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「花と雑草の写真」展

雨雲レーダーと睨めっこ。
降る気遣いが無くなったので自転車転がして出掛ける。

案内にギャラリーの名前は書かれておらず、展示会場は「銀座奥野ビル306号室」。


3階迄、階段を昇ってから気がついた。
「銀座奥野ビル三〇六号室プロジェクト」のその場所だった。
https://room306project.tokyo/about/

奥野ビルは同潤会の建築部長だった川元良一の手によるもの。
都内に残る数少ない震災復興建築の一つでもある。
現在はギャラリーや店舗として使用されている為、殆どの部屋は躯体はそのままでも改装はされてしまっているけれど、306号室は特殊な来歴から時の流れが周辺より遅い(※止まってはいない)。

この写真展目当てで来た人以外にも、この建物を見に来た人、この建物で催される種々の展覧会を回遊する人などが入れ代わり立ち代わりやって来る。

竣工当時の姿も残す、美容室だった室内に、草花の写真と、それを囲むような、元からそこにあったかのような生け花。神棚は無く、鴨居に一陽来復の札がちょこなんと。
江戸とは地続きのようでいて、そうでもない。 「東京」と言うものの原初的な姿。
カラー、モノクローム。 プリントする素材も技法も様々な草、木、花の写真と、自然に帰りつつあるような306号室を、実物としての草、木、花が取り巻き、寄り添う。

写真と生け花と、それを包む「場そのもの」の濃密さ。
くらくらするようなひと時だった。

(2022.11.27 記)

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