Prendre大撮影会#004
「リュミエール(光線)が良いから撮影に行こう。」
パリに逗留中の木村伊兵衛の部屋を訪れ、撮影に誘ったカルティエ=ブレッソンの言葉であるが、プランドル撮影会に行けば「良いリュミエール」がある。
私が参加した4部は、陽が落ちてからの時間帯と言う事もあり、暗さを生かしたセッティング。
(まぁ、そこはそれ、「暗い」と言ってもAFでピントが合わせられる程度には手加減されている。)
私は光を強く当てて撮る事を好まないので、この趣向は実に有り難かった。
照明が凝った組み立てになっているところには、どこからともなく現れた福島裕二が具体例を挙げつつ怒涛の絵解きをして、風のように去って行く。
福島は考える切っ掛けやヒントを残し、参加者それぞれが考えたり考えなかったりする。
分からないことがあった場合、福島をはじめとしたスタッフに訊けば大抵の事は教えてくれるし、自分で解決したければ放っておいてもくれる。
ウェットで内向きなコミュニティになっていないのが良い。
良い意味で自由。
「大撮影会」と銘打つだけあって、参加モデルも多く、撮影する場所も借り切ったスタジオに10か所設えてあり、その10か所同時進行で撮影は進む。
二兎も三兎も追うと、果として何も残らない事態も想定されたので、スタジオセイラーの方に集中する事に。
直接であったり、間接であったり、スポットであったり、状況によってさまざまな照明が組まれ、巡回しているスタッフが(時に「撮る側にも回れるモデル」が)微調整。
フィルムで撮っていた頃だと、明るさに合わせて何を詰めるか頭を抱えるところだが、デジタルならどうにでもなる。
カラーだと面白そうだけれど、モノクロだと意味が無いかな?
と思いつつ撮ってみると、色が整理されて翳の面白さが出たりとか、試行錯誤の繰り返しもまた楽しい。
私は間合いが分からないので使えそうなレンズを根こそぎ持って行ったが、撮ってみた結論としては、だいたい50mmから135mmの間で何とかなる。
囲みが暑い場合はもっと長いものが欲しくなるが、300mmは些か長かった。
200mmで十分。
囲みが薄かったり、ゆとりがある場合は50mmと28mmも使ってみた。
(※フルサイズで)
私のようなレンズ道楽に行きどまり迄行ってしまった亡者のような「妙なこだわり」が無いなら、カバーする焦点距離長めのズームレンズ1本でも、撮りたい写真は撮れる。
何故なら、光がきちんと組まれているから。
構図さえ切れれば一定の質の写真にはなる。
そこから、上手くなりたい人は自分の写真と、同じ条件で撮った別の人の写真を見比べて考えれば良いし、自分なりに楽しめれば良い人は、見て回って楽しめば良い。写真を撮る事、撮った写真を見る事が好きになれる撮影会だと思う。
スタッフが常に動いていて、貼り付きになっていないのが良い。
撮る側は自由に動けるので囲みの厚みも時々刻々変わるし、モデルの立ち位置がずれれば照明も調整する必要が出てくる。
それと、その方向から何時スタッフが現れるか分からない状況は、不心得者の出来心の抑止力にも成り得る。
一定の緊張感はありつつ、楽しく撮れる。
撮る側の幸せは、撮られる側の幸せでもある。
不本意な写真が出回る前に、そもそも「不本意な写真」が出来上がらないお膳立てがなされている。
以下、余談。
交通機関
スタジオキャナルの最寄りは京葉線の潮見駅であるが、京葉線に乗る迄が一と手間であり、駅周辺に時間を潰せるようなところが無いのが難と言えば難。
錦糸町駅南口ロータリーの1番乗り場から出ている錦13系統のバスだと、割と本数もあり私はこれを利用した。
所用時間は40分くらい。 バス停からスタジオまでは徒歩で5分ほど。
但し、こちらも潮見一丁目のバス停からスタジオまでのあいだに時間を潰せるようなところは無い。
モデルの休憩時間をしっかり取っているので、各部のインターバルも長く、40分前から受付を始めてくれるので、時間にゆとりをもって移動し、早めに入っておくのが良さそうだ。
どんな焦点距離のレンズを使ったか
間合いが分からないので、使えそうなものはとりあへず銀箱に詰めて家を出た。
(銀箱を使ってるのは私だけだった。)
持って行ったレンズは
シグマ28mm/f1.8
Aiニッコール 50mm/f1.4
ヨンヌオ 100mm/f2
シグマXQ 135mm/f1.8(※70年代の方)
ルーセル・パリ 135mm/f4.5
ノフレクサー 240mm/f4.5
ニッコール ED 300mm/f4.5
フジノン-E 135mm/f5.6(使わず)
Aiニッコール 200mm/f4(使わず)
70-300mm/f5.6(使わず)
とっかえひっかえ試してみたが、結局フルサイズの方には100mm/f2を、APS-Cの方にはルーセル・パリ 135mm/f4.5(※換算で約200mm)付ける事に。
最後の方で囲みが薄くなったところに50mmや28mmを投入。
次回はもう少し整理して臨もうと思う。
私のやっているような「異常者の道楽」は真似をしない方が良い。
私はほとんどモノクロなので古いレンズでも問題ないと言うか、寧ろそちらの方が良かったりもするのだけれど、カラーで撮るならレンズは新しい方が良い。
(逆に言うと、70年前のレンズでも、モノクロで撮るなら実用に成り得る)
構図に入ってくるものをぼかして誤魔化したりする必要も無いので、明るくないズームレンズでも十分事足りる。
余談の余談になるが、レタッチソフトによる、所謂「現像」も、やらなければ写真にならないと言う事は無い。
まずは撮ってみて、何か足りなければそれから考えれば良い。
(2022.04.11 記)
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