音に連れられて
時間の猶予 自然的な経過
フラメンコからハスキーボイスへ
泡 泡沫
パンパンと飛びかけの意識
裸体と吸い殻の山
望んだ覚醒と抗いがちな毛布の温もり
両眼では合わない焦点
ゴーストノートが背を押す
待ちぼうけのナンバーは希望の連鎖
問診 満点超えの違和感
何処へ向かう 何処へ進む
わたしは升目の前では
よく 「わたし」になる
わたしは他所様の前では
よく 「ぼく」になる
わたしは混血の幸福の前では
よく 「おれ」になる
訃報が届き
生涯があと半分だとした時
わたしは高熱
ぼくは微熱
おれは平熱
焦燥と堕落の狭間で
温風が妙に平常心を保とうとする
指揮者は誰?
それは多分 おれ
わたしとぼくは聴衆としての有象無象
たった今
わたしは主旋律
たった今
ぼくはコンマス
たった今
俺は聴衆
ほら
矛盾だらけの世界で
時間の経過だけが整合性を保つ
拍手にはまだ早い
わたしはエンドロールを見つむ
ぼくはネクタイに叫ぶ
俺は此処に居る
生音への恍惚が今日も在る
俺はタクトに触れた