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今年観に行った映画(BACKSPACEKEYアドカレ企画22日目/主催:かなるさん)


ばすきーに居ついて数ヶ月、がよちゃんです。
はじめの頃は「パンツは脱いじゃダメ、今は、まだ!」とかのふざけた名前をしていましたし、今でも土日には「週末ならギアをハイに入れて」などと名乗っています。

そんなわたしが今回みなさんにお話しするのは、掲題の通り、今年観に行った映画の、なんちゃってまとめです。

映画にお詳しい方には歯痒く、そうでない方には面倒くさい内容となっております。
ただのいち観賞者のぼやきなので気楽にお付き合いください。

※若干ネタバレのようなものがあります。
※作品ごとに文章量にかなりの差があります。
※感想ですから大なり小なり個人的な思想がまろび出ています。
※好き嫌いもかなりはっきり出ています。

よろしくお願い致します!

THE FIRST SLAM DUNK(2022)


昨年12月に封を切られ、公開から3ヶ月。
普通の映画ならすでに上映が終わっていてもおかしくない頃、アンテナの低い自分がようやく「なんかスラムダンクの映画が流行ってるらしい」と気がつき、急いで観に行ったのがはじまり。

映画本編は、現在まで一度も映像化されていない、スラムダンクの作中で一番人気の試合であるインターハイの山王高校戦を、主人公の桜木花道ではない宮城リョータの視点で描いた物語。

説明するまでもなく有名なバスケ漫画なので原作の説明は省くが「原作から主人公を変えてアニメ映画化した」ということさえわかれば、この映画のキーポイントがひとつわかってもらえると思う。

当然、公開前後は荒れたらしい。
(SNSで映画の情報を追ってて、なんか燃えてるな、とはおもってたけど、その実理由を確かめてみると、それは燃えるだろ、とおもった)

ただ、観に行くきっかけは「なんか流行ってるらしい」というSNSの雰囲気に飲まれたことだったので、この時点で映画はすでに興業的に最高の真っ只中にあり、封切り前のネガキャンなんてなんのそので、鑑賞を予定していなかった人間をも巻き込んで上映規模が拡大していたのだった。

観た結果はもう、めちゃくちゃ良かった。
何故か狂ったように足繁く、30回通った。

ハマった要因はいくつか考えられる。
・わたしの大好きな死に別れの兄弟の話をベースに、残された弟(本作主人公:宮城リョータ)が死んだ兄の影を追いかけながらバスケ部で成長・奮闘するのだが、良い先輩・良い後輩を持ち試合へのモチベーションも高い中、死んだ兄の方がバスケが上手かったし死んだのが兄じゃなくて自分の方が良かったかもしれないなどの鬱々とした内面描写があること。
・そして、そんなシメっぽい演出があるにも関わらず、本番のバスケの試合のシーンは一転カラッとしており、スポーツ選手の躍動する体に人間の身体的な能力の凄さを感じるし、試合運びも本物のバスケさながらの流れを見せること(cf. B.リーグや高校バスケの試合がようつべなどにあるので見てみてほしい)。
・モーションキャプチャーを使った作り込まれた3DCGに技術的な進歩を感じ取れたこと。ハリウッド系のSFやディズニーピクサーなどで多様されるのは当たり前だし、近年は日本のアニメでも用いられる(ex.プリキュアのダンスシーンなど)こともある中で、スポーツをする人間の肉体を実際の試合の動き同様に再現するすべが日本の映画会社で培われているということに感動したこと。

本作は上映規模の拡大にとどまらず、本物のNBA解説者と実況アナウンサーが生実況解説した回や、応援上映回、赤ちゃん同伴OK回など、上映形態も多岐に渡り、さまざまなたのしみ方を提供してくれた。
最終的には興行収入157億円となり、国内歴代興行収入ランキングで13位に入るなどの快挙を成し遂げた。

内容ミリしらで観れるのかなかな。
キャラとかわかんないけど平気かな。

最初そう思った。
スラダン自体はこどもの頃放送していたセーラームーンと抱き合わせで見ていた程度の知識だったから。
だけどなんら問題なく、なんなら初見で観て、漫画やアニメを掘り起こしていっても全然大丈夫。
というか自分がそのルートを辿るほど沼に浸かってしまったので、ばすきーの誰かも道連れにしたい気持ちがある。

漫画読んでる人も読んでない人も、アニメ見たことある人も観たことない人も、バスケを好きな人もそうでない人も、一度は鑑賞して欲しい作品。

現在DVD/Blu-ray絶賛予約受付中(布教)。


シン・仮面ライダー


エヴァンゲリオンで有名な庵野監督のシン・シリーズ。
(cf.シン・エヴァンゲリオン、シン・ゴジラ、シン・ウルトラマン)

まず大前提として、自分が通ってきているのは平成ライダーのみ(他アマゾンズ、リブート版のBLACK SUNなど)。
そのため、果たして原点である昭和ライダー準拠の作品を観てたのしめるのだろうか、とおもいつつも、シン・シリーズの先作を観ていたことにより、鑑賞に至った。

前知識として知っていたのは、主人公の本郷猛がショッカー軍団にさらわれて人体改造を施され、改造人間となり、人間でもないかと言って怪人にもなりきれないなか、命とは何か、怪人との共存とは何か、自分は一体何のために戦いに身を投じるのか、自分を改造した組織に復讐した先にはいったい何が待ち受けているのか、と言ったような問題提起を交えながら物語が進むということ(本当に?)。

こんな曖昧な知識で観て本当に大丈夫だろうか。
とおもったけど、結果はあんまり大丈夫じゃなかった。

まず期待していたアクション。
仮面ライダーといえば豪快なるキックとパンチ、軽やかでいて骨のある身のこなしからの怪人とのバトル、爽快な走りとカッコいいウィリーを見せるバイクシーン、など、いわゆる画面映えする特撮ヒーローのお約束みたいなものが考えられるが、それらにあまり満足できなかった。あまりに画面が地味だったのだ。

役者さんの演技。
よく言えばさっぱりしていて悪く言えば棒読み。
迫力のあるシーンもあったけれど、逆に大仰にも思えた。
それらが作品の根底に流れるストーリーのリズム感なのだと諭されればそうなのかもしれないけれど、単純に自分には合わなかった。

