赤字戦線、異常あり

概要

チーム崩壊の原因が人員に起因するものでなかった場合、そのおよそはお金の問題であろう。学生フォーミュラで上位を占めていた弊チームは、突如失格し、再起不能まで追い込まれた。再始動までの1年で要したのは資金問題の解決と運営状況の見直しであった。そこで、チーム運営に最低限必要な資金の算出とともに実際の活動状況について述べて資金運用について考える。

前書き

この記事は学生フォーミュラの現役学生、OB、審査委員などの関係者によって12月1日から25日まで一日一記事づつリレーしていくアドベントカレンダーです。2年目の企画になります。

どーも。某大学院生在籍、WDです。学部時代は学Fでサスペンション設計と”会計”を担当していました。

アドベントカレンダー2020はこちらからどーぞ。

前回の記事はりくるーと_タケシさんの『やっぱりわからない計測のはなし』でした。

計測しないと、「それ君の妄想だよね?」って言われることがあります。僕は近しいことをとある人に言われました。実測と設計式の照合を取れて計算が役に立つので、ぜひ読んで頂きたい記事となっておりますので、アドベントカレンダーにお立ち寄りください!

さて、忌々しきウイルスのせいで今年のコンテンツは学Fに限る必要はないのですが、2019年のカレンダーで挙がってなかった話のうちにお金の話があると思い、コンプラの崖ギリギリを攻めます(怒られそう)。

というのも、誇る話ではないのですが、他のどのチームにもましてうちのチームは非常にネガティブな場面で資金難にぶち当たりました。概要をちょいと書きますと、

先輩の代でもめ事があり、OBとの連携が錯綜。昨年度の赤字がやべぇ。昨年度の高額請求書が来た。なんか返金しなさいって大学から連絡来た。人が居ねぇ(蒸発とか、仲違いとか)そして大会失格したわ。

(これは失格した年の大会前の写真 ドライバー:sgc)

大会失格については、弊チームの当時のリーダーが2019年adventにて程よい感じで語ってくれています

んで、どうしてこんなお金の話をしようと思ったかというと、他チームへの警鐘です。他チームに限らずサークル全般ですけど。

てめぇら、自分のケツぐらい自分で拭けや。

言いたいのはぶっちゃけこれだけです。

前提:お金が無くなるその時

学Fを例に取ると非常にわかりやすいのですが、チーム運営は「ヒト」「モノ」「カネ」の3要素で成り立っています(経営の3要素と同じ)。モノには技術も含まれていると考えてよいでしょう。三すくみのうち、1つが多少崩れようとも、他の2要素が補ってくれるのですが、先ほども述べた通り、

お金も無ェ 知識も無ェ 絆もそれほど残って無ェ データも(うまく見れ)無ェ 技術も無ェ そこにあるのは負債だけ 俺らこんな(フォー)村いやだ 俺らこんな(フォー)村いやだ

……同時に多方面から崩壊するようなことがあると、一気に瓦解します。それか窮地に立たされます。その時自力での復活がほとんど不可能なことと思います。

じゃあ、てこ入れはどうするのか。

多少の歴史があるサークルだったので、OBからの支援が有効かとも見えましたが、そんな単純な話ではありませんでした。タダでお金は出してくれないんですよね、当然っちゃあ当然ですけど、それに見合う何かを用意する力が組織にあれば、そもそもこんなことにはなってないのでは?とね、思ってしまう訳です。

そもそも失格を受ける前後に起きた出来事は、OBとの信頼も揺らぐものだったので、本気で相談したかと問われるとそうではないのですが。

結局、自らの持つ資産についてまず検討することから進めることになります。

命題:予算運営って何それ美味しいの?

チームでは当時しばらく会計報告というものをしていなかったので、過去数年の会計資料とにらめっこし、以前の収支と比較した結果がこちら。単位ないし大丈夫やろ。

※2018年末に作成

総収入と総支出は一般的な収入/支出の集計結果です。純収入/純支出とあるのは繰越金(オブラート)の影響を考慮したものです。(2015年以前は繰越金の処理不明)

予め断っておきますが、2014-16年が異様にお金使っているのを批判したいのではありません。それに対して文句はないです。確かにお金はかけていますけど。スポンサーで苦労したと苦労したとも聞いていますし……強いて挙げるなら、予算を決めて活動や、繰越金が具体的にいくらなのかを精査せずに次代へ引き継いだことが問題だと指摘します。それでも上手くやれて来たのでしょうけれど、僕らはそうではなかった。
さて、その支出の遷移ですが、

