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青海三丁目 地先の肖像「再び開かれる、か」

2021.09.29 | 森藤

五輪が終わったあとの埋立地に立つ。
夜風は少し温度が下がり、次の季節への変化を感じさせた。

五輪直後だったがすでに景色は変化していた。
いつものようにテレポート側からトンネルを潜って島にはいってきたのだが最初の交差点を左折する際に見通しがよいことに気づく。
内側埋立地と外側埋立地の間に横たわる海水路(ボートとカヌーの大会会場)に面してそびえたっていた白壁が、消失していたのだ。
水が歩道から見えるようになっており、内側と外側を繋ぐ橋も徒歩でもわたれるようになっていた。

こんなにはやく、五輪の「お片付け」が進むとは、拍子抜けだった。
この五輪までは1年の延期も含めて準備が長かったのもその対比を引き立たせたのかもしれないのだが。

海の森公園へ向かう通路の白壁バリケードもまた「お片付け」されていた。
これは再びこの土地が開かれていく兆しなのだろうか。

カエルが鳴いている。かなりの数だ。歩くと暗がりの足元でぴょこぴょこ飛ぶのがみえる。以前とは道が変わっている。さらに盛り土もされたのか丘ができていた。そこを上まで登ると、懐かしい、2年前に見た草むらが眼下に広がっていた。


共に巡った仲間としばし暗闇のなか腰を下ろす。
カエルの鳴き声が反響する。
地面より空のほうが明るく、草むらの端にある水面らしきに映り込み、うっすらとその存在を示している。
草むらの湿り気がズボン越しに伝わってくる。

皆無言であった。

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