そして何より、ガワがあんまりカッコよくない。
※ガワ:変身スーツ。衣装。
これは当然かもしれないけれど、シリーズ作品は回を重ねるごとにデザインがブラッシュアップされていくものと考えがちになるが、それが悪かったのかもしれない。
もちろん当時の初代仮面ライダーからはデザインに手が加えられている、しかしあまりよくない印象として、ケレン味のない、といった方が正しいのかもしれない。

これらの作品と自分との齟齬は、この映画は原初作品を参考にした監督自身の新しい仮面ライダーであって、最新の令和仮面ライダー作品ではないことを失念してしまっていたところが大きいように思う。

もちろんSNSなどでは、原作をベースにした監督の愛のある作品に仕上がっているという声もたくさん散見されていた。
初代慣れしていたら、受ける印象もまた違ったのかもしれない。今回は単に筆者と監督の趣味が合わなかったのだろうと思う。

ここまであんまりポジティブではない感想を書いてしまったけど、最後にひとことだけ。
西野七瀬さん演じるハチオーグさまは、かわいい。
これは真理。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

ミシェル・ヨーが主演?!?!?!?!?!
しかも本格SFアクション!!!!!

SF大好き!アクション大好き!!
しかもそれがはちゃめちゃにカッコいいババア(あえてこの呼び方をさせてください)が演じてるとなると、それはもう観にいくしか無い。

映画の謳い文句としては「マルチバースとカンフーで世界を救う?!」なので、B級おばか映画なのかと思いきや、全然そんなことはない。

カッコいいアジア女性俳優の代表格であるミシェル・ヨーが、今回は赤字のコインランドリー経営の冴えないおばさんとして登場する。
彼女はひょんなことからマルチバースの世界から来た並行世界の夫らしき人間から「世界を救え」との命運を託されてしまうのだが、仕事も家庭もままならない自分が一体何をどうやって世界を救うのだと、ごく当たり前の困難に直面しながら、多元宇宙に存在する自分から預かったカンフーなどの技で向かい来る敵をバッタバッタと薙ぎ倒していく。

最終的には主人公の活躍により世界の均衡は保たれ世界平和を取り戻すのだが、いちばん最後には今生きている自分の世界の自分の問題と正面切って向かい合わなければなくなる。

それらのシーンが、自分にはかなりキツかった。
悪いという意味ではなく、心に突き刺さるという意味で。

主人公は夫よりも仲のうまくいっていない娘と対話をすることになるが、すれ違い、衝突しながらも、なんとか家族であろうとする。
親子の関係は、切ってしまった方がいい場合もあれば、できる限りの修復が望まれる場合もあるが、今回は後者だったように考えられる。
筆者の立場が家族内では娘の立場にあるため、このシーンには静かに泣いた。

さっきまでのカンフーは?!並行世界の色々な自分は?!迫り来る敵は?!と思われるかもしれないが、ストーリーの流れは一貫しているのでそこは安心して欲しい。

今年いちばん観て良かった映画まである。
ちなみにアカデミー賞最多7部門受賞。
どうしても映画の賞レースは白人系の作品に偏りがちになるため、今回のようにアジアンをメインに起用した映画としてはめちゃくちゃな快挙になるという。

ところで、正直なとこ「“マルチバース”ってなんぞや、多元宇宙であってるか?並行世界のことか?」くらいの感覚だったが、エブエブを観たことで、SF作品でのポピュラーな扱われ方としては、それぞれ並行して存在している世界と分岐として在ったかもしれない自分が活躍する系のものだと認識するに至った。
まだこのあたりは勉強中なので詳しいことはwikiに投げたい。
(マルチバースと聞くとMCUをおもい浮かべる方も少なくないとおもうけれど、彼らの専売特許ではなく、歴とした科学用語)


AIR/エア

当時バスケ部門の経営がズタボロだったスポーツ用品メーカーであるNIKEが、まだ無名の高校生だったマイケル・ジョーダンのスポンサーになり、エアジョーダンを作り、戦略的にヒットさせ、世界を席巻するまでを描いたプロジェクトX的な物語。

そもそも、このタイトルのエアの意味するところ。
それはエアジョーダンのAIR。
エアジョーダンとはNIKEの有名なバスケットシューズのこと。
バスケの神様である「(マイケル・)ジョーダン」が「宙を舞うように」バスケをプレーするためこの名前が付けられたという。

シリーズ展開多種多様。
新作が出るたびに争奪戦になるほど人気のアイテム。
スポーツのシーンだけじゃなくてファッションやアートにも多大な影響を与えている。

床を蹴る瞬発性、試合での耐久性、そして何より誰もが憧れてやまないシューズデザイン。
そしてそれらを兼ね備えたシューズを足にフィットさせてコート上を舞うジョーダン。
彼の輝かしい活躍とともに全世界で爆発的に売れるようになったNIKEの大ヒット商品はいかにして作られたのか。ーーー

なぜこれを観に行ったかと言うと、先に書いたTHE FIRST SLAM DUNKがめちゃくちゃおもしろく、バスケ文化や出てきたスポーツ用品などにも興味を持ったため、鑑賞するに至った。

めちゃくちゃおもしろかった。2回観た。

一つ注意して欲しいのは、この映画には本当に普通に働くおっさんおばさんしか出てこない。
若い子くてフレッシュな俳優さんはモブのバスケ部員くらいであるし、話を構成する登場人物は、NIKEの社員とCEO、ジョーダンの母親、エアジョーダンのデザイナー、その他アシックスやアディダスなどの競合他社社員たちである。
マイケル・ジョーダンは存命中のためか、彼を演じる役者の顔は一切出てこない。
NIKE全面協力の若者向け製品の広告のような映画であるけれど、基本的に中年の人間しか活躍しないし、バスケシューズを扱っているにも関わらずバスケの選手たちが活躍するシーンもほとんどない。
あくまでシューズが誕生する過程にスポットを当てている。

