの最中といったところです。自動車部では主務の役職を受け、主将の補佐と部活の運営に携わりました。


 さて、自分にしか書けないであろう内容は何があるだろうかと考えた時、真っ先に浮かんだのが学生フォーミュラと自動車部の対比でした。


 本文は高校生・大学1年生を対象にした感じの記事です。多分。

 学生フォーミュラと自動車部の両方において、一人のメンバーとしての所感をまとめました。 

・学生フォーミュラはクルマの活動なのか?
・自動車部における速さ・正しさとは?


 その2点が話の軸です。


まぁ、お茶菓子でもつまみながら話を聞いてくださいな。

(2019/12/13訂正 ご指摘くださったフェンリル氏に感謝申し上げるとともに、誤った記載についてお詫び申し上げます。)

1.学生フォーミュラと自動車部の活動の違い

まずは自動車部と学生フォーミュラって違うんです?っていうのを常々聞かれますのでまとめておきたいと思います。


 あ、あくまでもここに記すのは弊大学の話であって、とりわけ自動車部の活動はだいぶ異なることがあります。対する学Fの場合は日本で開催される大会はただ一つですからね。その代わり、その大会に至る過程が多岐にわたります。海外大会参戦とかもありますし……(だれか記事書いてくれないかな?)。まず初めに簡潔に違いをまとめましょう。

学F:一年で一つの大会を目指す。車体を一から設計・製作し、オープンコックピット(F1みたいな見た目)の競技車両を製作。競うのはものづくり力であり、製作行程を評価する静的審査と車両運動性能を競う動的審査に大分される。
自動車部:”主に”市販車両を競技用に改造・整備し、部の車両を用いてクローズドのコースのタイムを競う。個人のタイムとチーム全員のタイムの合算した団体のタイムそれぞれで順位が決定する。よく部員個人でジムカーナ・ダートトライアルといったスピード競技の大会に参戦する。

 自動車部と学生フォーミュラって何ですか?というと大体こう答えるのが一般的なのではないでしょうか。


2.学生フォーミュラと自動車部の分岐


 先に謝っておきます。
 残念ながら私はどちらにおいてもドライバーとして参加していないのです……すまない……。
 ですから、もしかするとドライバー経験者はまた違うように感じるところがあるかもわかりません。(特に大会における感動の差はありそうです)

 実際には、いずれも普通免許証があれば誰しもが選手になるチャンスがあります。画面の前にいるかも知れない高校生、そう、君。免許は早く取るんだ、MTで。いいね?どちらの車両も主にMTです。

ATも時たま出会いますがね。
※※CVTのチームとかEVのチームの皆様申し訳ない※※


 余談ですが、私もどちらにおいてもドライバーになる可能性はありました。自動車部の競技には単に技量不足。学生フォーミュラは私のもつパニック障害の気(不注意多すぎ)によってドライバーにはなれませんでした。根に持ってるぞ。
 ……ドライバーの座は自分でもぎ取ってください。

 ……ですから私はドライバー視点でモノを語れません。すまない……。


で、命題。

(クルマを走らせることに主眼を置いた自動車部なので)
クルマを速く走らせたいならば、自動車部のほうが優位なのか。

(クルマを作ること評価することに主眼を置いた学生フォーミュラなので)
学生フォーミュラでは、クルマについての知識を蓄えられるのか。


 もっと言ってしまうと乗り回すだけなら自動車部にすら入る必要はないです。大会参戦という意味では、JAF(日本自動車連盟)等主催の競技には個人で出場できますし、もっとシンプルな話、自動車部に入らずともイケイケな車は買えますし乗れます。それは、そう。


 そもそも、車を所有できるかどうかなんて言うのは正直親に依存するところが大きいのです。免許費用、車両購入費、保険料、維持費…etcとてもじゃないが、大学生がすべて自腹なんていうのはほとんど不可能です。扶養外れる130万円ギリギリまでアルバイトで稼いだとしても余裕はない。

 これは組織に所属するかどうかに関わりません。



 一方、組織に所属すると大抵自分のこと以外をやらなくてはならない。部費も発生します。

 リアルな話をすると自動車部が四年間平均およそ月5000円/人、自分の整備費に上乗せです。フォーミュラの方は年に6万円/人とかだったんで月で見ると5000円/人とかだったのでなんだかんだ基本料金は大体同じでしたね。意外。


