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地域公共交通計画に見るこれからの地域の在り方(前編)

花巻市では、本日2月9日から3月5日まで花巻市地域公共交通計画(素案)に関する説明会が開催されています。

また、あわせてパブリックコメントの募集もしています。

この計画は、令和6年度から令和10年度の5年間における、目指すべき花巻市の公共交通の方向性や計画の目標、バス路線の再編などの事業を定め、花巻市にとって持続可能な公共交通サービスの提供が確保される公共交通の姿を目指すためのマスタープランとして策定するもので、2月8日にはこの素案についての市議会議員説明会が開催されました。


説明会で示された素案の内容ですが、公共交通における課題が山積している現状が浮き彫りになっています。

まず、事業者の収益悪化と運転士不足による路線縮小や便数削減の問題。
路線バスは、利用者が年々減少し、事業者の収益悪化が進むとともに、タクシーやバスの運転士不足が顕著となっています。


花巻市地域公共交通計画(素案)より抜粋


花巻市地域公共交通計画(素案)より抜粋

また、路線バス事業者の収益悪化等による路線バスの減便や路線廃止などが相次いでいます。

例えば、花巻市の中心部と旧東和町を結ぶ岩手県交通の「土沢線」は、昨年6月に令和5年9月末をもって路線廃止することとしていましたが、令和6年3月までは赤字分を花巻市が補填することとし、令和6年4月からは花巻市のコミュニティバスとして運行することとなっています。


そして、高齢者などの移動困難者の交通手段の確保。
花巻市において路線廃止などによる交通空白地域がある中で、高齢者など移動困難者の交通手段の確保は重要な課題です。
路線バス等がない地域においては、予約乗合交通を導入して移動困難者の交通手段を確保している状況ですが、地域ごとに利用者の増減があるようで、大迫地域、西南地域では利用者が増加している一方、石鳥谷地域、東和地域、湯口地域では利用者が減少しているようです。


花巻市地域公共交通計画(素案)より抜粋


それから、観光客などの来訪者にとっても移動しやすい公共交通の整備。

花巻市は、いうまでもなく観光都市として知られています。
古くは宮沢賢治記念館や花巻温泉郷などが有名でしたが、最近は大谷翔平選手、菊池雄星選手の活躍などで、彼らの母校花巻東高校が観光スポットとなっているようです。

これらの観光スポットへの移動手段は、自家用車やレンタカーを使う方が多いのですが、コロナ禍収束以降、新幹線などの公共交通機関を使って花巻へ来訪する方も多く、花巻駅や新花巻駅からこれら観光スポットへのアクセスが課題となっています。

私は、この件で、実際に市外の方からお話を伺ったことがあります。
昨年11月に盛岡市で開催された全国規模のコンベンション(会議)に出席したときの事。そのレセプション(懇親会)で、埼玉県、茨城県の方と同じテーブルになって歓談させていただきました。
埼玉県の方(2名)は、レセプションの翌日に岩手県内を観光したいと考え、事前にいろいろと検討されていたようで、花巻市もその候補として入っていて、花巻東高校にある「2021MLB All-Star Game 菊池雄星・大谷翔平選出記念モニュメント」にも行ってみたいと思っていたようです。

ところが花巻駅から現地へのアクセスが悪く断念したとの話を聞いて、「めちゃくちゃもったいないなー」と思わずにはいられませんでした。

同じように、新花巻駅と宮沢賢治記念館の交通アクセスの話を聞いたことがあります。

例えば新幹線で東京から来た方が、いろいろな観光地を回り最後の観光スポットとして宮沢賢治記念館を選んだとします。
宮沢賢治記念館から新花巻駅まで路線バスを利用するとして、12時17分宮沢賢治記念館発のバスに乗った場合、新花巻駅に着くのが12時19分。
ところが、東京行きの新幹線は、新花巻駅を12時20分に出発してしまいます。
さすがにいくら急いだとしてもその新幹線に乗ることはできません。

次の新花巻駅発の新幹線の出発時間は13時20分。次の新幹線まで、1時間新花巻駅で待つことになります。
土産物売り場や食事等充実しているのであればまだしも、失礼ながら今の新花巻駅で1時間待つプランを立てる旅行者はなかなかいないのではないでしょうか。

これも「めちゃくちゃもったいないなー」と思う事例です。
このように「地域公共交通」をめぐる課題は様々あるわけですが、この課題に対し、花巻市は「花巻市地域公共交通計画(素案)」の中で方向性を示しながら、具体的な解決策を提示しています。

というところで、花巻市地域公共交通(素案)の具体的な解決策を説明しようと思ったところですが、詳細に記述すると莫大な量になってしまいますので、次回に回したいと思います。

詳細な内容を知りたい方は、ぜひ花巻市地域公共交通計画(素案)に関する説明会に参加してみてはいかがでしょうか?


P.S
今日(2月9日)、ある懇親会(飲み会)が宮野目地域であったのですが、私は地域公共交通(路線バス)を使って移動しました。
決済は「suica」。
バス代は330円で、タクシーを使うよりかなり安い。
なんか、旅行に来た気分になり新鮮でした。
やはり、地域公共交通を積極的に活用するためには、地域公共交通(路線バス等)を使うことのインセンティブ(報酬)とかナッジ(人を無意識的に行動変容させる手法・戦略)が必要だと改めて思いました。

次回は、インセンティブやナッジなどについても触れたいと思います。

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