主人公になるのはNIKEの一社員。
彼はこれまで何人もの高校生プレイヤーを発掘してきたやり手であるが、会社の経営的にうまくいっていないバスケ部門の立て直しを命じられ、ある一人の有望な高校生に目を付け、専属契約の交渉に臨む。
ただし相手は無名の未成年、直接やり取りするのは保護者であるジョーダンの母親なのだが、そこの駆け引きのシーンが巧妙でおもしろい。
この母親が相当に賢く、大手の企業からの誘いにたやすくノるのではなく、息子が将来に渡りどれだけ活躍して稼いでいかれるのかを考えた交渉をするのだ。

その過程で、主人公はジョーダン専用のシューズを作ることを提案し、母親は生涯に渡り売上の一部を得ることを要求する。

当時から良い製品を生み出すことで世界的に知名度の高いNIKEだったが、果たしてそんな製品が作れるものだろうか。
一人の人間の生涯を保証してくれるような、そんな製品が。
作れてしまったのだ。
現に、どこのスポーツショップへ行っても、靴屋さんへ行っても、置いてないところがない。
しかも当時1980年代から数えて40年余り。
当時の高校生が60歳になる現在まで売れ続けている。
そしてシューズの売上の一部は今でもマイケル・ジョーダンに支払われ続けている。

では一体エアジョーダンの何がそんなに世界中の人々を惹きつけ続けるのか。
マイケル・ジョーダン本人のNBAでの活躍もあったのは当然だが、そのシューズそのものの売り出し方にも特徴があった。

(NBA:ナショナルバスケットボールアソシエーション。アメリカの超超超超有名なバスケのプロリーグ。現在日本人では渡邊雄太と八村塁が活躍中。アメリカの4大プロスポーツに数えられていて、他、MLB(野球)、NFL(アメフト)、NHL(ホッケー)がある。)

NBAで使用できるスポーツ用品には細かい規定があり、シューズもそのうちに入るのだが、一足に占める使用して良い色の面積まで指定されていた。
NIKEはその規定を破ってエアジョーダンを製作したのだった。

規定があるということは罰則も伴ったりするのだが、NBAを罰金を払い続けながらシューズを選手に履かせ続けるなんて、一体誰が考えられただろう。
でもNIKEはそうした。
話題は鰻登りだったらしい。
筆者はまだ全然生まれる前であったため当時のNBAでの熱狂はわかりかねるが、現在まで続くエアジョーダン人気は、年間約40億ドルを稼ぎ続けているという。
(40億ドルって…………いくら?!?!?!?!?!?)

この映画で他に気になった点としては、アメリカでのバスケ人気(NBA人気)とアメリカの他のカルチャーに作用していたことなどがダイジェスト的にざっくりわかる仕様になっているところ。
映像のところどころで当時の流行りなどがわかるようになっている。車、ファッション、電子機器、そして当時の音楽をBGMにしてくれているところなども、非常に臨場感があっておもしろい。

今年公開の映画だが、もうすでにプライムビデオにて配信されている。
ぜひ観てみて欲しい。

ザ・ホエール

これは友達に誘われなければ観に行かなかったであろう映画。
原作は同名の舞台劇。

妻と娘を捨てて、自分が教えていた男子学生との恋に走った男が、ストレスで病的なまでの肥満に陥り、過食嘔吐を繰り返しながら死ぬまでの数日間の物語。

暗い。
救いはない。

自分が死ぬと分かってから、自分の預金を手渡すからもう一度家族と関係修復したいなどと生ぬるいことを言い始める。
だけどこれはお前が始めた物語なのであって、元妻と娘への懺悔に垣間見える許されたいという甘えを筆者は受け入れることができずに眺めていた。
でも多分、そういうことを狙って作られた物語だと思う。

結局は最後に主人公だけが救われてしまうけど、周囲に遺恨を残したままこの世をさるのでめちゃくちゃに後味が悪い。
なんでお前だけ救われて死ぬんだ。おい。

どうしても受け付けられなかったタイプの映画。
途中具合が悪くなった。

A24はいつも最悪で最高な映画を作るけど、今回は合わなかった。
アカデミー賞、いくつか取っているんだよなあ。
でも合うか合わないかはまた別の話。

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

これも説明不要かと思うが、一応ここに記載させて欲しい。
今年一番ヒットしたと言っても過言ではない任天堂の顔であるマリオの映画。

今回のおはなしは、マリオがクッパに捕えられた弟のルイージを助けに行くもの。
ピーチを助けに行くのではない。
ルイージを助けに行く。
兄弟愛にフォーカスしているところがポイントであり、ピーチは今回は戦うヒロインなのだ。

筆者のマリオのプレイ体験は、ファミコン、ゲームボーイシリーズ、64なので、最近の作品はめっきりである。
けれどもゲームをあまり嗜まない人間にもお馴染みの、マリオ、ルイージ、ピーチ、キノピオ、ドンキー、クッパなどの面々が画面いっぱいに活躍してくれて、それだけで嬉しくなってくるというものだった。
みんながテレビ画面より大きいスクリーンに映っている。これからどんな冒険が始まるんだろう。ーーーー

個人的に良かったポイントはピーチの衣装チェンジ。
さすがヒロイン。わかってるぜ。
かわいいヒロインにはいろんなお衣装を着せましょうね。

一緒に行ったゲーマーの友達は「長年マリオをやってきた人間にはにやにやポイントが山のようにあった、配信が来たらスロー再生して観たい」とのこと。

いいな。筆者もマリオをたくさんプレイしていたら、もっとたくさんたのしめたのかもしれない。

映画館で観たメリットとしては、大スクリーンで贅沢なCGを観れたこともそうだけど、長年プレイしてきた大人ゲーマーはもとより、こどもたちが大はしゃぎで映画をたのしんでいるのを垣間見れたこと。

たしかに映画館でのマナーは大切だ。
けれどもこの映画は、こどもも大人も、ワッ!としたり、ハッ!としたり、時には笑いながら見るのが大正解のように思う。

もしかしたらこれがあのこどもたちの人生初の映画館体験なのかもしれないとおもうと、いい作品に巡り会えて良かったね、という気持ちになった。

クリード/過去の逆襲

お前はロッキーシリーズを観たことがあるか?
今すぐ観ろ!
男と男の殴り合いに雄叫びを上げろッッッ!!!

