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村田兼一写真展「姫君と心臓の女神様」

日曜の写真展巡りの取っ掛かりに、神保町画廊へ。

いつもの屋根裏での連作だが、大道具と言うか小道具と言うかに「心臓」が加わり、モデルの顔ぶれも変化。
依頼によって如何様にも化けるが、「七菜乃だな」と分かる七菜乃の強さに舌を巻く。

ステートメント

 昔々とある国の姫君は、他の女官たちと違いバラ色の頬を持たず、また人の心が分からないことを悩んでいました。小さな頃から、自分には「心臓と言うものがない」と女官たちの噂を耳にして、「それで私は人の心が分からない」と小さな胸を痛められていました。
 年頃になった姫君に多くの求婚者が現れても心はときめかず、恥じらいで頬も紅くはなりません。悩んだ姫は心臓の女神さまに夜毎涙ながらに祈りました。
「私に心を宿すという心臓をください」と。(本文より抜粋)

入って右側の壁に連なるものは、心臓のモチーフの入った連作。
左側の壁は入らない連作。

心臓を宿すのではなく、外部にある心臓と繋がる事で、心臓を得る。
モノクロームへの調色で始まったからか、色彩は抑えめだったこれまでの作品より、全体的に彩度が上がった感じだが、それだけではない何かを感じて寄ったり離れたり。 あちらを見たり、こちらを見たり。

ハタと気付く。 心臓のモチーフの有無で、肌の色味が異なる。
左側の壁のものは、これまでのものの延長線上にある、ビスクドールのような肌。
右側の壁に並ぶ、心臓を得た写真は、文字通り「血色が良い」。

ちょっとした事なのだけれど、受ける印象は大きく異なる。
傍から見ると突詰め切ったように見えるライフワークにも、その先はあった。

(2022.12.04 記)

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