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【書評】ウィスキーを趣味にする

11代目伝蔵の書評100本勝負8本目

 古い話で恐縮ですが2007年スコットランドエジンバラに行きました。
エジンバラ城はご存知の方も多いと思いますが、エジンバラ市内の小高い丘キャッスル・ロックという岩山の上に建つ古代からの要塞です。スコットランドの歴史はナショナルソング「フラワーオブスコットランド」の歌詞から推測されるようにイングランドとの血の歴史でもあります。イングランド軍に対峙するためにモンスメグという馬鹿でかい大砲がお城の一角に鎮座していたのを覚えています(ただしレプリカらしいです)。
 雄大なエジンバラ城の麓に「スコッチウイスキー・エクスペリエンス」なる博物館がありました。ウイスキー樽の動くゴンドラ?に乗り、スコッチウイスキーの歴史が分かる仕掛けです。ゴンドラから降りると試飲グラスが渡され、数種のスコッチが楽しめました。今から思うと博物館としては少し物足りないような気もしますが、ウイスキー樽が動くという子供騙しが何とも好印象でした(笑)。これは本書から知見ですが1980から1990年代にけけてウィスキーの需要が減り、多くの蒸留所が廃業したり閉鎖になったそうです。それが2000年代に入りウィスキーブームが起こりそれは今に至るまで継続中です。日本においては2014年の朝ドラ「マッサン」やその後にサントリーが仕掛けたハイボールがウィスキーブームに追い討ちをかけました。腹廻りのお肉が気になる僕も糖質が低いらしいのでビールの代わりにハイボールを飲むことが多くなりました。
 その一方で例えばオーセンティックなバーに行けば「マッカランをストレートで」と分かったような注文をします。さらにマスターに向かって「ハイボールは邪道ですよね」と嘯いたりします(恥)。そこで偏見を正すためにも本書を手に取ったわけです。もちろん?Amazon limitedの「放題本」です(苦笑)。
 表紙には「優しく、楽しく、ウイスキーの味わい方を伝授」とあります。これ以上の要約の言葉はないと思います。全くもってその通りで、こういうキャッチコピーを「羊頭狗肉」の対義語「羊頭羊頭」(?)になるんでしょうね(笑)。本書を読めば趣味になるかは兎も角として少なくとも興味が湧いたり好きになることは間違いなしです。
 著者は敷居が高いと思われがちなウィスキーに入るために「まず最低限の専門用語を覚えましょう」と提案します。そして「ポットスチル」「モルトウイスキー」「グレーンウイスキー」について説明していきます。これだけ知っていれば例えばバーに行って「モルトウイスキーを」とか「グレーンウイスキーを飲んでみたい」と言えば専門家であるバーデンテンダーに提案してもらえるでしょう。そしてそれが美味しければウイスキーの世界はグッと身近になると思いました。またウイスキーのラベルは情報の宝庫であると著者は言います。実際のラベルを参考にその見方を解説しています。その内容を読み取るのは少し知識とコツがいるので僕のように初心者にはハードルが高いかもしれません。しかしながら「ラベルは情報の宝庫だ」と知ってるだけでラベルを見るのが楽しみになります。バーでは注文したボトルが目の前に置かれることが多いですから、ラベルを確認することでマスターとの会話が広がるかもしれませんね。
 本書の更なる美点は沢山のウイスキーの味を著者が評価していることです。知識が広がるだけでなくそのウイスキーの味が分かる仕掛けです。著者の語彙は僕たちに味を想像させます。困ったことに気になるウイスキーでいっぱいになり、ネットショップです買うと破産しそうです。僕が買いたくなったのは次の通りです。
①ウイスキーの量を測るためのメジャーカップ
②フロムザプレス(ニッカウィスキー)
③テースティンググラス
④カラバン・クラッシック
⑤ザ・スコッチウィスキー・ソサエティ

 ①②はネットショップですぐに注文してしまいました。②は人気があり過ぎて定価で買うことは難しいそうです。
③〜⑤は何とか思い留まりました。④は台湾のウィスキーメーカーで一度バーで飲んだことがあります。本書ではこのウイスキーが世界で認識されるエピソードを読んで益々興味が湧きましたが安いウィスキーではないので又の機会に注文します。⑤は世界最古のウィスキー倶楽部で年会費は10,000円。会員しか買えないウィスキーを紹介してくれることもあるようで更なる出費が予想されるので今回は諦めます。

そのほか本書では全国42ヵ所ある蒸留所を紹介しています。どれも興味深い蒸留所ですが特に気になったのは沖縄名護にある許田蒸留所。泡盛メーカーで有名ですが近年はウイスキー造りにも挑戦しているそうです。南国産のウィスキーは是非味わうだけでなく、見学もしてみたいと思いました。マンボウ明けに必ず!
 このように本書は魅力的な1冊ですが左党にとってはシラフで読了するのは難しいかもしれません。

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