自分の車を持って何かをしようとすると負担はだいぶ重くなります。

それでも、最終的に自分がクルマを理解する(運転する、整備することを指し、知識面ではなく)には車を所有することが不可避なように思います。

なぜならその経験は”自分”のものである必要があるからです。


3.クルマを知る(識る)ということ


 車を理解するにはバラしてみなければわからんのです。バラしてからが0です。1ですらない。

ただし、道路運送車両法第47条に「自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない。」とあり、裏を返すと、一般個人は公道を走る”自身の”自動車を分解整備してもよく、保安基準(≒車検対応の範囲)を満たすことが目的でなくてはなりません。いわゆる”不正改造”に引っかからなければよいわけで(2019/12/13訂正)。まぁみ〇カラとかカーチュ〇ンとか見たら大丈夫なんか?っていうのは結構あるんですけど……これ以上はいけない。何かが自分に向かって飛んで来そう。

ゆえに

私有地内だけで走らすならどんなクルマでもええんやで。(ほんとぉ?)

ということになります。


 じゃあ合法的にクルマについて知るには……?大学生ならではの選択肢に学Fと自動車部が挙げられます。

 これを除くとカートをやったり、自動車を整備できるショップのチューンドカーで大会に出たりしますね。稀に実際にカートドライバーとかレース出てる人とかに会うんですけど……。カートレース出場者とレーサーが。ええレースドライバーが。ええ本当に……。ええ…(困惑)


 ……自車をよくするには、今車両がどのような状態であるかをフィードバックする能力と、どのようにセッティングすればよいかという知識の両輪が必要です。前者は実車に乗らなきゃわかりません。後者は知を尋ねなければわかりません。

 自分のクルマを良くしたいなら両方やるしかなくね?

と私は思ったわけですね。……無理でした。

そこで私は中途、学生フォーミュラに身を委ね、自動車部に復部する選択をすることになったのです。


4.学生フォーミュラで何ができなかったか

あえて見出しをこう書きます。


自動車の支配運動方程式は私にとって最も関心高いことでした。そのクルマはなぜその諸元なのか、エンジニアを志す者として懐疑せずにはいられません。実際の車両だけでなく、シミュレーターやレースゲームにもかかわるこの物理方程式を勉強することが楽しくて仕方なかったです。

 計測データやら計算式をこねくり回して、大学に泊まって、夜な夜な機械を回してやっとのこと作り上げたクルマは

「乗りにくい」

サスペンション担当としては烙印を押されたも同然です。納期さんざん延長しておいてそれはどういうつもりなのか。


 おまけに設計やら製作してた当時は忙しすぎて楽しさも消え失せ、自分の目的を見失っていましたから、自動車作っているというよりただ部品を作っているだけでした。その上、その車両は自分ではない誰かの手によって操作されるものだったので感動は薄かった記憶すらあります。

 ドライバーの意見やデータから原因を突き止める、それは何とも工学的ですが(私が理工系に進学した意義通り)、自動車が好きで入ったはずなのに自動車に直結する自分の感性による手応えがなかったのは非常にまずかったのだと思います。


5.自動車部で何ができなかったか


 車を整備する時、一人って割としんどいです。精神的にもそうですけど、物理的に。あと道具をそろえることとか整備場所なんかを考えると一人で用意するのはとてもじゃないが難しいのではないでしょうか。お父さんが熱心ならご家庭でもできるようです。そのためのアス〇ロ(ダイマ)。


 自動車部は身近で自分の車を整備する環境がない人や車好きのコミュニティーに属していない人が車コミュニティーに属する第一歩の有力候補というのがまずアピールポイントとして思い浮かびます。


 ところが、この数年間私は、両方において車両整備をやってきましたが、自動車部には学生フォーミュラでやるのにこちらではやらない整備の甘さが散見されました。

 そうでなくとも、修理しなければならないことがある。ネットで調べると○○と書いてある。模倣してみた。直った、直ってない。正しい方法を教えてもらう。実践する。
 ……これは本当に正しいのか?なぜ正しいといえるのか。

さらに話を広げると、
なぜS〇Vは効果があるのか?アルミテープチューンは効くのか?なんていうところまで来る。ばね下は軽いほうがいいとかスタビライザーの硬さとか。調べれば何かしら出てきます。ですが根拠が怪しい。


