イマジナリー知人
知人のタルパみたいなのを作る癖がある。
たとえばファミレスでメニューを開くと、前に知人とそうした時にどんな会話をしたかを思い出す。そういうことを続けていると、別のファミレスでメニューを開いても相手が何を選ぶかなんとなく考えてしまう。場合によっては考える前に直感的に架空の相手のセリフが脳に流れ込んでくる気がする。日常のありとあらゆる局面でそんなことを無意識にやってしまう。単なる予測変換の集合だったものが、次第にニューラルネットワークを経た出力に変わっていくような。
頻繁に「○○さんならこう言うんじゃないかな」といった発言をしているが、実際イマジナリー○○さんににそう言われているのをイタコしている感覚だ。
特定の相手とは限らず、何人もの人間が勝手に出てくる。今親しい人も多いし、高校の友人が高校の時のまま突然姿を表すこともある。高校の頃にミステリが好きな友人がいたのだが、久々にミステリを読んでいたら脳内にあいつが出てきて「いやー、これはいいバカミスだ!!」などと言うので、なんだか懐かしくなった。
星新一の『タロベエの紹介』(『たくさんのタブー』所収)をしばしば思い出す。祖先の霊が他の霊を紹介し、トイレの時間、ぼうっとしている時間、酒を飲んでいる時間などに割り当てて出現させるようになる話だ。主人公の生活が何人もの霊で覆われるオチで終わるが、あのにぎやかさとよく似ている。
相当イメージのしやすい人(あるいはよく意識にのぼる人)だと、時々何かのきっかけで実際の相手と脳内の相手が乖離したときに混乱をもたらす。その結果は、実際の相手への感情を超えて好意や嫌悪を持つといった形で現れる。1人で勝手にぐるぐるして世話ないったらない。定期的な同期を心がけることにしている。
応用として、取り入れようとしたこともある。高校の頃、とても周りに好かれる友人がいた。その鷹揚とした話し方に憧れて、なんとなくたびたび彼のセリフを借りてくることにしてみた。もうごちゃごちゃに混ざっていて、私のものとも彼のものとも言えない形で残っている。そうやってつぎはぎするので口調に一貫性がない。
似たことしてるよ、等ありましたら、こっそりどしどし教えてくださいな!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?