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そして父になる

是貞裕和監督、2013年制作の映画です。タイトルが秀逸でした。

主演の福山雅治さんが父親役を演じたことが話題になり、リリー・フランキーさんが演じる、ぐーたらだけど子煩悩な父親も好感がもてました。

赤ちゃん取り違えが発覚したことをきっかけに家族が苦悩するストーリーでした。「生みの親」か「育ての親」か。「血」と「過ごした時間」のどちらが大事か。

子育て中の親はこの映画をみて「もし自分だったらどうするだろう・・」と考えたのではと思います。

この映画を最初に観たとき、「福山雅治が格好よすぎて父親ぽくない」と感想をもちました。

その後、福山さんのインタビューで監督の意図を知り、納得したのでした。(以下、映画.com「そして父になる」インタビューより転載)

僕自身が気にしていたのは、とにかく父親に見えないと思うので、大丈夫ですかねということを是枝さんにうかがったんです。そうしたら『全然、大丈夫です』と。父性を獲得するというテーマなので、むしろ最初からそんなにすごくいいお父さんに見えていない方がいいと思うので、という感じの始まりでした。

最初からいいお父さんでなくていい。ぼくもそんな感じでしたので(福山雅治のように格好よかったわけでは勿論ない)、すごく共感しました。

このエピソードを読んで思い浮かべたのは、柏木恵子先生の著書『父親になる、父親をする』です。

子の受胎と誕生に関わることで「親になる」と同時に、人間の子は未熟な状態で出生するため、誕生した子を養育する=「親をする」ことが必須。

動物はメスだけが「親をする」のが通常(鳥類やマーモットなど例外種あり)であるが、人間のオスは高次な心理機能をもつため「父親をする」を推進したと解説されます。

『そして父になる』のタイトルが絶妙なのは、「父親になる」と「父親をする」の関係を言い得て妙に表しているところでした。

家族は、血が繋がっている(=父親になる)という事実認識で成立するのではなく、能動的な時間をともに過ごす(=父親をする)ことによって親子は(夫婦も)家族になれる。

家族には「そして」という時間経過が必要であることを『そして父になる』のタイトルが教えてくれます。そう、福山雅治さんは『家族になろうよ』の曲で「100年経っても」と歌っていました。

あるとき、この映画の感想を友人と話していたら「血の方が大事でしょ」と言いました。へぇーと思いつつ、柏木先生の研究で「子育てをしていない父親の方が、むしろ自分の『分身』であると考える度合いが強い」(前著20頁)とあり、彼はあまり育児していない父親だったので合点しました。

なんか、今回は親父ギャグがでてこないな・・。

親父ギャグがないことで、クレーマーが現れるかもしれません。

あとで『クレイマー、クレイマー』を観たいと思います。元祖父親映画の名作です。

『クレイマー、クレイマー』は仕事中心の主人公(ダスティ・ホフマン)に愛想をつかした妻が家出し、父子ふたりきりの生活となって最初は戸惑いながら、交流と体験を深めて親子関係を築いていく物語です。

朝食のフレンチトーストの作り方が上手になっていくシーンが、父の家事力がアップしたことを象徴していました。

余談ですが、ファザーリング・ジャパンが父子家庭支援の基金を立ち上げた際に「フレンチトースト基金」と名付けたのも秀逸なネーミングでした。

父子家庭の物語といえば、重松清さんの小説『ステップ』が泣けます。おすすめです。映画化されて4月に公開予定だったのが延期された模様。

ちなみに、「血か時間か」の問いに戻ると、ぼくは「子どもと過ごす時間が大事」に賛成。映画でフランキーパパが福山パパに「時間だよ。子どもは時間」と説教していて、うなづいたものです。

ぼくが好きな言葉で「家庭の時間は量、仕事の時間は質」があります。(ブライアントレーシー著、勝間和代訳『年収を自分で決められる人になる方法』157頁)

仕事では時間生産性を意識するのですが、家族の時間に効率を求めない方がよいですね。無駄とも思えるような時間を過ごすことも大事。

ビジネス思考的にステイホームが痛いのは、「不要不急」は時間管理マトリクスでいう第四領域(低重要・低緊急)で、一番ダメな時間の使い方になるからです。

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第四領域を勝間和代さんは「空費の時間」と名付けました(上の図はこちらURLから転載)。ステイホームの日々を空費の時間で過ごすのではなく、重要度高の投資の時間で使いたいところ。

現在ぼくたちが置かれている外出自粛の日常は、学習や家族団らんに使える時間であり、いわば投資の時間ボーナスタイム。ここで、がっつり稼ぎましょう。

(おまけ)
「子育てパパ力検定」問題集より出題。

Q. 映画『クレイマー・クレイマー』は、1970年アメリカの社会問題を見事に浮き彫りさせた名作です。その社会問題としてあげられるのは、(1)離婚 (2)ワーカホリック(仕事中毒)と、あとひとつ何でしょう?

①ニート
②女性の自立
③育児休業
④男女共同参画社会

答:②

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