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「9人のプロ写真家によるラージフォーマットの世界」

午後から、丸の内の FUJIFILM Imaging Plaza Gallery へ。
早とちりをして六本木の フジフイルム スクエア に行こうとしていたが、すんでのところで気が付いた。

丸の内だが日比谷通りに面した濠端。 入居している丸の内 MY PLAZAの最寄りは千代田線の二重橋前になるが、東京駅からでも歩いて行ける距離。

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六本木と比べると小体だが、ギャラリー部分を一区画囲って暗くし、スポットの灯りで照らして見せるので、写真に集中して見られる空間にはなっている。

ステートメント。

9人のプロ写真家によるGFXラージフォーマットの世界。様々な方面のプロの写真家によるGFXの機能を最大限に利用しての表現。昨今デジタルカメラの進化は使い手を選ばずいろいろなフォーマットでの撮影が可能になっています。主流はいわゆる35mmフルサイズといわれているフォーマットで各メーカーからカメラが出ています。しかしながらフィルム時代をよく知っている写真家はフォーマットの大きさによる表現の違いを熟知していて仕事の内容により使い分けをしていました。フィルムでいえばちょうど35mmとブローニーの中間にある「ラージフォーマット」。今回この世界をプロ写真家達がそれぞれのクリエイティビティを大きく発揮させ、その卓越した技術・感性でダイナミックに撮った写真作品を展示します。

ラージフォーマットの受光素子。 43.8×32.9mmとなっており、フルサイズがフィルムで言うところのライカ判(24×36 mm)にあたるとすると、ベスト半裁判(30×40mm)に近い。
ペンタックスの645デジタルが43.8×32.8mmなので、ほぼ同等。
(セミ判っぽい商品名でベスト半裁判というのも羊頭狗肉感がある)
フェーズワンやハッセルブラッドなどの所謂「ブローニー」の受光素子が53.4×40mmなので、フルサイズとブローニーの中間ではあり、現代のハッセルブラッドも実質フジなので、弟分と言う事になる。

そのラージフォーマットでどんなことが出来るのか、カタログの大きさでは分かり難い所を、9人のプロがそれぞれの専門分野で撮った写真を大伸ばしにして絵解きをした写真展だった。

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営業写真館で撮る肖像写真的なもの、色彩あふれる広告写真的なもの、風景や建物。
かっちり構図を切って撮ったものもあれば、情報量の大きい元画像から切り出したものもある。
元々の情報量が多いので、トリミングしても素人目には分からない。
細部まで解像しているが、細部が煩くない。 この辺りの、撮る機械としての調整は流石フジ。

広告っぽい写真と風景が多く、撮影者のプロフィールからもそれが伺えた。
メーカーとしての想定購買層もそのあたり(と、そういう写真が撮りたいハイアマチュア)なのだと思う。
(来場者の会話も広告関係でありそうな物が)

フジフイルムとして、このカメラの長所・利点である部分を視覚的に伝えるのが目的なので、全てカラー。
私はフジフイルムのリバーサルの、記憶色を極めたような色味が苦手で、それがそのまま出た(そしてそれは広告などで求められる性能ではある)写真が多かったのだけれど、それを程ほどに抑えたもの

長嶋正光の細密肖像画としてのポートレート
善本喜一郎のかっちり切られた構図の風景
いのうえのぞみの印象派の絵画のような水面

この辺りに心惹かれた。

長嶋正光の「中野信子」、40代半ばの女性を撮影して大伸ばしにして、寄って見ると細部まで描かれつつ、暴いたようなところが無い。
レタッチをしたのかしていないのか、おそらくしているのだと思うが、ぱっと見てそれとは分からない。

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善本喜一郎の深大寺周辺、かっちりと隙の無い構図。 間が良すぎると言えば間が良すぎるのだけれど、突き詰めに突き詰めていてシャッポを脱ぐしかない。

いのうえのぞみの水面を撮ったもの2点。
スクエアフォーマットにトリミングしてあって、水面を上にしてプリント。
逆さにしてあるので岸辺が下に来るのだけれど、入れ込み方が絶妙。
何をどう撮ったのか、絵解きのヒントとして上手く残してある。
引きで見るとざっくりと掬い取った印象派の絵のようでありつつ、寄って見ると細部まで描き込まれた細密画に変わる。
引いた時には見えなかった波紋や、色のかたまりに見えた葉の一枚々々が見えてくる。

私には過剰品質であり、それを使って何を撮ろうと言う種類の興味は湧かなかったのだけれど、カメラとしてレンズとしての出来の良さは伝わる写真展だった。

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(2022.05.22 記)

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