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いやいやと走ったツーリング

僕はバイクを乗る時大抵ひとりだ。
バイクに乗る前、またはバイクに乗りながら何処を走るか考えるのが好きだ。走りながら入ってみたい路地など突発的なルートがえも楽しいからだ。
それが人と走るツーリングになると目的地は決まっているし飛び込みたい路地には飛び込めないし、寄ってみたいと思った店も遠慮してスルーになる。

僕の普段の行動もそうらしい。似たり寄ったりだ。
週末は基本ひとり行動。
せっかくの休日に人に束縛される1日は気が紛れないように感じるのだ。
それなのに今日は初めてツーリングというものを経験した。それもむりやり。。
 
昨日会社のバイク乗りのひとりから
「明日休みですか?バイク乗りますか?」と聞かれ、
「ああ。勿論のるよ。」と答えた。
「あなたのバイクをぜひみたいのでどこかで待ち合わせしませんか?」
思いがけず、
休日の約束が出来てしまった。せっかくの休日にひとつの束縛。。僕の行動を制限してしまう時間。
前からあなたのバイクがみたい、みたいとうるさく言ってたし、しょうがないな。
僕は約束した。

当日。
天気予報に反して 朝は雨。
天気予報を予測して予定を組んだはずなのに。ハズレ。
1日が勿体ないから、僕は朝早くバイクを見せて、そそくさと瞬殺で帰るつもりだった。だって休日だもの。
用を瞬殺で消化して、そこからが僕の時間のはじまり。そういう予定だった。。

06:00に家を出る。
目的地までには雨は止むだろうと思っていた。
目的地に近づくにつれ雨は強くなった。
中心街から田舎の方へ外れて走る。
07:00に目的地に到着。
雨の日のライディングも思ったより、なかなか新鮮で楽しかった。

集合は07:30。雨が止まないので道の駅南郷の、まだ開かない入り口の日差しの下のベンチに座り、持ってきたおにぎり2個をかじりながら時間をつぶす。
屋根にあたる雨の音は心地いい。
心が落ち着く。 
何分か、まったりしていると
沢山荷物を積載したヤマハセローが同じく日差しの下のベンチになかなか止まない雨に見切りを付けて、雨合羽に着替えるために入ってきた。
「どこから走ってきたんだろう」
ちょっと興味を持つ。
僕は時間を持て余してセローの彼の行動をしばらく観察する。彼は雨合羽に素早く着替えると雨に濡れながら自販機の前に行き、暖かい飲み物を買った。
「寒いのかな」
彼は暖かい飲み物を買ったが飲まないで懐に入れた。
「ホッカイロがわりかな。やはり寒いのかな」
僕らは言葉を交わすこともなくお互いのバイク所持者として何か親しい親近感のようなものを感じ合う。
距離感が他人とは違ったから。
セローの彼の行動を観察して約10分。セローの彼はエンジンをかけ直ぐに一速にギアを入れると一速の持て余す限りの力を使い駐車場内を横切り走り去っていった。
「あの荷物の積載からいって長距離だな」
ちょっと彼の今日の時間の過ごし方を想像して羨ましく思った。彼は彼でどんなバイク休日を探すのだろうか。

「待っている間に近隣のまだ開いてない図書館周りを散策」
「待っている間に近隣のお洒落な図書館で記念撮影」



僕も雨にあたったせいか寒くなりセローの彼に続き、暖かい飲み物を買う。5月の自販機は暖かい飲み物があまり無い。セローの彼は何を選択したのだろう。
いつもは飲まない砂糖入りの紅茶を選び、飲み込む。
だんだんと集合時間だ。
 
セロー以外のバイクの太い排気音が響いたと思ったら僕のすぐ横にバイクを停めた若者がいた。
「あれっ?」
同じ会社に所属しているK君だ。
ニヤニヤして僕の驚いた顔を覗き込む。
そしてすぐ何十秒後にはもう一台。これまた太いマフラー音をわざとらしく鳴らして走ってくるバイクがこれまた僕らの隣に並べて停まった。
「これは、どーゆーこと!?」
ヘルメットを脱ぐと約束したS君が顔を出す。
僕以外の二人はニヤニヤと僕の驚いた顔を見て可笑しく笑い込む。
Sが言う。「さぁ行きましょうか。Yさん!」

