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百日紅

7月の終わりに韓国料理店の店先で出会ってから、百日紅の紅に恋している。百日紅――サルスベリ、って読める人は少ないだろう。わたしもその一人だった。

最初、何て花か分からなくて適当に検索して、ブーゲンビリアかと思っていた。でも、私が恋に落ちてるやつはちりめん状の花をつけていて、ブーゲンビリアのそれはもっと直線的な、ポインセチアに近いものであることを、「ブーゲンビリア」「サルスベリ」「違い」のAND検索で、グーグル先生に教わった。

                こっちがブーゲンビリア@PhotoACより

ブーゲンビリア

百日紅の漢字を知ったのも、その時だった。夏の終わりから秋のはじめにかけて、長い間紅い花を咲かせるから、百日紅。そう、7月から9月の今までずっと、市井の軒先で、公共施設やらのシンボルツリーとして、時に街路樹として、その紅を湛えている。いつまで咲き続けるんだろう、不思議に思い始めていた位だったから、この名前には心から、うんそうだよね!名は体!!と思った。

* *

名前も知らずに一途に思い続けて約二カ月、ずっと人違いをしていたけれど、とうとう彼女の名前とその由来まで、知ることになった。何てロマンチック。

百日紅か、いや、人違いをしていたブーゲンビリアでもいい。紅い花の咲き乱れる愛する家に、心躍らせながら帰る。そんな白昼夢を見ながら、今日も横目で街中の百日紅を愛でる。

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名前で識別できることは、愛を深める。「名前って何?」と訊いたジュリエットも、そのインド版のリーラも、ロミオとラームの名前をそれぞれ知り得たことは、生涯の宝だったことだろう。

小さな興味の半径で、今日も知れること・愛でられることを、少しだけ。
それぐらいのわずかなドラマティックで、毎日は成り立ってるのかもしれない。

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©Bhansali Productions
インド版ロミオとジュリエット「Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela」より。
そういえば、極彩色な感じが、百日紅と似てるな…:)

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