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喜びの強要


その日、家に帰ると父と祖母が何やら嬉しそうに話をしていた。
私に気付くと父は言った。
「喜べ!お前に妹か弟が出来るぞ」
小6の夏だった。
もう少し気のきいた言い方は無かったものか。
一緒に暮らしているわけでも無く、他人の様な父と、全くの他人であるおねぇさんとの間に子供が出来て喜べ?
正直、全然喜べなかった。
どうやったら赤ちゃんが出来るのかを知ったばかりのその頃…
【すけべジジイ!】としか思えなかった。
【そんな子いらない!流産しちゃえばいいんだ!】と…
そんな自分を恥ながらも、それが本音だった。
親が離婚するまでは姉弟が欲しくてたまらなかった。
離婚後だって今までの苦況を姉弟がいたら1人で背負わずにすんだと思うし、とにかく淋しかった。
だから1人じゃなく2人だったら…
と何度も考えた。
しかし、それと今回の件は全く別である。
喜ぶどころか、むしろ苦痛である。
そして、今回も私以外はみんな大喜びで、おめでたいムードに包まれていた…

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