ワイルド・スピード/ファイヤーブースト

おもしろくないわけがないんだ!
お前もワイスピサーガを全部観て最新作に追いつけッッッ!
単体でも観られるけど、今は亡き主人公がいた頃の初期シリーズも知っておいてもらえると、非常にうれしく思う。

リトル・マーメイド

アラン・メンケンの楽曲が大好きで観に行った。
今更もう説明不要の、誰もが知ってる人魚姫の物語。

そんな物語にも、映画公開に至るまではかなりの苦難があったらしい。

今回、主人公であるアリエルに抜擢されたのがハリー・ベイリーという歌がめちゃうまな黒人のシンガー/アクターだったのだが、「黒人がアリエルを演じるなんて!!!」ということでネット上が大荒れに荒れていたのだった。
批判するひとの言わんとするところは「色白のキャラクターに黒人をあてるな!うんぬんかんぬん!」というもの。(気になった人は調べてみて欲しい。かなり醜悪な意見が多いので具合悪くなるかもだから気をつけつつ。)

映画の公開前から巻き起こっていたそれらの論争は、情報をシャットアウトしたいほど醜く、ひどく、耐えがたく、眺めていてものすごく心が痛かった。

だから、ただ公式が出してくれる情報だけを信じ、映画の公開を待つことに徹した。
揉め事はこれ以上目にも耳にも入れず、誰の意見もシャットアウトして観に行こうと決めた。

結果、映画の出来は裏切らなかった。

主人公のアリエルを務めたハリーの歌声は最高だった。
この映画のために彼女がいたし、彼女のためにこの映画が作られた。
演技も良かったし、公開前に懸念されていたようなことなんて一つとして無かった。
ハリーはアリエルだった。

そしてアニメ版や、ベースとなった原作の内容を知っていてもいなくても十分たのしめる作りになっていた。

映画の公開に至るまで紆余曲折あった上での、映画の成功。
苦難を乗り越えて栄光を掴むなんて、ハリーは物語の主人公そのものだった。

ここでまた好きな批評家の記事を貼ることをゆるして欲しい。
お時間あったら是非お読みくだされ。


君たちはどう生きるか

駿とは決別した。
でももし次回作が作られることがあったら観に行ってしまうと思う。
本当にくやしい。

映像はもう約束されたかのようにうつくしい。
それは保証できる。
ストーリーはこれまでのポピュラーな作品とは異なり、かなり、向き不向きがあるように思う。

トランスフォーマー/ビースト覚醒

最高!最高!最高!最高!

今まで公開されてきた作品は本編/スピンオフともにいくつかあるけど、今回はそんなトランスフォーマーシリーズの本編の最新作。
今までの仕切り直しの物語と言っても過言ではないので、のっかかるなら今という気もする。
(ちなみに筆者が好きなスピンオフはバンブルビー)

何作もあると聞くと話についていけないかも、世界観がわからないかも、と敬遠されてしまうかもしれない。
でもビースト覚醒は歴代の作品を観てなくてもたのしめるようになっている。

オートボットという宇宙からやってきた機械生命体が、トラックやバイクにトランスフォームしたり、人間と友情を育んだり、同じく宇宙から来た敵と戦争したりする物語。
これだけ頭に入っていれば大丈夫(本当かな)。

加えて今回は乗り物のオートボットだけじゃなく、動物にトランスフォームするオートボットが出てくる。
かつて彼等の星を滅ぼした強大な敵が今度は地球に牙を向き、消滅の危機に瀕するのだが、二つの種と人間が力を合わせて立ち向かうストーリーに仕上がっている。

まあまあここまでは王道かと思う。
そしてなにより期待されるのは、オートボットと人間の友情だろう。
みんな好きだろ、機械生命体と人間の若者が力を合わせて戦うやつ。もちろん今回もそれがあるのだ。
詳しくはどうしても本編を見て欲しいのだが、とにかくポルシェから変形するミラージュというオートボットと、ノアといううだつの上がらない青年のバディがハチャメチャに熱い。筆者もポルシェが欲しくなった。

ところで、今回は字幕と吹き替えとで迷って、吹き替えで観た。
というのも、ビースト覚醒がこどもの頃に観たCGアニメのビーストウォーズを一部参照しており、当時観ていたアニメの声優さんのセリフ合戦がたのしかった記憶があるため、吹き替えの方をチョイスした。

人間の主人公の声はセクゾの中島健人。
人間のヒロインの声は仲里依紗。
このふたりが吹き替え声優をしている作品を他に知らなかったので、果たしてキャラと演技が合うのだろうかと半分博打で観に行った。

良かった。
ストーリーも良かったけど、なにより、主役2人の吹き替えがめちゃくちゃにうまい。

もちろん普段から演じることを生業としている人たちだから、演技ができないわけではないと思っていたけど、生身で演じることと声当てをすることが異なる身体の使い方をすることは容易に想像できる。
相当訓練したのだろうと思う。

他の声優の面々はその道のプロであるため、上手い下手どうこうということは話の俎上に上がることはない。ただ、当時観ていたCGアニメと同じキャストを起用してくれたことに、懐かしさでいっぱいになった。

TFシリーズを知ってる人も知らない人も、当時アニメを観ていた人も観てない人も、とりあえず一回でいいから観て欲しい。たのむ。

マイエレメント

今年観た中で唯一くらいに泣いた。
意外と涙腺がゆるい。

火と水の、相入れなさそうでありつつもうまくやっていく方法をともに探っていく、うつくしいロマンスだ。
現代版ロミジュリのような、ウエストサイドのような。
それらを根底に意識して作られていると思われる。

舞台はニューヨークのように多国籍な都市。
火と水と土と風の人種がいて、それぞれが自分たちの領分を守って暮らしている世界。
普段はほとんど交流をせず、交友関係を持たないようにしている彼等だが、まるで運命かのように火の女の子と水の男の子がボーイ・ミーツ・ガールする。

火と水と聞けばご想像のとおり、火は水に消されそうになるし、水は火で蒸発してしまいそうになる。一度や二度じゃない、多くの場面でしてしまう。
周りから見ても奇異の目で見られるし、女の子は親バレするのを非常に恐れている。一緒に過ごすなら同族がいちばん、他の種族としたしくするな、そういう信条の家で育てられたのだった。

