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notall音井結衣・新田清乃卒業公演

初期メンバーが去って以降のnotallを支えて来た音井結衣と、昨年加入した新田清乃の卒業公演。
音井がドクター、新田がマスターと言った感じか。

17:00 開場
18:00 開演
20:00 終演

約3時間。 文字通りのの長丁場だったが、飽きさせず、今の物語に区切りを付けつつ、新章への期待を持たせて終わる。
良いライブだった。

17:00に開場して、先ず前方席から入場。
前方席の入場が終わると一般席、当日券。

約1週間のFC先行販売の後で一般販売になるので、ファンクラブに入っていないと良い席は取れない。
このシステムの功罪を感じたライブでもあった。

神田スクエアホール は広くて天井が高く、音も良い。
開場を屋内で待てるので、季節問わず快適に過ごせる。

難点としてはステージがさほど高くなく、床が平らな事。
そして照明が暗い事。
割った話が、前方席の前の方以外見辛い。

一般席でも見たい/撮りたい人は広い視野と近さを求めて開場時間に入る。
盛り上がって楽しみたい人は、或る程度のスペースを使って楽しく過ごすことが目的なので、開演間際に滑り込んで後方に陣取る。。
一般席はどう頑張っても見辛いし、開演まで1時間待つことを考えると、開場時間に入る必然性が無い。

そんなこんなで開場直前になって入場者が増え、入場比率は前方と一般/当日とで半々くらい。

この「開場から開演まで1時間」と言うのも前物販の為の都合であり、特典会に縁の薄いライト層にとっては座る場所も無い長い待ち時間となる。
其処此処で、囲い込みの弊害が目に付く。

ほぼ定時に開演。
オープニング映像から、何時ものオーバーチュアへ。

音井は何らかの形で人前に立つ仕事は続けるようだが、新田は人前に立つ仕事そのものが今日限り。
4年間集大成を見せる音井、喜怒哀楽の全てを開放して「遣り切る」ことに徹する新田。
それぞれのキャリア総仕上げ。

残ってグループを守り支えることにした広山、夏井、美波も「その先」への覚悟を形として示す。

向いている方向は少しずつ違うが、現体制notallの到達点を見せようとする点では一致している。
歯車も噛み合って、良いライブだった。

前日にTwitterで「自分(新田清乃)の何処が好きだったか」についてアンケートを取る暴挙(読んで泣かない訳が無い)に出た為、遠目に見ても泣き腫らしたような顔の新田清乃。

隙を見て泣かせにかかる広山楓を本気でひっぱたきに行ったり、涙を堪えて天を仰いだり、喜怒哀楽の全てが同時に押し寄せて複雑怪奇な表情になったり、たびたび洟をかみに捌けたり忙しい。

新田清乃の良さは、決して器用ではなく、思考も独特で、アイドルに向いているか居ないかで分けると後者なのだけれど、どうにかこうにか折り合いをつけてアイドルとして舞台に立とうとし、立ってきたところにある。

目は泣き腫らし、鼻は赤くなり、化粧は流れ、全ての感情が綯い交ぜになった表情は何とも形容しがたいものに。
喋れば喋るほど支離滅裂になり、時間の経過とともにすすり上げる頻度があがり、仕舞いには話している途中で洟をかみに捌ける。
文字にすると凄惨なのだけれど、剥き出しの新田清乃には「悲痛なる感激」があり、それはそれで美しくあった。


音井結衣は最後まで正体を現さないと言うか、舞台に立つ人としての矜持を示し、100点満点の音井結衣として、笑顔のまま遣り切っていた。

おっとりしていて取り乱す場面をほぼ見ない 美波舞緒が珍しく感情の処理に困り、上を向いて涙を堪えているのが印象に残った。
最終的には取り乱さず、前を向いていた。

夏井るな

夏井るなは、バカバカしいくらいの大きなリボンを付けた高めのポニーテール。
上背もあり、顔のパーツもはっきりした夏井には、大袈裟なくらいのリボンでも、そう感じさせない押し出しがある。


広山楓は「喋る人」として、陰に陽に盛り上げる。
曲のさなか、交錯する新田清乃の耳元で「卒業おめでとう」と囁いて泣かせにかかって憤慨されたり、「諸事情」で度々捌ける新田のMCを繋いだり。
用意して来たネタだけでなく、当意即妙の口から出まかせが、良いところで出て来る。

音井/新田が去っても、notallは続いて行く。
広山、夏井、美波の3人で出演するライブもあり、メンバーオーディションも続いている。
新しい物語の始まりを、少し離れて見守ろうと思う。

以下、楽しくは無い話。

FC先行販売による顧客囲い込みシステムにより、基盤層は厚くなり、一定の売り上げは見込めるけれど、一般客は取り込みにくい。
上積みが望めない。
これが入場者比率にも繋がっている。

チラシ配りなどでのブーストの掛かっていた周年ワンマンと比べるとコアな客「以外」が薄い。
あの時来ていた客を回収しきれていない。

来たら来たで確実に楽しいnotallライブであるが、反面確実に一定の不愉快も甘受する覚悟が必要になる。
これが没入しづらい一番の理由であり、一見さんが裏を返してくれない理由でもあるのではないか。

前方席の入場があらかた終わった頃、整理番号読み上げの声を掻き消すようにワイワイ騒ぎながらやって来る。
アルコールの終盤、椅子を蹴散らし、前方に殺到する。
メンバーのMCに罵倒語を投げつける。
(客の入れるガヤが粗暴で知性の欠片も無く詰まらない。)
このあたりの「狎れ合い層」がファン層の拡がりを阻害しているように私は思う。

送り手が「舐められて」いる。
把握できない規模では今のところない訳であり、そのままにしているのは理解に苦しむ。

或ることをなしたために不正である場合のみならず、
或ることをなさないために不正である場合も少なくない。

『自省録』マルクス・アウレリウス・アントニヌス

(2023.09.18 記)


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