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[散文]創作の虜/きりとちりと、感性のはな

創作の虜

「寝ても覚めてもきみが離れない」
「虜になってたい」
君に心踊る 惹きつけられて、止まない

だいすき だいすきだよ
ことばは己の限界を知る
胸の、てっぺんのペンダントトップの揺れる場所
紅い菊の花びらのように開き
放射状に、わたしを、包む

わたしが死んだらあなたは泣くだろう
わたしが死んだらあなたは船出を祝うだろう

霧のごと 消してしまいたい
詩篇と、メロディのあいだに横たわる
具象化への戸惑い


きりとちりと、感性のはな

ミッション系の高校のチャペル
結婚式は皮肉なほど盛大に
となりに鎮座するくじらようかんの店
醍醐の味は蜃気楼のように行方をけむにまく

お狐様の食卓事情
こん こん 季節の変わり目は
喘息が、出るんだ
胸元に積もった塵を除けるように
咳は声のかぎりに己の存在を証明する

気づいて、気づいて
わたしの気もちたち
気づいて 気づいて
からだのささやき

気づいて 気づいて
そしてあなたの眼差しでこそ
じっと見つめて 射抜いて
振動は そんざいを ゆりおこし
「わたし」のなかの をとこ と をんな を和する

感性はあなたのむねのなかで花ひらく
ときのはなにこそ 塩梅のよき いれものを
シェルターは彼女を安心させ
花は 安心のうちにねむり
根を伸ばす そろり そろりと 神聖に

白夜にこそ愛でん その眠りの横顔を
白夜にこそ撫でん その御社の稜線を

虜のぼくは今夜 君に求婚する
虜のぼくは今夜 君に求婚する


令和三年十月十六日
智未

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