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ベクアステラ 1st ANNIVERSARY LIVE 「STELLA」

仕事納めだったが、開場/開演の時間が一時間遅く変更になり、このご時世で納会が無いお陰で、何とか開演前には辿り着くことが出来た。

会場の新宿KeyStudioは、嘗てフジテレビの昼の番組を収録していたスタジオアルタだったところ。
新宿駅地下道の構造を熟知していれば、駅から地上に出ずにそのまま行くことが出来る。

ライブハウス然としたライブハウスとは異なり、壁や天井が黒ではなく、明るく洒落乙。
一周年の「ハレの日」のライブである事を、妙なところで実感する。

ステージ上だけでなく、客席側面も含めて3面スクリーン。
「見せるライブ」として作り込んでいる事を窺わせる。

客席後方は関係者向けの椅子席。 立ち見の会場の平らな床なので見えにくいと思うが、親御さんなどは矢張り椅子があった方が有難いのだろう。

直前まで前物販をやっていたが、仕込みには万全を期していたようで定時に開演。

オープニングムービーからオーバーチュア二回廻し。 二回廻しの二回目で出てくる。
ループ出来る構造になっているので、主催ライブなどで時間にゆとりを持てる場合、長めに流せる。
焦らして気を持たせることで期待感と高揚感を刺激する演出。

メンバーが登場して一曲目。

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夢の中で

広く奥行きのあるステージを、きっちり広く使えている。
二人や三人で組になる部分の振り付けなどでは、必ず「余計な事」を入れてくるのだけれど、或る程度の余白を予め持たせてあり、且つメンバーそれぞれに振り付けが染みついているので、大きく脱線しても戻って来られるし、歌も乱れない。

絶対絶対

振り付けの中に「指差し」のたっぷり入った曲。
客席を広く大掴みで見る事が出来ているので、近くから遠くまで、満遍なく「指差し」が飛んで来る。
メンバーもお客さんも楽しそうなのが良い。

脱線の起点となり、脱線に脱線を重ねても、戻るべきタイミングで本線に復帰できる天乃さや。
脱線したまま苦笑いと言う事もあるが、それもまた楽しい。

もっとずっと

イントロのオケの音がちょっと違うので訝しんでいると、二人ずつで歌う特別構成であることが明かされる。
先ずは天乃と五十嵐。
四つに分散されてしまう視点が二つに絞られるので、じっくり見て聴けるのが良い。
2コーラス目で戻ってきた紬麦・早瀬。 初期の「星空衣装」に着替えていた。
最期は着替えを済ませた天乃と五十嵐も合流。
期するところがあるのだろう。 紬麦の歌が走らない。
遣り切る覚悟が見て取れた。

Fantasy Summer Quest

僕らのメロディー

新衣装になってからの曲を初期衣装で。
会場を見渡すと、偏りはありつつも満遍なく四色の光る棒が揺れている。
これも一年で築き上げて来たものの一つだと思う。

煌めく流星群

夜空の物語

ピアノアレンジバージョンで2曲続けて。
普段よりゆったりした流れ。 勢いで誤魔化せない中、張らずに語るが如く。
歌の面でのそれぞれの到達点を確認。
送り手の課すレッスンの目的と目標が、それぞれを活かし・伸ばしつつ、グループとして揃えるところにあるのが見て取れる。

単にピアノ伴奏にしただけでなく、流れ星のようなグリッサンドなど、オカズも入って緩急強弱も付いており、歌う難易度としては高めになっていたが、余興ではなく、きちんと「金の取れる見世物」に仕上げられていた。


蒼天のステラ

本日初披露の新曲。
「夜空の物語」「煌めく流星群」の延長線上にありつつ、雨上がりの空、昼間の曲になっている。
ステージを取り巻く壁に映し出される映像も、雨上がりの光景。
9月に予定されていた周年ワンマンで披露される予定だった曲が、予定より大きくずれ込んで年の瀬になって日の目を見た。
「ああ、雨は上がったのだな」
と感慨に耽る。

いつの日にか

初見の人もいる事を忘れず、曲名を言ってから歌に入る。
演者も送り手も「なれ合い」にせず、広く知って貰おうとしているのが分かる。
曲そのものとは別に、曲紹介として呟くような「いつの日にか」の語感も好きだ。

