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アラン・メルヴィルという男


「俺はね、他人に恋してる女の子が好みなんだ」



 彼を飲み込むのに数日を要し、そしてこのnoteを書き上げるのにまた数日。どうしようもなく殴り書きをするしかないお気持ちオタクのきもちわるい感想になってしまうとおもう。

 ネタバレせずに彼のルートを記録するのは難しいので、本記事はネタバレ全開です。その点ご了承ください。



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 ついに満を持してやってきた攻略5人目。公式サイトで事前にコイツだけは人間ではないとわかっていたものの、Parasite5のうち他4人を攻略し終えた時点ではシナリオ内で彼が人間ではないとハッキリ描写されているところはありません。つまり、彼の√に入らなければリネットは彼を、
勤め先の元会員の「困り果てた略奪パラサイト」という認識のままその生涯を終えるんですね、もうダメ。

 彼の目的はキューピットとしての彼女の寿命が尽きる前に
人間の男と恋に落とさせ、キューピットから”ただの人間”となって、
幸せに"生きて"もらうこと。

 そのためにわざわざCC.に入会し、彼女に対しては恋愛対象外となるよう
厄介会員として振る舞い、他の男と結ばれるよう 裏で画策してきたわけだけど、努力むなしく彼女は他人の縁結びにばかりに夢中で、己の恋についてはスーパー無頓着。このままでは彼女は自分自身についてなんにも知らないまま寿命を終えてしまう、、さぁ どうする、、というところでまさかの
彼女が人間ではない悪魔の自分に恋をしてしまう。という。戸惑いつつも好きだと甘えてくる彼女を30日限定の恋だと言い訳し、受け入れている場合ではないのに、受け入れてしまいます。いやさ、でも



しゃーーない、しゃーないよだって500年彼女だけ想い続けてきたんだもん

 天使だった頃、150年間で育まれた友愛とも家族愛とも近い感情からただ
「彼女に生きていてほしい」「幸せになってほしい」
とひたすら想い続けてきたんだもん。本人も知らぬ間に友愛すら超えた感情になり果ててしまうわそりゃ、そんな自分としては家族のようだった たったひとりの彼女から恋愛的な感情を向けられること自体、完全に想定外だった+弓に当てられ 事あるごとに「好き好き」と擦り寄ってくるリネットは 同性の私から見ても甘え上手で、砂糖みたいにデロデロにかわいいので、持ち合わせていた家族愛の皮が剥がれ、異性愛として昇華されることはとっても容易だったでしょう。実際 彼女から誘われて堪えきれずに一回目で身体を重ねてしまうし。悪いことだって、神と悪魔が交わるなんて許されないって、
いくら頭でわかっていても もう抗えなかったんだね、ヨシヨシ、、、

 そんなこんなで禁忌を犯してしまった代償として神である彼女の寿命はおおはばに削られ、倒れてしまいます。

 現実はいつだって惨い。

 他の男(ギル)に甲斐甲斐しく世話をされる彼女。
一方、自分は彼女に触れることすら叶わず、
ただ遠くから窓越しそれを眺めることしかできない。そうしてまたひとり 思い、想い詰めて、みじかいみじかい白昼夢のような幸せな恋に、彼はひとり終わりを告げにいったのです。最後のデート。天界で声も持たずきょうだいのように漂っていたふたりは地上で自転車に乗って風を切り、ロサンヨークの恋人として声を持ち、言葉を交わし、笑い合うのです。


 運命の相手、オレンジの片割れ、オトメイト的に言うのなら 魂の半身、でしょうか。"自らの対を喪う"という感覚は想像に及びません。


 ただ 生きていて欲しかった。
 そしてその望みは、自分が隣に居ては絶対に叶うことはない。

 わかっていたはずなのに、恋人として過ごした日々が彼の心を引き裂いていく。つらい。もうひたすらバブルティーおごったげたい。。そうして彼女はキューピットとしての記憶を、彼と過ごした日々を忘れ去ります。ひとり想いを抱えた彼は魂を人間へ移し、その行く末を見守ることを決めるのです。

 そうしてひとり大きく傷ついた後も、彼の苦難はまだ終わりません。まったく違う人間に魂を移したというのに、名付けられた名は"リネット・ミラー"前世と一音一句 違わず、さらに成長するたびにまるで容姿から性格まで彼女の生き写しという有り様。もうご愁傷さまというほか言葉がない。

 そしてまたしても想定していなかったアクシデントにより、
決して顔を見せないと決めていた彼女の前にふたたび現れることになってしまいます。人間の腹より生まれた時から彼女の記憶に残らないよう距離を保ちつつ、ほかの悪魔に攫われないよう、大切に大切に見守ってきて十数年。
その彼女の肌にいきなり触れてしまった感覚、考えるだけでおぞましいです。ぜったいに耐えられない。耐えられないあまり自分の名前はギルティだなんて名乗ってしまうし、心中察するに余りある。

 そうして前世での「恋人になってほしい」という願いを断り切れなかったように「海が見たい」という彼女のお願いをまた断り切ることができないのです。ハァ~~~甘い!!!!甘いんだよ!!!!!!!でもまっったく責められない!!!!!!!だってこんなの!!!!!無理!!!!!!
断れなかった自己嫌悪に浸りつつ、彼女の胸を貫いたあのライスカート海岸でまたしても "さいごのデート"です。泣いていいよアラン

 ここからエンディングが分岐していきます。いくつかありますが、ひとつだけ書いておこうと思います。


 《ロサンヨークでつかまえて》
 前世の記憶が戻りかけてしまった彼女の記憶を完全に消し去り、悪魔として彼女の隣に立ち続けるエンド。題目は見てわかる通り恐らく
”ライ麦畑でつかまえて” かな

 だいぶ印象的で、√分岐してからすぐ
銃声(?)のあと、以下の文言が流されます。

Whether ’tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune,
Or to take arms against a sea of troubles,
 And by opposing end them ?

 社長のエンドでもチラッと出てきました ハムレット。そのあまりにも有名な一節の後文。

 人間の彼女と悪魔。

 悪魔は普通の人間からは見えないわけだから、ずっと一緒に居られても傍から見れば空に向かってひとりで話している完全に不思議ちゃんである。当然まわりは気味悪がるだろうし、それが彼女の人間関係を壊すことは目に見えています。

 彼女自身がそれでよしと望めども、”普通の人間として幸せになってほしかった”という 彼の願いは未来永劫、叶わないでしょう。




 てなわけでキュピパラ、この2020年の酷暑を吹っ飛ばしてくれるくらい、
とっても面白かったです。サブキャラまで味が濃いのなんの(すき)
 エンド回収も終わって絶賛ロス期間なうです



 “To be, or not to be ― that is the question“







 p.s.
 個人的ラブタイプはマニアだったので、
なんだかうれしかったです。









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