周りの目、社会的な立場、家族の反対などの障壁を乗り越え、紆余曲折あり、ふたりはすれ違いを起こしながらも仲が元通りになるし、それどころかよりもっと親しく関係は発展していく。
ふたりはパートナーになりたいのだ。

この映画で語られているのは、属性が違っても、出自が違っても、普段所属するコミュニティが違っても、そもそもお互い違う存在であるけれども「歩み寄りはできる」ということだ、と筆者は思った。

ここまで書いてみて「ふーん、ディズニーっぽいテーマだな」と思ったが、もしこの映画が安く見えてしまっていたらそれは筆者の筆の力の無さによるところだ。
繰り返しになるが、現代版のウエストサイドストーリーやロミオとジュリエットである要素が多分に含まれているが、当時作られた物語よりはるかにブラッシュアップされている。

過激なシーンも少なく、登場人物たちは皆"エレメント(元素)"として記号化されているため表現もマイルドなので、観る人を選ばないと思う。
友達や家族と観るのにすごくおすすめだ。

SAND LAND

すごくおもしろかった。
願わくばもう一度観に行きたかった。

映画館でバイトしていた友人いわく「ガラガラだった」らしいけど、自分はとても好きだった。

内容は、人外の男の子(悪魔/長生き)とお爺ちゃん(元軍人/凄腕)がチームを組んで、水も枯れ果てた砂漠の地で水源を求めて旅するロードムービー。

原作が鳥山明の同名漫画なのでおもしろくないわけがないんだけど(先入観とも言う)、それがもう上手く、砂塵を使った戦場のタクティカル的なギミックやら、誰もが好きになってしまうようなメカニックやら、悪党を蹴散らすアクションシーンやらがもりもりで、観ていて飽きることがなかった。

おねがいだから夏休みとか冬休みとか、ちびっ子が家でヒマしてる時間に地上波で流して欲しい。たのむ。
きっとわくわくして、画面の前から離れなられなくなるはずだから。

Barbie バービー

最高!最高!!最高!!!最高!!!!

でも言葉にできない複雑な感情がありすぎて、ここでつらつらと書くのが憚られる。

多くの女性にはかなり賛同を得られるストーリーな気がするし、少なくない男性は怒りそうな描写が多々あるので、ここに載せるのもちょっと迷った。
とりあえずばすき民の懐の深さにゆだねようと思う。

女の子のために作られたお人形であるバービーたち(いろいろなパターンがある)の世界を描いた作品であるこの映画は、基本的に作中での男女の権力は逆転している。
政治で権力を握るのもバービー(女性)、スポーツで活躍をするのもバービー(女性)、力仕事をするのもバービー(女性)。
もちろんバービーの世界にも異性の恋人役の男性や父親役などの男性キャラクターはいるが、それはもうおそろしく活躍しない。ただそこにいるだけ。飾りのようなもの。

今日も今日とてバービーランドで活躍しまくるバービーたち。

ところがバービーがある事件きっかけによりバービーの世界から人間の世界へと足を踏み入れると、そこにはバービー(女性)が活躍する社会ではなく、ケン(バービーの世界では脇役の恋人キャラ)のような男性たちが活躍する社会だった。
なんとかして故郷のバービーランドに帰ろうとしたバービーがツテを見出したのがバービーを製造販売している会社だが、その会社の社長や役員たちも全員ケンのような男性たちばかり。
バイタリティ溢れるわたしたちを作ってるのはわたしたちのようなカッコいい女性のCEO!だとおもっていたバービーはガッカリ。会社は会社で自分たちが売ってる人形が人間になり大パニックに陥る。
そんな折にバービーに救いの手を差し伸べてくれるのがバービーを作った創業者の女性(概念)。
そこでの対話が個人的にもうかなり好きなので観てみて欲しい。しかしそのシーンに至るまでで好みがかなり分かれてしまう気がする。

おおまかなあらすじを書いてみてわかったけど、かなり自分のフィルターマシマシな気がしている。
正しいあらすじは公式HPを見てもらうとして、自分にとってこの映画の何が良かったのか、どういうところが好きだったのかと問われると、しかし上手く言葉が出てこない。どうしたものだろう。全部良かったのだ。
強いて言うなら女性の生存の肯定かもしれない。

初期のバービーはキューティーなブロンドで、おめめパチパチで、ナイスバディで、お洋服も可愛くて、誰もが憧れる白人の女の子を手のひらサイズにしたものだった。
それが時代が進むとともに、アフリカン・アメリカン、ヒスパニック、アジア系などの多様な人種が作られたり、いわゆる若いガールズだけではなく、こども、おとな、老齢のひと、など年齢も幅広く作られるようになった。
彼女たちはバービー世界で様々な仕事や役割を持ち、「(今の/かつての)女の子」は何に憧れても良いし憧れるだけじゃなくて何にでもなれる、ことを鼓舞する存在として世界中で販売されるに至った。
ものすごくざっくりとした解説だけど、これだけで女性をエンパワメントするおもちゃであることはお分かりいただけるかと思う。

実はこの映画にはバービーの他にも主役がいて、それが昔バービーで遊んでいた母娘なのだが、彼女たちは親子関係があまり上手くいっていないし、片親であり社会的にも不安定だ。
今まさに、バービーのパワフルさが必要とされている人たちである。

「一緒にバービーで遊んでいた頃はあんなに娘と仲良しだったのに今はそうではない、反抗期?あの頃の思い出はどこへ行ってしまったんだろう、ツラい、仕事だってもっと上手くやれるはずなのにそうじゃない、どうしよう」
「ママは何もわかってくれない、もうバービーで遊んでいた頃のわたしたちじゃないし、わたしだって大学生になればそのうち家を出て行くし、子離れして欲しい」

そんなツラい気持ちを抱える母娘のもとにあらわれたのが、バービーランドからやって来た、昔遊んでいたバービーその人だったのだ。
彼女はまさしく母娘に呼ばれたと言える。

バービーは最終的に母と娘にポジティブな親子関係の再構築を促し、これからもこの2人と家族であろうと人間になる(実際に産婦人科に身体を診てもらいに行く描写がある)。

願わくばその後の生活まで垣間見せてくれると嬉しいな、というところで映画は終わるが、上映後は非常に満足感で満たされ、明日も頑張ろうという気持ちにさせてくれる。自分にとってはそんな映画だった。

