シェア
ああ、沈んでしまう。太陽が。 広がる海の外がわ。 波は、その地点から発生して寄せてくる。 波は、その地点で産まれている。 他に発生源はないのだろうか。 考えてみよう。 † ないはずだ。 この海では、うねりも風もない。 それは、大きな液体が微動だにせず、 大地に張り付いている状態だ。 それは、この星が死んだ星だと、 痛いほど証左している。 冷たい星なのだ。 温度を上げる装置がイカれてしまって、 風も海流もない。 だから、 波は、あの地点から発生
「やっぱ月がないと、しまんないよねー」 窓のサンに身を乗り出して夜空を見上げていた君が云った。 「ほら、みかづき。見てよ」 君は頭をもたげて、わたしにうながす。 晴天の夜八時すぎの空には、鈍重な青が重なりあっていて平坦としていたが、 西の山あい、もう沈みそうにかたむく三日月が見えた。 「あそこだけ幕が破れたみたい」 たしかに空に切れ込んだ金色の弧線は、 幕の裏の光が漏れ出るようだった。 風がふきすさんだ、一瞬。 となりの君の髪がまとわりつい