アイディアは制限の中から花開く

今は優秀なプラグインが山程あるので、チップチューンもDAWで制作する人が多いと思いますが、僕は制限の多いFamitrackerで制作しています。Famitrackerはその名の通り、ファミコンの実機で鳴らせる範囲のモノしか作れません。
そんなFamitrackerを使うのは、ファミコンのサウンドが好きだから…という理由もありますが、1番は「あえて環境を制限することで新鮮なアイディアを生む」ためです。

例えば真っ白な紙を1枚渡されて、「何でも好きに書いて良いよ」と言われたら、あなたは何を書きますか? 絵が得意な人は絵を書くでしょうし、字が得意な人は字を、小説が好きな人は物語を書くかもしれませんね。
人は自由を与えられると「自分の得意な型に当てはめようとする」ことが多いと思います。得意なわけですから、クオリティーの高いモノは作れるでしょう。しかしこの方法では、新しいモノや珍しいモノを作ることは難しいと考えます。
クリエイターならば新しいモノを作りたい!という欲求は、誰しも持っているものです。

そこで僕は制作をする際、あえて制限を設けることにしています。
ファミコンは矩形波2チャンネル、三角波1、ノイズ1、サンプリングチャンネルのDPCMを入れて5チャンネルしかありません。1つのチャンネルの同時発音数は1なので、最大4和音+ノイズということになります。
ファミコンてたまに背の高いソフトがありましたよね? あれはソフト側に拡張メモリや音源を搭載していたためなのですが、Famitrackerはこの拡張音源のシミュレートが可能なので、もう2〜3チャンネル足すことができます。それでも最大8チャンネルですから、和音を作るだけでも大変…。

ここまで制限されていると、良いアイディアが浮かんでも再現できないことが多く、自分の得意な型に当てはめることも難しい。となれば、とにかくいっぱい考えて、さらにアイディアを練り直し、トライ&エラーを繰り返して解決していく…こうすることで新しいモノが生まれていきます。

あえて環境を制限し、常に試行錯誤すること。制限の中で戦うからこそアイディアは花開くのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?