分かりやすく車両製作費が変動していますね。

このころは確かに好成績でしたし、お金を掛ければよいクルマが作れる証左の一つとも取れます。あと、計測機器たっかい。

しかしまぁそんなことやってる余裕は2017年にはなかったと。

一方、それ以外の項目ではほとんど変わりありません。失格年だけは試走会への参加をほとんど取りやめたので、過去最低資金で運営していました。

もともと、失格を誘引しても当然なくらい進捗が悪く、製作にお金をまだ投入していなかった、という事実もありますが。それから、部員不足でろくに走行会に行けないというのもありました。

ようは、2017年は、目の前には借金ばかりでそもそもお金の用意もままならない。いいクルマを作ろうという勢いで何とか大会に出ようとしたけど、それも力及ばなかった年。

そういって差し支えないと思っています。

そんな中、とりあえずしなければならないことがありました。

予算の検討です。

①収入

大別すると、a.大学からの支援金、b.個人負担費(部費や有事の際の集金)、そしてc.企業やOB・OG等からのスポンサードです。大学からは一銭たりとももらってないチームもあると聞いています。b.の参考(?)までに、当時の個人負担額は1人当たり約5~7万円/年でした(よそと比較したことはない)。※数値修正:幅もたせました

ちらっと後述しますが、個人負担額を増やすのはほとんど無理です。部員の分だけ増えるように見えても、遠征費で大部分が相殺されます。先ほどの5万のうち、7割方は大会時の宿泊費等に充てていたのです。ほら、大会は学F民のオフk(ry

残る期待先はc.企業やOB・OG等からのスポンサード。

まぁ、確実性は乏しいです。(最近はコロナ不況だし)
そもそも希望的観測マシマシで予算を決めるもんじゃありません。

逆にこの点を盤石にできれば安定した運営ができるともいえるのですが。具体的にどうすればよいかは、残念ながら私は語れません。

それから、各チームのブログ参照してもらえればわかりますが、企業からの支援形態は資材/加工/ソフトウェア/その他(食べ物とか講習会とか)といったモノでのスポンサードもあります。つまり支出を減らす支援ですね。

個人的には、支援形態の柔軟性としては中小の方があるように思います。大きいところだといろいろ大変らしいので……。

あ、収入内訳はコンプラ的に控えます(今更)

②支出

主に車両製作費と遠征費(大会含む)が支出のメインですが、後者は特に工夫もないのでカット。幸い、小規模の試走であれば学内で何とかなりました。

車両製作費については一般の人も気になってそうなので、ざっくりと紹介します。

学Fのマシンは毎年そのフレームを新規に作る必要があります。その他パーツは流用で問題ありませんが、設計が変わり、基本全て作り変えるとします(数年単位で使うと考えられるエンジンとブレーキキャリパー、ディファレンシャル、計測機器除く)。エンジン買うチームもあるって聞きましたけど、差異ありすぎるので除外しときますね。

そうすると支出ざっとこんな感じだろうという当時の試算がこちら。

ということで、

学Fあるある質問ランキング18位(適当)「1台作るのにいくらかかるんですか?」

A.ベースは100万円とかじゃないかな

実際、車両製作にいくらかかったかはナイショです(だってグラフの数字わかっちゃうじゃん)。

この数字は大雑把なものになっていますが、その根拠の計算や、当時の支出は徹底的に管理していました。物品購入時、どうしても一時的な立替を要してしまうのですが、好き勝手買われて領収書持ってこられても困るのです。

代用できるものがあるのなら、まずはそれから使う。買うときはメンバーで相談する。最安値をきちんと探す。少人数だったからこそできたのかもわかりませんが、購入の必要性をメンバーで共有していました。

少なくとも、私がいたチームの現在の資金状況は私が知るものとは全く異なるものになったと聞いているので、この情報を公開したところで問題ないと思っています。(そもそも製作費資産の根拠はネットで拾えますし)

終戦:徳政令(債権放棄)

