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新旧ごちゃまぜ1日1枚レビュー / Clairo『Charm』

1日1枚、好きな音楽についてのレビューを始めてみます。いつまで続くかな。1日目は、7月12日にリリースされたClairoの新譜『Charm』について。レビューとしてはお粗末な文章ですが、どうかお手柔らかに。

今作は初期のベッドルームポップのイメージから離れ、70年代のヴィンテージサウンドへの愛をさらに深めたアンソロジー。共同プロデューサーは、NYソウルシーンの中心人物のLeon Michelsという方らしいですが、どうやらノラジョーンズやカリウチスも手掛けてるようで。メインドラマーはSilk SonicのSmokin Out The Windowで叩いてる人みたいですね。

ジャズ、サイケ、チェンバー、ソウルのグルーヴをシームレスに切り替えつつ、絶妙な塩梅でポップスに昇華した作品です。DoorsやBroadcast、Al Greenっぽいなーと思う曲もちらほら。

すごいと思ったのが、サウンド面が結構ラフだという点。今作みたいに楽器のアンサンブルを重視したら普通はもっとリッチな音になるはずですが、『Charm』では録音された音源をテープサチュレーターのような機材に落とし込んでトラックダウンしてるようです。

彼女のルーツは宅録だからこの録音スタイルは初志貫徹というか筋が通ってますし、ビンテージソウルの再現法としても面白いですよね。こういうバランス感覚と自分の魅せ方を完璧にコントロールしてるところもClairoの魅力かと思います。

特に気に入ってる曲がソウル色満載の「Juna」なんですが、このJimmy Fallonのライブ映像が最高で最高で。親密さと嫉妬が入り混じったような意味深な視線、アンニュイすぎる…。紛れもなくCharmの使い手です。

作品を通して何かが始まる前の"予感"について歌われていると思うのですが、その醸し方って一番ドキッとするし、言ってしまえばあざといわけだけど、その自覚的にあざとく振る舞える賢さが好き。

ここ数年は聴覚障害やパニック障害に陥ってしまうなどナーヴァスな状態が続いていたみたいで、前作の『Sling』の制作中は森に篭って生活していたとか、大変だったなー。

今作ではアルバムを通して何度も月にまつわる歌詞が出てきます。月は神秘的なモチーフと同時に時間と記憶の目印。月の満ち欠けのように今後彼女がどう化けていくのか注目していきたいですね。


元気になります。