ここでまた好きな批評家の記事のリンク貼っておく。
めちゃくちゃおろしろいので読んでくれ。
できれば映画を観てから。
すごく笑えるので。


グランツーリスモ

ゲーマーでなくても一度は聞いたことのあるタイトルかと思う。
今回は同タイトルのドライビングゲームをベースに実写映画化したもの。

ところで筆者は免許を持ってない。
車の運転はできない。

しかしカーレースを見るのは比較的好きであるし、アクション作品に出てくるカーチェイスは好きだし、以前観た「フォード&フェラーリ」の映画もたいへんな好みだった。
それに、家庭用ゲーム機版で遊んだことはなかったが、ゲームセンターでは少しばかりプレイをたのしんだこともあった。

とびきりの車好きというわけではない。
だけどこの映画をたのしめる素養はいくらか持っている。
そう踏んで映画館へ向かった。
やっぱり良かった。

この映画では、主人公の青年がただのドライビングゲームのいちプレイヤーから本物のカーレーサーになるまでを描いている。
最近はeスポーツとしてのグランツーリスモが盛んだったりするが、これは画面の前で競うのではなく、実際のレーシングカーに乗り込みレース場を爆走する。
一見すると荒唐無稽に思われるかも知れない。
しかし驚くべきことに実話をもとに作られている。
現代版のシンデレラストーリーと言えるかもしれない。

その青年が出世するまでに、養成所で同じく選抜されてきた仲間たちと切磋琢磨する様子であるとか、師匠のようなもとプロのコーチの指導を仰ぐ熱血な指導シーンなど、見どころは色々とあるが、肝心のレースのシーン、これがもう最高。
絶対に大スクリーンで見た方がいい。
うなるエンジン音、高速を感じられるほどの疾走感、見ているうちに画面の中にのめり込み主人公とスピードを共有する感覚。
筆者はIMAXで“体感”してしまっているので、今後配信された時に家庭のテレビ画面で見ることでは満足出来ないかもしれない。

もし再上映することがあれば、絶対に劇場で観て欲しい映画。

タートルズ

おもしろかった!

幼い頃にめちゃくちゃヤバいケミカルな液体を浴びてしまったカメのこども4匹が、育ての親であるドブネズミとともに、ニューヨークの街を守ったり守らなかったりしながら活躍するアニメーション。

元は人気のアメコミだが、これまでに何度もアニメ化されていて、日本でも放映されている。筆者はこどもの頃にすこしだけ見た覚えがあった。

今回は舞台を現代のニューヨークに合わせ、高校生になった15歳のカメたちが、高校に行きたがったり、街のカルチャーを満喫したがったり、他のティーンたちと同じく恋にうつつを抜かしたがったりする。
カメながらスマホも使えばSNSもたのしむし、夜な夜な家の地下下水道を抜け出して、ニューヨークの街に繰り出したりする。

現代ニューヨークが舞台なので、使われる音楽はポップでエモくてキャッチーだし、絵柄は最新のCGを使いつつオシャでイケてる手描き風に見せてる技術がヤバすぎてたまげた。
(日本のスタジオで、これと同等の技術でアニメーションを作れるとことって、あるのだろうか)

ところどころ挟まれるニッチでナードな部分や流行りものやミームがわかるとなお笑える。
自分が観測した限りだと、進撃ファンとかBTSファンとかヒロアカファンとかは、ところどころでニヤッとするとおもう。

映画館で見たのも面白かったけど、これからの季節、ピザやコーラを用意しながら自宅で友達とワイワイ観るのにもすごくおすすめ。

ガールズ&パンツァー 最終章第4話

テレビシリーズ、劇場版、最終章が1,2,3ときて、今回はその第4話(第4話?)。

それってOVAじゃないの?
そもそも映画なの?

映画である。
テレビシリーズから十年続くアニメの、最新作。

ていうかガルパンて何?

簡単に説明すると、女の子たちが戦車のチームを作り、他校と戦い、試合でトップを目指す物語。

美少女アニメかと言われると、いや違うこのアニメの醍醐味はそういうことだけじゃないんだ、と言いたいところだけど、もちろん女の子のデザインは可愛い。

そして大事なのは、戦車を使った「戦争」ではなく、戦車を駆使した「競技」であるということ。
死人は出ないので、安心して欲しい。
街が破壊されたりもするが、保険で直るのでそこも安心して欲しい。
この世界では花道や茶道のように、好んで芸事を身につけるように戦車道が存在しているのだ。
決して人殺しをするために存在しているわけではないことを、この作品を楽しむ際には念頭に置いてくれるとありがたい。

対戦する各学校は第二次世界大戦の主要国をモチーフにしているから擬似戦争とも捉えかねられないんだけど、そこは、各国の戦車の特徴を生かした戦い方を演出するためのわかりやすいチーム分けだと思ってくれると理解が早くて助かる。

(そういえば、第4章からのレビューって、何を書けばいいんだろう?...)

とにかく!
戦車の走行音や砲弾が放たれる音を劇場の爆音で聴く気持ちよさ、戦車が地を駆け野を走る画面のダイナミックさ、そして少女たちが知力体力を注ぎタクティカルな戦いを見せる様を、是非劇場で知って欲しい。
たぶんマニアな映画館とかがまだ上映してるし、4DXもやってるはず。

アニメシリーズから全部追いかける気力体力のある人も、そうでない人も、ドンぱちアクションがお好きならおすすめの作品。

ザ・クリエイター/創造者


世間ではすごく評判が良かったらしい映画。
最初に言ってしまうと、すごく合わなくて、今でも自分に合わなかった理由を知りたいくらい。

近未来。人間とAI搭載ロボットの戦争で、西洋世界が東西に分かれ、アジアっぽいところが戦場になる。
そんななか全てを滅ぼす能力を搭載された子供型のAIロボットが生み出されるのだが、彼女を破壊されるよう命じられた元特殊部隊の男が、ある理由から彼女とともに彼女を創造したクリエイターを探す旅に出るというもの。