半〇直樹「東京中〇銀行は債権放棄を断固として拒否します!」

なんて言えたらよかったんですけど。

支出の切り詰めと、大学教授の支援により、ウン十万残っていた赤字も数十万にまで減らすことが出来ましたが、とうとう代替わりを迎えることとなりました。

そこで、大会失格の責任の定量化(これについては別途話す機会があれば……?まぁ語るようなことでもないですが)に基づき、徳政令を出しました。

要は、失格になった年のメンバーで精算したのです。

どうしてかというと、

1つは、赤字精算を誰も進んで解決しようとしないという事実。

そして、現役部員が部費を滞納するので、部費を上げることが無意味。

最後に、後輩を同じ境遇に立たせたくないという考えからでした。

詳細はお話できませんが、そもそも立替分を全て精算することがシステム的に不可能だったという点もあります。詳しくは禁則事項です。

その代わり、私が引退後に所属する自動車部関連で相殺するなどしていました。

オチもないような話えですが、結局、誰か(不特定数人)の犠牲のもと赤字を解消?した、というお話でした。

考察:コストカットはよいことか

経済然り、お金は使うもんです。いいもの作るにはそれなりにお金がかかります(当然)。

とあるファストフードチェーン店もコストカットで一時的に業績向上となりましたが、ジリ貧。社長が変わってから、方針転換。赤字であったものの、会社の貯金を崩す期間の内に打開策を打ち出すことでV字回復したとか。

その打開策とは賃上げだったそうです。

だから、運営費をひたすら削減するのはきっと悪手なのでしょう。無駄の削減が悪いとは言ってません。使う先をよく考えろ、という話です。

フォーミュラの活動において言えば、常にコストカットばかりを第一優先に考えるような運営状況だと、チームの経済状況はある程度良くなったとしても、メンバーの気が滅入るのです。

一方で、収入を増やしたいところですが、先ほど述べた通りでそう易くありません。安直には部員からより多くのお金を回収することがおもいつきますが……それをしたところでしょーもないというのは先に述べました。

少し話がそれますが、サークル活動ですから給料という概念は存在しませんし、部費がクソ高いというのは誰にとっても厳しいというのは自明ですね。

高校の部活を思いだしてみてください。ただキツいだけの部活を3年間やり続けられるでしょうか。何かしらの利益/サービスを受けるためにお金を払うのですから、少なくともこの活動にメリットがある必要があるとは思いませんか(100%娯楽としてやっている人もいるでしょうが……)?

例えばどんなものがあるかは、2019年adventのYSNさんの記事「学生フォーミュラを愉しむ」が参考になるでしょう。

閑話休題。部費で確保できる収入には限度があるようです。従ってそれ以外の収入源を増やす必要があります。広報戦略についても2019年度のadventでいくつか記事がありましたね。

クラウドファンディングを利用しようという案もありましたが、頓挫したというのは別のお話。(成功したどなたか頼みます)

結論:人材育成/熱意

学生フォーミュラには非常に多くの企業、人が関わっています。他のスポーツのように大会運営そのものは資金を生み出すシステムを備えていません。人材育成の側面が非常に強い活動です。各チーム、企業から何かしらの支援を受けているかと思いますが、その多くは私たち学生がよりよい人材となることに期待した投資です。(と、言ってくださるスポンサー様がいらっしゃった)この背景を否定してしまうと、運営方法は全く以て別のものになるでしょう。

ですから、他の組織・人と関わることについて責任が伴うことを意識してほしいな、と思います。それがせめてものこの活動の自己弁護になります。(社会人になったらこの視点は変わりそうですね。。。)

その上で、健全な活動ができる状態を維持せねばなりません。ましてや、過去の負の遺産で、活動縮小とか目も当てられません。

どのような活動にしても熱意がその根底にあるはずです。そうでなければ組織は続きません。

その熱意を削がないこと、熱意を応援することがOBである自分にできることだと思っています。後輩よ、使えるもの(=頼れる先輩とかもろもろ)を頼るんじゃ……

17年チームは、翌年に借金を引き継ぐという方法もありましたし、元来通り?PP(パワープレイ)でやりくりするということもできたでしょう。そうしなかったのは、「誠実に対応する」「自らのキャパを超えるような無理はしない」という方針を軸に据えたからです。その方ができることは限られてしまうけれど、活動を楽しめるのではないかと。

ところどころ話を伏せていたので、伝わりにくいところもあったかと思いますが、コスト審査では当然現れない、カネの実際について述べてみました。

後輩には、同じ轍にはまらないようにしてもらいたいものです。

あ、そうそう他大学の会計情報、お待ちしております。超聞きたい()
学内関係者であれこれやるのが筋ではありますが、現状の比較で他所と比較することは決して無駄ではないかと。話題としてはオープンにはできませんが、機密保持が約束されるなら他所を尋ねるのはアリでしょう。

さて、バトンは... (更新待ちだお)

おわり

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