はめられた、、
最初からS君は僕をツーリングに巻きこむつもりで誘ってきていた。それも2人だけじゃなく3人で。

「まさかの3台ツーリング」

さぁどこまで走りましょうか。S君が張り切る。
K君が言う。「湖下の自販機でコーヒー飲んで戻ってくるっ。てのはどう?」
全く土地勘のない僕はただ会話を眺めていた。
3人でのツーリングはネタが湖下コースしか無かった為即決まり、湖下へと向かうことになった。
僕は3人のいちばん後ろ。先頭はS君。続いてK君。の順番だ。こうやって走ってみると先頭のS君の姿は見づらくK君の存在のみを感じつつ後ろをついていく。
バイクの後ろを走る事自体あまりなかった。はじめてかも。。
ガソリンが燃焼する匂い。
耳元を瞬音で過ぎ去るマフラー音。
はじめて通る山道。
緑の匂いと次に待ち受けるカーブの予想つかないドキドキ感。
僕にはインカムがない。前を走る2人はどんな会話をしているんだろう。
信号がない景色に見惚れる。
田んぼには水が張られトラクターも2台ぐらい追い越した。6月は田植えの時期でもある。
空も青く雲ひとつない。
今年の田植えは1週間ぐらい早い。
段々と夏だ。
深緑の夏。
草花の育つスピードは早い。
そう、このバイクの疾走感のように。。

”あれれ「なんだろ。結構楽しい。」
楽しいじゃんっ。

大型のバイクは僕だけだが
田舎の林道を走るなら400ccぐらいの方が楽しいと思う。
大型サイズは林道のカーブが続く道ならせいぜいギアは①〜②速。直線でたまに③速入るかな。ぐらい。
それに比べ400ccぐらいのバイクなら①〜④速まで入れて楽しめる。
車もそうだけど、バイクにもそれぞれ用途がある。
スピードを欲するのか、どんな路面も走れるのがいいのか、長距離を走らすツーリング向けがいいのか、それともカスタムして皆んなに見せびらかす街乗り仕様にするのか。。色々選択肢はある。
自分の理想のスタイルは?
僕にはこだわりはあるのだろうか。
考えたこともなかった。、
今はただ長距離に向かう勇気もないし。
山道は走ってみたいがリスクも大きい(テクニックやバイクトラブル、携帯は繋がらない。など)。
せいぜい家から30キロ範囲を日帰りで明るいうちに帰ってくるぐらいのハンドリングだろう。

そう考えながらK君の後ろを走って着いていくと30分後には目的地の自販機へと着いた。
あっという間の30分。
バイクを降りて各自自販機でコーヒーを買う。
僕もしばらくはコーヒーを控えていたが仲間意識を同調させたいのか、コーヒー飲めなくてね。と説明をするのが面倒なのか、直ぐにコーヒーのボタンを選択。
久しぶりのコーヒーの味はとても苦く不味く感じた。

「それにしてもS君。こういうツーリングの時は先頭が気を使うんじゃない?信号のタイミングや後続車の様子を定期的に確認しなきゃならない。」
S君は答える。
「それはYさんの為にしょーもない事ですから、何とも思わないですよー。それよりYさん。早くインカム買って下さいよー。そうすりゃあ迷子になんだってなっても通信出来てラクなんですからぁ。」
と言う。
押し売りかよ。S。
Sはバイクを走らせたテンションからか、いつもより僕に対してSモードだ。歳の差11もある?のに。

短い冷たい缶コーヒーを飲み干すと、よくあるバイカーの光景あるある‥。3台のバイクを3人で見合い、お互いのバイクを見た第一印象を言い合う。
「なんで白いシートにしたのさぁ。ヤンキー臭い。」
「ヘッドライト黄色。^_^流行ってるっちゃ流行ってるけどなぁ。」
「これで400cc?タンクでかっ。両脚挟むとガニ股になる?」
「ビーエムの水平エンジン面白いなぁ。エキパイの取り回しとか、やっぱ外車っぽいですねぇ。」
「このバイクの後姿、尻上がりでカッコいいね。えっマフラー変えたの?だから音デカイんだ。えっ車検通らないの?自分で替えたんだ。やるねぇ」‥てなもんだ。

