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クレヨン


あなた あなた あなた
肌は記憶を結ぶ絶えない水平線で
前髪を乱す無月は静かに船を進める
置いていかないでと擦り寄りると
血の温みがわたしを宥める 
あの星の名を教えてあげるから
いつか見上げてごらん
血脈を愛しく思う不可視線でしょう

樹であったり
蝶であったり
空であったり
わたしは多くを色に当てはめることができ
答えを持っていた
無色で人に寄り添い
無色の笑顔だけを絶やさずに
道の真ん中にいる支えとした

時として声が近すぎると
輪郭があやふやになる
気温を失ってからは声さえ失せ
薄らいでいく灰色めいた太陽の夢に惑う

目覚めは掌の感触
雪道に並ぶ足跡
冷たい岬と瞼を照らす陽
手と手と手を結ぶ
そして今
海沿いの街から離れることなく
三つ目の螺旋を描いている

あなた あなた あなた
わたしは色に当てはめることができず
生きる為の糧の意味を初めて知った

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