つやさん【創作物語・詩】

駄文を書きます。

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最近の記事

【物語】ドウダンツツジとボク【400字程度】

ボクの町にはあちらこちらにドウダンツツジが植えられている。  春、暖かくなってくると、白い鐘のような花をつけるんだ。 控えめな甘い香りが漂う。 ボクはこの香りが大好きなんだ! 深呼吸する。 息を吐いて、目を閉じる。 春風にドウダンツツジが揺れる。 ほら、よく耳を澄ましてみて。 リンリーンと小さな小さな音色が聴こえるでしょう? ドウダンツツジが小さな音楽を奏でているんだ。 通りすがった薄紫色のシジミチョウが音色に合わせて口笛を吹いていたのを見たよ。 春の淡い青空にドウダンツツジ

    • 【物語】アマガエルさんと虎猫さん【900字程度】

      石畳を雨がてらてらと濡らす。 道の両脇を紫陽花が鮮明に彩る。 灰色の空の下では唯一色彩灯るのは紫陽花だけだった。 いつもの石畳の道を占領して寝転がっている猫達の影もない。 そこへアマガエルが一匹、フキの葉を傘にペタペタと歩いていく。 フキの葉の端には逆さまのてるてる坊主がぶら下がっていた。 アマガエルはご機嫌なようすで、鼻歌を歌いながら散歩を楽しんでいるようだった。 黄色いジャケットのポケットからスマホを取り出すと、紫陽花の上をのんびり行く小さなカタツムリをスマホで写す。 満

      • 【百合物語】苺口紅【500字程度】

        女学生が2人、授業の間の休み時間に校舎のベランダで戯れている。 「ねぇ、貴女の唇、リップか口紅塗ってる?」 「うふふ、何も塗ってないよ」 「でも、とっても綺麗な赤色よ」 「うーん、苺を食べたからかしら?」 「苺を食べると唇が綺麗な赤色になるの?」 「さぁ、どうだろうね」 「まぁ、適当なこと言ったのね。本当は口紅を塗っているのでしょう?」 「校則違反って言いたいのでしょう?風紀委員さん」 「私はそんなに口うるさくないわよ」 「嘘か本当か試してみようか?」 「え?」 肩に手を置く

        • 【詩】秒針の舌打ち

          心のままに 自由に振る舞えたら良いのに。 「~すべき」とか「~しなければ」 と雁字搦めにして、 息をして生きている。 浅い息をして生きている。 ああ、ほら、もう時間に追われている。 秒針が舌打ちしてる。 それに怯えては、急き立てるように、 準備をして、今日を「ちゃんと」生きなくちゃってぐるぐるジレンマ。 いつからこんな風になったんだろう? 朝の光が苦しい。 行きたくないなぁ 面倒臭いなぁ 辛いなぁ の三拍子。 こうしてる間に時間が追いかけてくる。 逃げなくちゃ、急がなくちゃ

        【物語】ドウダンツツジとボク【400字程度】

          【物語】駄天使2【500字程度】

          「ここは…?」 私についてきた天使はキョロキョロと見渡す。 「私の家よ。古いけど、立派でしょ?」 玄関前に立ち、カラカラと戸を開けると、私は大きな声をあげる。 「おばあちゃん!ただいま帰りました!」 すると、奥の方から返事が帰ってきた。 「はーい。お帰りなさい。美音。」 声の主は、白髪の小さなおばあちゃん。ニコニコと愛嬌があって、割烹着を着てでてきた。 「おばあちゃん、今日ね、走っていたら、天使と出会ってね、連れてきたんだけど、良かったかな?」 天使は私の後ろに隠れてもじもじ

          【物語】駄天使2【500字程度】

          【詩】微睡みの中に

          間延びした時間が頭に霞をかける 目を閉じるのも億劫 何時間そうしていただろう 霞の中を、小さな魚影達が泳ぐ それを白鷺がつついている ほーい、ほーい と鳥が鳴いているのか 誰かが呼んでいるのか ねぇ 明日は雨らしいよ ふいに少女の高い声がした 草の芽は光に向かってのびる 私はそれをたくましいと思った ねぇ もうお休みよ 少女の声が耳元で聞こえたから 眠らなくちゃ 秒針が静かに廻る

          【物語】僕の観葉植物【700字程度】

          僕の観葉植物が語りかける。 「今夜は満月かしら?それとも星が瞬く新月かしら?」 彼女はよく喋る観葉植物だ。 僕の妄想の産物ではなくて、実際そうだ。 女性の頭部に赤い瞳、薄い唇をもって、こめかみ当たりから小さな新緑の枝が生えている。セミロングの髪のような根を持っていて、盆栽用の鉢に水苔を敷き詰めて管理している。 「うーん。もうすぐ満月ってところかな?」 僕は窓から覗いて白い月を見上げる。 「月が見たいなら、窓際に連れていくけど?」 僕がそういうと、 「いいえ、私は重いもの。」

          【物語】僕の観葉植物【700字程度】

          【物語】駄天使1【900字程度】

          朝焼けに染まる午前4時30分。 その反対側の空はまだ夜の余韻と影が路地の隅々に隠れていた。 白いランニングシューズが軽快にアスファルトを蹴る。 私は日課のコースを走る。 安定した息でテンポ良くスピードを崩さない。 私は夜の余韻と新鮮で澄んだ朝の空気が好きだ。 前だけを見て走っていると、 「ねぇ!」 不意に声をかけられた…気がした。 「ねぇってば!」 否、頭上から声がする。 ハッとして私は足を止める。 真っ白い天使が、そこには居た。 平和の象徴の白い鳩のような真っ白い翼、朝日に

          【物語】駄天使1【900字程度】

          【物語】グレープサイダー【700字程度】

          憂鬱な朝だ。  朝食の席にはパンにピーナツバター  昨日見た悪夢のような色のグレープサイダー  向かいの席には最愛のテディベアが座っている。  もちろん、「2人分」の朝食を並べて、  僕は僕の分を食べ終え、親指についたピーナツバターを舐めとる。  そして、グレープサイダーを飲み干すと、テディベアの席の朝食分を捨てる。  これは、僕にとって儀式だ。  何度と繰り返す「悪夢」を忘れないための儀式。  彼女はこの5階のマンションから飛び降りて死んだ。 「私を忘れないでね」  とい

          【物語】グレープサイダー【700字程度】