まず、全然創造主じゃないし(女の出産信仰やめろ)、アジア圏のカルチャーを神秘的としておもしろおかしく扱うのをやめた方が良いし(何年代に生きてんだ?)、SF表現としてすごく古いし(こんなの90年代でやめとけ)、ただのベトナム戦争じゃん(やめろやめろやめろ)てな感じだったので合わなかったのかも、と思っている。

AIロボットものと聞いて、なんとなく自分の好みそうだな、と思っていた。
でもまあ、映画を何本か観れば合わない作品も当然出てくる。

なのでもうこの話はやめておく。

ゴジラ-1.0


第二次世界大戦時に特攻隊員だった戦争帰りのPTSD男(あえてこの俗な言い回しをさせてください)が、復興により平和になったかのように思えた日本(東京)に襲来したゴジラに立ち向かい、自身の戦争を清算する話。

山﨑隆監督作品をちゃんと観るのは、ジュブナイルとリターナーぶりなので(その他の作品は記憶から消し飛んでいる)、期待半分こわさ半分で観に行った。

めちゃくちゃに良かった。
シンゴジの100倍おもしろかった。

・ゴジラがゴジラとして、おそろしいということ。
登場してまず戦争で疲弊し切った軍人たちに追い討ちをかけるかのように、人間を捕獲してぶん投げて潰す。もちろん慈悲はないし、せっかく生き延びた軍人の命も助からない。上陸した島は荒れ果て、主人公ともう1人しか生き残らない。しかしこの時はまだ比較的小さいので被害はそこまでではない。
・再登場してさらに巨大化した際には復興の象徴である銀座をめちゃくちゃに破壊してグラウンドゼロのように更地にする。せっかく建て直したビルも、敷いた鉄道も、燃えやすい木造の民家も、力の限り、ゴジラのおもむくままに破壊し尽くす。すごく最高。とにかく人間などという矮小な生物には微塵の情も掛けることなく、巨大怪獣/破壊の神としての責務を全うしている。お前は人間の文明文化を破壊してナンボ!という気持ちにさせてくれる。ものすごく最高。
・あと言うまでもなくゴジラの造形がめちゃくちゃカッコいい。日本だけじゃなくてどこに出しても恥ずかしくないKAIJU。ハリウッドで暴れてくれることにも期待大(実際に評判は良いらしい)。山崎監督のスケッチをもとにしてグラフィックが組まれていて、西武園ゆうえんちのゴジラ・ザ・ライドというアトラクションで使用されていたものをブラッシュアップして描かれたらしい(パンフ談)。
・戦争帰りのPTSD男(もちろん創作上の)に抱く哀れみや情けを掛ける気持ちからしか味わえないものがある。これがなんなのかはうまく言葉にできないけど、人間の加虐心や庇護欲や同情を全て引き受けてくれる主人公が神木くんで本当に良かったという印象を受ける。

あんまり頂けないかも、と思ったことには、ヒロインは冷蔵庫女だし、結局は海軍の成れの果ての男どもが集まって自己満足的に脅威(ゴジラ≒戦争)にリベンジするマチズモ的な側面が大きいし、反戦映画かと言われると、そうかなあ、というところ。

だけど筆者はゴジラが画面いっぱいに暴れまわってるだけでもう嬉しいので、そこまでは気にならなかった。
ゴジラがゴジラとして、破壊の神として存在している、それがゴジラの映画の全てであるのだ。

あと、戦後の血の繋がらない人間が寄り合ってなんとか一緒に生きていこうとする家族は昔ながらの味付けって感じだったけど、なんか良かった。擬似家族最高。

まだ公開されてるので、是非観に行こう!

以下に紹介する批評は割と辛口であり、わたしがゴジラ映画に萌えたポイントとはかなり異なる指摘をされているのだが、この批評が好きなのでリンクを貼る。


鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎


現在絶賛公開中!
何も言えない!今すぐ観に行こう!
できればSNSで考察などに触れてしまう前に!

鬼太郎と聞くとこども向けアニメーションなのかとおもいきや、実態はPG12。
※PG12:12歳以下には保護者等の助言・指導が必要
こどもにたずねられて返答に困るシーンやセリフや表現が多々ある。

それもそのはず、内容は犬神家の一族と八つ墓村と妖怪大戦争を足して足して足したような感じの世界観の、ホラーサスペンスアクション因習村(あまり良くない言葉だけど、あえてこの言い方をさせてください)映画。
ちまたでは、横溝正史5割、京極夏彦5割、あわせて10割、そしてその他もろもろとも言われているほどだ(盛ってます)。

いやそもそも、宣伝の時点であまりこども向けの印象はなかったような気がするし、本当に低年齢層のこども向けならきっと観に行ってなかったと思われる。

そんなだから誰もが知ってるアニメの鬼太郎よりだいぶ過激な感じに、尋常じゃない血飛沫は飛ぶわ、ばんばん死人は出るわ、妖怪はいつもの100倍こわいわ、舞台になる大御屋敷のしきたりがそれはもうおどろおどろしいわ、家族間の目を瞑りたくなるようなあられもない暴力はあるわ、という感じだし、かと思えば某呪術廻戦みたいなバチバチのキメキメなバトルアクションもある。

ところで肝心の登場人物だが、タイトルに鬼太郎と入っているにも関わらず、鬼太郎は最初と最後に登場する程度でほとんど画面に現れない。
それもそのはず、これはまだ鬼太郎が生まれる前に起こった出来事がメインのストーリーになっているのだ。

では誰が主役なのか。それは親世代だ。
鬼太郎の父、つまるところまだ肉体があった頃の目玉のおやじが出てくる。あだ名をゲゲ郎と言う。
そしてもうひとり肝心な登場人物がいる。先に紹介したゴジラマイナスワン同様、PTSDに悩まされている戦争帰りの水木という壮年男性が登場するのだが、彼が仕事のために舞台となる村に赴いて、この映画の物語は発展していく。

このふたり。最初こそお互いに相入れなさを感じてはいるものの、お互いの目的を理解し合い、行動を共にするようになり、やがて酒を酌み交わすまでの仲となる。

この映画の良さは、僻地の村を牛耳る大御屋敷の成り立ちからくるおどろおどろしいホラーな感じの他、出自の異なる二人組(幽霊族と人間)が田舎の奇怪な事件に挑むバディ物としてもたのしめるところにある。
このふたりが出会わなければ、事件が解決することも、鬼太郎が生まれることもなかったのだ。

