夫々の土曜日


家の匂いがある
花でもなければ汗でもない
六年が堆積した
生活の酸いも甘いも混ざった匂い
脳は野暮ったく命令し
ヒビが入った隙間に虚ろな苦味を流してくる
だから信用はしていない
だから両胸の
ちょうど中心の生命兆候を信用している
絶えず動く核を覆う無限色の魂
別れが怖かった二十二歳から
出会いに真っ白い涙を流した二十九歳
不安と喜びを纏い新たな地へ旅立つ三十六歳
感情の多くを雪の美しさに学び
生命の力強さを春の愛おしさに学び
十文字の印が刻まれた素晴らしき宿木に座す

もう少しだけ
この匂いを嗅がせてくれ
二日だけ
証をわたしたちのものにしてくれ
軽やかに発つ為の助走と
力の限り踏み切る生気と
手と手と手を繋ぐ愛の塊を此処で型取る
夫々の土曜日
月曜日のさよならから
更に色濃くなったさよならへ

わたしたち    明日発ちます





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