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ビーバー × 柊 里杏 写真展 『つなぐ』

日の暮れ方、鶴巻町ユカイハンズ・ギャラリーへ。

3年分の連作をぎっしりと詰め込んだ展示。
少し高めのところまで使ってあり、保護板の反射を拾ってしまうが、角度を変えれば見えないことは無い。
天井の蛍光灯を点けずに済む、早い時間に見に来るべきだった。

女性のモデルを男性が撮ると、見下ろし気味になる事が多いのだけれど、車椅子からの視点なので少し見上げ気味になるカットが多い。
この高さから見える主観的な構図と、人の背丈より更に高い客観的視点からの見下ろし、引きの絵などを織り交ぜる。

撮影として大掛かりなものも多く、協力してくれる人も含めての撮影なのかと思っていたが、外ロケのものは、基本的にモデルと撮影者のみとのこと。
荷物を持って貰ったり、車椅子を押して貰ったり、被写体としての仕事以外もしてくれる人と作り出せる連作。

高い視点からの撮影、位置として高いところにいるのではなく、一脚を使用してセルフタイマーでの撮影。
井の頭池の手漕ぎボートに乗っての桜を入れた構図の見下ろしもそうだったのにも驚いたが、ジョン・エヴァレット・ミレーのオフィーリアを思わせる水面に浮かぶカットも、浮き輪を使って漂いながら一脚で撮ったとの事。

発想とやる気と実行力と、それに付き合ってくれるモデルとの幸せな出会いが結実した連作ではあり、その辺りの情報を抜きにしても良く出来た写真だとは思うのだけれど、私が心動かされたのは少々見上げ気味になっている、車椅子上からの写真だった。

少し俯いた首の角度、心持ち見下ろすような暖かで穏やかな視線。
これを自然に撮れるカメラマンを私は他に知らない。

(2022.12.04 記)

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