夜空の物語

本編最後の曲は通常バージョンで。
ここまでほぼノンストップで約一時間。
肩で息をすることも、この世の終わりのような表情を見せることもなく、常に目は輝いていたし、感極まっても言葉を紡ぐことを諦めず、泣いて言葉に詰まってしまう事も無かった。


誰からともなく、アンコールを求める拍手が始まる。
厭なこと、息苦しいことも多かったここ数年であるが、アンコールの発動を巡る醜悪な鞘当てが無くなったのは良い事だと思う。
客が主役になる瞬間など、無くて良い。

蒼天のステラ

上をTシャツに着替えてアンコール。
グループの特質としての叙情は湛えつつ、明るめの曲調。
現体制としては最後のライブとなったが、曙光を感じさせてくれた。
メモを採りつつ、配られた光る棒をステージに捧げる。
ケチャと呼ばれる行為が「ケチャ」と命名された現場に居あわせており、命名以前からあんなことをやっていた訳で、こうしてレポートを纏める事も含めて20年から似たようなことをやっているが、今年もアイドルの現場は楽しい。
来年も楽しい日々が続きますように。

夜空の物語

最初に勝負曲を得られたグループの強さを、改めて感じる。
二の矢として「煌めく流星群」があり、三の矢として「蒼天のステラ」が初披露。
紆余曲折ありつつ、明るい兆しの見られる、良い年の瀬になった。

以下、メンバー雑感。

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早瀬さくら

今年の後半になって一と化けした感があり、ビジュアル面で上手く大人になりつつある。
歌の面でも進境著しく、ブレスも含めて自分の歌い方として確立し、「切なさ」の表現に妙味。
このあたり、単に歌う技術を付与するボイストレーニングではなく、それぞれの声の特質を生かし、美点を伸ばす育成方針になっているのだと思う。
真面目な話をする際、照れ隠しに「ヘヘッ」と笑ったり、呟くようなボヤキを挟むこともあるが、話すべきこと、語るべきことを最後まで言葉に出来るようになったのも、この一年での大きな進歩だと思う。

五十嵐マイ

このグループに必要とされている事、自分にしか果たせない役割がある事を実感できているように感じられる。
自信は心のゆとりとなり、自然な笑顔となって現れる。
歌の面での核としての安定感。 歌唱可能音域を拡げつつ、高いレベルで均質に。
土台としての五十嵐の唄があるので、それぞれのメンバーも伸び伸びと自分の歌を唄えている。
「この人がグループに居て良かった」と、メンバーもファンの多くも感じていると思う。

紬麦みほ

振り付けも歌も、大胆で且つ丁寧。 やる気が上滑りして歌が走ってしまう事もなく、美点である「思いを言葉に乗せる歌唱」の良い所が出ていた。
アイドルとしてのお手本として「天乃さやの背中を追いかけていた」「全部(天乃)さやに教わった」と語っていたが、歌でも振り付けでも、天乃のコピーではない「紬麦みほらしさ」、「ベクアステラの紬麦みほ」としての集大成を見せてくれた。
卒業制作として、「優」を差し上げられる出来。

天乃さや

「アイドルとして息を出来ている喜び」に満ち溢れていた。
それが出来なかった日々の苦しさが、幸せを測る物差しとなって、今に生きている。
「天乃さやでいられるのも、ファンの皆さんがあってこそ。」
韜晦の小島の磯の白砂で蟹と戯れる属性の人なので、日頃は本心を顕わにせず、話を逸らしたり憎まれ口を叩いたりすることがままあるが、こうした節目のライブでは(自虐に走ったりしつつも)心の内を明かしてみたりもする。
真面目と不真面目、危うさ/儚さと強さ、二律背反するものが同居しており、安心して見ていられるが、安閑としてはいられない。 一瞬一瞬が見逃せない。

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一年を振り返る中で、楽しいことばかりではなく、苦しいこと・つらいこともあったけれど、ステージから見渡す客席の幸せな光景を見られたと語られていたが、それは客席から見たステージ上の光景についても言える事であり、互いが互いを必要とする良い関係性に恵まれているグループである事が、改めて感じられた周年ワンマンライブであった。

来年は、この輪がもっと拡がりますように。

(2021.12.29 記)

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