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世界一幸せの国 「デンマーク」 に、幸せはない。

感じるプレゼン.001

10年前、私がデンマークに留学したのは、まさしく幸せの答えを探しかったのだと思う。

前職でユニバーサルデザインを担当し、退職前の2〜3年はユーザビリティデザイングループを率い、多様なユーザーに対する操作性の向上に尽力した。一方で、操作性向上だけがユーザー価値向上につながるとも思えず、少し道を見失っていたようにも思う。

デンマークに暮らしはじめて数ヶ月、デンマーク人は定時には帰宅し、夕食を家族で楽しんでいる様子を幾度も見かけた。夏になれば、日も長くなり、庭で夕食をとる。湿気がない気候のため、外で食事しても蒸し暑くなくとても快適だ。

デンマーク人によれば、親の介護を子どもが行う常識がないという。決して親子の仲が悪いわけではないが、それぞれのライフスタイルを大切にするというのが当たり前になっている。よって介護離職というものがない。

そして、デンマーク人は生涯に5、6回転職するのだという。エンジニアがアーティストになったり、学校の教師がアパレルの商品企画に就職したり、職種も一貫していない。しかも、会社をやめても長期に亘り、前職の給与90%が保証(但し上限はある)されるという。だから安心して職業をかえることができる。

さらに学費は0円である。唯一、全寮制のホイスコーレン(国民学校)のみ有料だが、3食と寮費込で数十万円/年と生活費と同等かそれ以下である。

これ以上の幸せがあるだろうか。

当然、それだけの社会保障を賄うだけの財源も必要だ。所得税70%、消費税15%、加えてデンマークはヨーロッパの中でも"しょっちゅういろんな税金を作っている”と、ありとあらゆるものに税金かけていると揶揄されているくらい財源の確保に余念がないという。

青い鳥症候群

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ある日、デンマーク人に話したことがある。

「それにしてもデンマークいいね。いつも家族で夕食をとり、休日もしっかり休む。それに比べて日本はいつも働きづめだ。加えて、社会保障もしっかりしている」

と言うと、彼らはこう答えた。

「何を言ってるんだよ。そもそも僕が持っているのは日本製カメラだし、日本車だって世界中に広がってるじゃないか。加えて、寿司、天ぷらなど日本の食文化はとても素晴らしい」

と、逆に羨ましがられた。

私とデンマーク人とでは、全く異なる視点で互いを見ていたのである。いわゆる青い鳥症候群で、いつの世も他人の芝生は青く見えるもので、結局のところ幸せというのは、それぞれの価値観で決められるものなのだろう。

そもそも一般的に幸福度の指標には自己満足度が加わる。自分自身が幸せと感じているかどうかだが、日本人は特にこの自己満足度が低い。自分自身を幸せだとはあまり感じていない。一方で、デンマーク人は自己満足度が高い。

イギリスのシンクタンク「New Economics Foundation」がまとめた「 The Happy Planet Index」の「一人当たりのGDPと幸福満足度の相関」をみると、10,000ドルを境に幸福満足度が大きく変動しないことを表している。この指標だけに限っていえば、幸福満足度というのは、経済状況などの一定の条件を満たせば、あとは自分自身の価値観ということになる。

最新の「The Happy Planet Index」によると、世界一幸せな国は、コスタリコのようだ。続いて、メキシコ、コロンビア、バヌアツ、ベトナムと続き、デンマークは32位、日本は58位。

幸せの指標も時代とともに変わるのだ。

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