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B’s写真展「壁」

Pixcel展から更に階下へ。
4階と3階では、別所隆弘主宰のオンラインサロン参加者の写真展。

写真展開催の経緯や趣旨については、別所が纏めている。

兼題は「壁」。 ポートレート、家族、旅 etc... 参加者それぞれが「壁」だと捉えたものや、それにまつわるものを作品として展示。

来場者に配られるA4平綴じの図録に一人一頁、展示した内容を纏めてあり、そこからQRコードでそれぞれのSNSアカウントに飛べる。
それぞれに「壁」の捉え方、向き合い方は異なり、展示内容も多岐にわたるのだけれど、図録を媒体としてその先に進む事で、作者の人となりやその他の作品に触れられるようになっているのが良い。

主催者出展者の独りよがりにならず、どうすれば伝わるかについてしっかり考えられており、写真展は写真展として会場で完結するのだけれど、その余韻に浸ったり、反芻したりする手段が分かりやすく与えられる。

通路幅の設定などに改善の余地はあるが、出展者の振舞いが抑制的で、来場者の邪魔にならぬ位置取りを常に心掛けていたので、致命的な滞留は発生せず、混んでいるなりにしっかりじっくり見る事が出来た。

心惹かれたものなど

坂本智一
病み、衰え、やがて逝く父を撮った連作。
私も死の床にある父を撮り続けたが、ある日を境に撮る事が出来なくなる心持ちは身につまされるものがあった。
私が撮れなくなったのは検視が済んでから先、生きていない事がはっきりしたところからだったのだけれど、まだすぐに終わりが来る前ではありつつ、予感が実感に変わるところでの葛藤もなかなかに辛く、そこでカメラを置いた決断は間違いではない。

カノン
黒い毛糸をパーティションに渡して五線譜を作り、そこに五枚の写真を配したもの。
単に直貼りしただけでは伝わらないものに、少し工夫する事で「切っ掛け」を作ることができる。

考えて練り上げられた作品群。
作って並べるだけでなく、その先の「どうしたら見て貰えるか」「どうしたらより伝わるか」にまで考えが及んでおり、出展者それぞれにも浸透しているのが実に良かった。

実にルデコらしい、縦横に繋がりのある3つの写真展だった。

(2023.05.03 記)

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