缶コーヒーを飲み干し3人の会話もひと回りするとバイクを欲するようにバイクを走らせたくなる。
3人はバイクに乗り込む。
3人はほぼ同時にエンジンをかける。
2人は調子を上げ
スピードを上げた。
僕もアクセルを回す。
10キロぐらい走ったところ
ふと、
警察署だ。
60キロ制限。
彼らは何食わず70キロで警察署をスルー。
僕はしっかり減速し法定速度で警察署をスルー。
あとで2人に聞いた。
「警察署前完全に警察眼中に無かっただろう」
2人:「警察署?あぁ ありましたっけ?」
ときたもんだ。
僕は大型免許取得後まだ1年経ってないから捕まりたくない。1年経過しないうちに捕まる時やっかいなのだ。再度運転講習と机上講習を受けるはめになる。
面倒くさいのだ。
さすがにスピード違反まで彼らのペースに合わせることは無い。ここはマイペースでオッケー。
かなり差をつけられて警察署を通過して2キロぐらいはほぼ1人ライドだった。
次の信号で彼らは赤色で止まっていて
ちょうど僕も合流した。
彼らは遅いぞ、Yさん。という顔をしていた。
まあこれが僕のライディングだぜぃ。と睨んでやった。

せっかくここまできたのだから。と帰り道に軽米町のハイキューで有名な生素麺屋に寄ることになった。
漫画(アニメ)ハイキューを知ってる人に言わせればそこは聖地のひとつだという。なにせ主人公の実家に設定されているほどの素麺屋なのだから。
生素麺?食べたことある?
素麺なんて大抵は硬いぼっきれだ。それを茹でてパキパキが柔らかくなる。
でも生素麺は最初から柔らかい。
一体どんな味がするんだろう?
バイクを走らせ15分。
素麺屋に着いた。
思ったより建物が新しい。
レジカウンター付近にハイキュー作者のサインとハイキューのポスターが飾ってあった。
冷蔵庫の中にはうどん、素麺色々あり迷う。。
太さも何種類か揃えてある。
やはり素麺目当てにきたのだから、と素麺にした。
2人前を3人分買った。
年長者の僕は2人の分まで買わされた。
年長者がおごるという風潮は誰が決めたのだろう。
場合によっては年長者の方がお金を待っていない、というケースだってあるのに。。
それにしても、お土産っていいもんだ。
家に帰ってからも楽しかった今日一日の余韻を再度思い返すアイテムみたいだ。

軽米町に詳しいS君が生素麺屋近くのスーパーを指差し「ここのスーパーの肉。とっても美味しいんですよ」と言う。表向きは田舎くさい小さなスーパーに見えるが大人気のスーパーらしい。
生素麺屋に引き続きいいネタを仕入れた。
今度素麺買いに来たらついでにここの肉屋も寄れる。

生素麺を2人に渡して僕はパニラケースに素麺を仕舞い込む。ふと思った。
「あれ?君達はその素麺どうやって持ち帰るの?バイクに入れるとこないでしょ?こっちのパニラケースにまだ入るよ。入れる?」
彼らのバイクには収納が無い。
「Yさん。大丈夫ですよ。僕らはほらっ。こうやって持ち帰りますから。」
と胸のジッパーを開け腹の中に素麺の袋を仕舞い込んだ。
なるほどね。そういう手があったか。

バイクの不便な所は荷物があまり持ち帰れない所でもある。大抵のバイカーは格好を選ぶ。あまりパニラケースも付けないライダーが多い。大型バイクでツーリング目当てのライダーはパニラケースを付けたりしているが、ほぼバイカーは格好つけなのだ。

お目当ての物を買えたから帰る事にした。
帰り道は途中まで一緒の道だったが、
K君が先に抜けS君が抜け、僕が最後になった。

当初は直ぐに家に帰る予定だったが、走る事が楽しかったせいか、帰り道は遠回りして帰った。

今日のルート:八戸〜南郷〜軽米〜種市〜八戸
距離は大した事なく200キロも走っていなかった。

彼らはまた今度もやりましょうー。
と言っていた。
そもそも僕はなんで人と走るのに今まで抵抗があったのだろうか?
・人と時間を合わせるのが嫌だった
・帰りたい時に帰れない
・トイレなど付き合わせるのが気を使う
そんな程度だった。
しかし、実際やってみると楽しいもんだ。
これはこれでよしとしよう。

人の集団行動での生態。
人の中で自分を偽り相手に合わして相手の意見に同調したふりをして頷く。
僕はそういうのが嫌だっただけだ。
バイク好きが集まると
バイクだけの世界に入るせいか
そういったものはないかもしれない。
今回の初めてのツーリングをやってみたが、それでも僕は出来ればひとりで走ることを主体として、たまにならツーリングもいい。という事にきづいた。
何にでもやってみないと分からないことがある。
とりあえず好き嫌い言わず何事もやってみたらいい。
今回ツーリングを終えそれが感想だ。



「目的地。生素麺屋:漫画ハイキューの主人公の実家?」

後日。
生素麺屋を嗜む。
生素麺は茹で時間は短くてよい。

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