 自動車部での考え方はよくも悪くも定性的だったので車両運動方程式なんか知る必要もないです。誰かの感想と比較のしようがないタイムが全てです。

 それ故、いいのか悪いのかよくわからぬまま最後の大会を終えました。あらかじめ備えていた知識の反例があると猶更わからなくなりました。そもそも実車のセッティング自由度が少ないうえに検証すらままならない。


6.個人が集まる組織として

 悲観主義なので散々なことばかり書きすぎてしまいました。
 クルマの知識に関する実利の話はここまでにいたしましょう。


 双方とも活動上、結果が全てですが、個人という単位でみると、結果だけが全てではないはずです。大学4年間でぶち当たったのはむしろ個々の感性の壁だったように思います。


 私が所属していた学生フォーミュラチームは当時莫大な負債を抱えての新体制を迎えることとなりました。直近のOBともうまくゆかず、金銭的余裕がないのに車1台作るのは可能なのかという課題もある中、何よりも一番はまともな労働力が少ないがために多くの無駄を費やしました。

 それだけなら、まぁよくある事象ですが、書類手続きで失格を受けました。弊チーム空前絶後の出来事でした。こうなると何にも面白くない。

 各方面の謝罪であったり、部内での対立などで雰囲気が悪くなることはしばらく続きましたが、一番の救いはフォーミュラのメンバーの人柄でしょう。

 私の代の場合、対立したのは意見や手法であって人格ではありませんでした。問題が解決すれば仲は元通りですし、お互いの意見は気に入らずとも耳には入れていました。

 フォーミュラの場合、フォーミュラ以外でも時間をともにすることが多くなりがちですが、思えばそれは、フォーミュラという活動を通じて育った信頼関係があらゆる事物を楽しい風景に変えていたから。深夜のラーメンと銭湯なんか最たる例です。


 自動車部においては、再入部という形を取ったのが一番まずかったと言えばそうなるのですが、その過程でフォーミュラで得た知識を利用する場面にあったのは非常に喜ばしいことでした。

 この点については自動車部にもたらした利益といえるでしょう。

 ですが、総じてみると、競技中に車両が壊れた、あの時の原因は自身の整備の見落とし、他人への不徹底だったため選手には取り返しのつかない過ちを犯しました。なんのためのフォーミュラの期間だったのか。

 それでも選手から感謝の言葉があったり、礼節について事欠かないあたり、さすが体育会系なのだなと。

 週に一回の部活なので、部員同士が接する時間で言えばこちらのほうが断然短い。それ故、信頼関係のばらつきが大きいのは間違いないと思います。

 しかしながら、皆がそろって何かをする必要はありませんが、自動車という一人で何かをするにしては負荷が大きすぎる活動故に、手伝い、手伝われたのち、感謝が人と人を結んでいる。


 組織に所属するか否かで大きく違うのはこの感謝の点ではないでしょうか。


(余談ですが、自動車部も頻繁にラーメンに行きますね。引くくらいには)


7.総論

学生フォーミュラも自動車部の両者とも4年間やりきることで何かを得ます。

4年間継続しなかった私は、自動車部で車を意のままに操れる楽しさも味わえず、学生フォーミュラでも自分は何かを成しえたわけではない、そういう手応えのなさだけが残りました。

「自動車部もフォーミュラも結果としては”いい”思い出がないなぁ」

 正直な感想がこれです。その背後には、ただただ未練が積もり積もっている。

 車を良くする裏付けが欲しい、車を評価できる感性が欲しい。最後、それを自分のクルマに生かしたい。

 貪欲さゆえにどちらも未達成なのです。どちらか片方をやりきっていれば4年間で得られたであろう終着点を見いだせない。

だけれども、応用の表面だけ見ても仕方なし、基礎だけでは形になったとはいいがたい。

クルマとはそういうものなのだと思います。

 学生フォーミュラの上位チームでは設計班からレースチームへの移り変わりがなめらかだと聞きます。私が所属した代ではそれを成しえていなかったのでしょう。



 その一方で大学生活の一部として、都度の衝突が決して決別でなく個人の感性に基づく試行錯誤だったという点においてはどちらも青春したことには変わりないですね。



双方がよりよい活動になるとともに、何よりも”あなた自身”にとって有意義な時間となりますように。

ここで筆を止めさせていただきます。

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