最後は、何でこんなに悲しいんだ、と観客に思わせるような放心状態に包まれてしまうところで終わってしまう。しかしどうか最後まで席を立たないで欲しい。
水木とゲゲ郎が繋いだ物語の先を少しだけ垣間見ることができるから。

いちばんわかりやすいざっくりあらすじはこちら。

ノートに人様のノートを貼る暴挙もする。
小説家の方のレビューなので読みやすい。

こちらのコラムはタバコから水木とゲゲ郎を紐解いていこうというもの。
とてもおもしろかったので読んでくれ。

この映画のベースには「墓場鬼太郎」という鬼太郎のプロトタイプ作品と、鬼太郎シリーズ第6期があるという。
リンクは貼らないができればぜひそちらも併せてチェックして頂ければ、作品への没入感もひとしおというものだ。

とにかく、映画が上映しているあいだに劇場に急げ。
できればなるべくオタクたちのうわごとをたくさん目にする前に。すでに巷には感想や二次創作が溢れかえってる。何も観なかったことにして急いで欲しい。

おもしろかった。
芸人のビートたけしはよくわからないけど、北野武の映画はかなり好き。

男が男をだまし、たぶらかし、コケにし、殺し合う。
男が男のために切り捨て合い、血を流し、死んでいく。本能寺の変ベースの時代劇。
武将たちは真面目に命と権力の駆け引きをしてるけど、側から見たら馬鹿馬鹿しいまでの狐狸の化かし合い。

タイトルのとおり首は狩られるし、戦国時代が舞台だからそれなりの血飛沫もあるし、常にそのへんに死体が転がっているけど、大丈夫なひとにはとてもおすすめ。

あと、嗜み/文化としての男色の表現があるのだが、どいつがどいつを気に入ってて、どいつがどいつを亡きものにしたがってるのかなどの人間関係の相関図がわかってくると、話が抜群に面白くなる。

この映画に出てくるのはほとんどが男で、女は添え物程度なのだが、出世欲ごますり足の引っ張り合いなど、性別を問わない悪い意味での社会の縮図が描かれている。
そう聞くと、舞台は時代劇だけれども意外と身近なテーマであるかもしれないと思えてくるから不思議だ。

ところで、筆者は西島秀俊が大好きなのだが、この映画は俳優のメンツの面でもかなり満足度が高かった。
全員が全員主役を張れるようなキャストの中で、監督もしているのに役者もこなしている北野のバイタリティもすごかった。残りの人生他何もしなくていいから映画だけ作ってて欲しい。

ちなみに筆者が他に好きな北野・西島映画は「Dolls」。

こちらも面白かった批評を貼っておく。
ゲラゲラ笑ってしまうので、なるべく人目につかないところで頼む。


窓ぎわのトットちゃん

誰もが知る黒柳徹子の同名小説ベースのアニメーション。
お恥ずかしながら筆者は原作を読んだことがないのだが、読んでなくてもたぶん大丈夫かと思われる。

良かった。
泣いていいのかわからなかったけど、自然と顔面がボドボドになってしまった。
全世界のこども、すこやかであれ、と願わずにはいられない。

いわゆる普通の学校で普通に過ごすことができず先生たちから追い出されたトットちゃん(黒柳徹子)が行き着くのは、トモエ学園という、いろいろな事情を抱えた子たちを受け入れている学校だった。
そこではいろんな子たちといろんな経験をしながらトットちゃんはスクスクと成長していくのだが、学年が上がるごとに戦火の影が忍び寄り、たのしかった自由が丘での生活を脅かしていく。

絵本みたいな絵柄が可愛いし、確かに序盤はいかにもいいとこのお嬢さんの生活といった感じでほのぼのとした雰囲気のお話が進んでいくが、あの時代の日本が着実に戦争に侵食されていく描写が映像の随所にあり、そこは見ていてたいへん厳しかった。
トットちゃんの、こどもたちの日常が瓦解していくことがツラかった。

あと、まあまあの宣伝詐欺。
SNSが無ければ観に行かれなかった類の映画。

だって、あんなに可愛くて爛漫で元気いっぱいのこども向け作品感を全面に押し出しといて、戦争・文化的退廃・死、みたいな鬱三拍子をお出しされるとは思わず、かなりうろたえた。
筆者が映画館に行った時には親子連れで来ていたファミリー層がかなり見受けられたけど、どんな受け止め方をしたんだろうか。

だけどこどものみずみずしさを描いた近年のアニメーションのなかでは群を抜いていると思われるので、お時間と良好な精神状態があったなら、ぜひ観てみて欲しいと思う。

余談だが、黒柳徹子がかなり細かいところまで監修しているらしいし、ナレーションもしているので、存命中にこんな作品が作られるってすごいことだな、と感心した。

おわりに

ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。

もっと色々パンフレットやウェブの資料などを読みこんで正確なことを書きたかった気持ちと、一次資料(映画)を観た印象とうろ覚えの記憶だけで書きたかった気持ちと両方ありました。

(だってさ、映画の批評家でも無ければ映画ライターでも無いんだからさ、むちゃくちゃ書いたっていいじゃん、それはそれとして、なるべくちゃんとは書きたいが)

個人的な感情だけで綴っているのでずいぶんと公平性に欠け、また感想とも言いがたいぼやきになってしまいましたが、お見逃し頂ければと思います。

今年は単館系をあんまり観に行かれなかったのが心残りです。
おすすめがあれば教えてください。

この記事で気になった作品については、今はいろいろと配信もありますし、ネット記事なども膨大にあると思うので、探してみてもおもしろいかとおもいます。

また、配信でも良質な作品がたくさん追加されているので、それもチェックしていきたいです。

来年も時間とお金と体力の許す限り、もっとたくさんの映画を観られることを願って。

(今観たいもの:ナポレオン、ウォンカ、ウィッシュ、キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンはもう終わっちゃっているかなあ)


∞・∞・∞・∞・∞


その他すてきなアドカレはこちら。

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