共鳴する意志

『香川一区』鑑賞日:3/1(水) ポレポレ東中野

“衆議院議員・小川淳也氏(50歳・当選5期)の初出馬からの17年間を追った『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年公開)は、ドキュメンタリー映画としては異例の観客動員35,000人を超える大ヒットを記録、キネマ旬報ベスト・テンの文化映画第1位を受賞し、NetflixやAmazonプレイムビデオなどで配信され、今なお広がり続けている。

続編への期待が寄せられる中、次作に向けて小川議員への取材を続けていたが、この秋に行われた第49回衆議院議員総選挙に焦点を当てた新作ドキュメンタリー『香川1区』の公開を急遽決定。

本作は『なぜ君…』の続編的位置付けとして、いまや全国最注目といわれる「香川1区」の選挙戦を与野党両陣営、各々の有権者の視点から描き、日本政治の未来を考える一作として世に問いかけたい。”

『なぜ君は総理大臣になれないのか』の続編ということで、期待値高めで席に着いた。

前作でもそうだったように、「政治」をテーマにしている作品を観ると、まず警戒する。それは、恋人や家族などの目の前の人間に対しては、ついつい感情的になり、理性に欠いた判断をしてしまうことが多くあるのと同じように、映画を鑑賞する私は、非常に無防備だからである。

だから、知らない間に自分の無意識をコントロールされないように警戒する。映画の中でも「ドキュメンタリー」という言葉には特に警戒する。それは、自ら「事実」を名乗る者ほど、現実から遠ざかった場所の幻想を移してるように思うからだ。

途中のカメラワークや切り抜き方(例えば、インタビューの時、小川さんが喋る時はしっかりと固定された安定した映像が使われていたのに対して、平井さんのインタビューでは必要以上に表情のクローズアップ、画面の揺れが多かったように思う)で、気になる部分もあった。だが、個人的に私はこの作品を見終わった後に、小川淳也さんという人間が好きになり、その家族や、彼を応援している人々の熱気に圧倒され、素直に説得されてしまったという結果は、否定することはできない。

説得される、とは、真っ直ぐな想いを持ちたいと思うことである。明日を信じて、前を向き、自分自身が強くありたいと願うことだった。

強い想いは、時に邪魔になる。できないことを大きな声で言って、中途半端な希望を持たせることは、時として誰かに迷惑を掛けたり、傷つけたりすることがある。だから、世間では無責任だと言われることもある。それが分かった上で、本当にすべきことと向き合い、その中で自分は何をできるのか、よく考え、行動し、誰かに適切な助けを求めることには、勇気が必要である。

では、勇気はどこから湧いてくるのか。私はこの作品を通して、勇気とは他者との協働の中で生まれてくるものだと感じた。パートナー、子供、友人・・・。最初は小さな一滴が、徐々に共鳴して大きな波になっていく。最初はもちろん無くてはいけない。よく響く、1番初めの一滴が。だがいくらその響きが素晴らしいものであっても、それを受け止める存在(自身の身体に響きを取り入れ、また他の他者へと響きを渡そうとする意志のあるもの)がいなくては、そこで止まってしまう。

この作品には、自分が受けた響きを、ここで止めてはいけないという強い意志を感じられた。私も、響きを受け取った。ここで止めてはいない。



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